第428話15-17凱旋

 15-17凱旋



 赤竜の卵を回収したあたちたちは一旦回復を待っていよいよ最後の「女神の杖」を回収する為に火山口にある古代魔法王国時代の神殿に向かう。





 「うわぁ、これって赤竜にやられた人? それとも生贄?」



 火口に降りて行って神殿らしき所に辿り着くと神殿前にはたくさんの人の骨が転がっていた。

 鎧や剣を身に着けた死骸もあるからもしかしたら一獲千金を狙った冒険者もいたのかもしれない。

 

 それともドラゴンスレイヤーの称号が欲しくて英雄に成る為に挑んだ者たちの末路なのか?


 神殿前の広場にはその他にも金銀財宝が転がっていた。



 「すごいわね、これって赤竜への貢ぎ物か何かだったのかしら?」


 イパネマさんが拾い上げた金の錫杖は宝石などがちりばめられていた。

 その他儀式などで使えそうな金の剣などもありそれらの価値は計り知れない。



 「ちょうど良いですわ! ティアナせっかくですからこれらをもらって帰りましょうですわ。そうすれば今後の『鋼鉄の鎧騎士』の予算確保も出来そうですし」



 あたしはびっと人差し指を立てて言う。

 

 先程初号機をポーチに回収する時にざっと見たのだけど、修理には結構かかりそうだ。

 意外な話、外装のオリハルコンやミスリルより各魔操系の魔石や魔獣の生物パーツがダメになっていた。


 それらの修理で必要になる素材をもう一度集める事を考えるとかなりの費用が必要となる。



 「そうですね、初号機は今後も必要になりますし『鋼鉄の鎧騎士』の威力は想像以上です。これらの財宝は役に立つでしょう。回収しておきましょう」


 ティアナも賛同してあたしたちは財宝を回収する。

 そしてそれが終わる頃神殿の前に無数のミスリルゴーレムの残骸が有ることに気付く。



 『あら、ミスリルゴーレムのガーディアンね? 赤竜には玩具にもならなかったのかしら。無残なものね』



 シコちゃんはその残骸が赤竜にやられたものとすぐ気づく。

 

 「しかし、赤竜は何故ガーディアンを破壊したの? 同じ財宝を守る者のはずなのに?」



 「それは違います。赤竜は守るのではなく守らされていたのです」



 イパネマさんの疑問にコクは即答する。

 

 「コク、それはどう言う事ですの?」


 「私たち竜族は『始祖なる巨人』の死骸から生れ出ました。ゆえに女神たちに劣る部分があります。それは精神の弱さなのです。ゆえに女神の奇跡の御業、魔法に対して弱い部分があります。赤竜も過去に私がリッチにやられたように何かの呪いか束縛を受けていたようです。多分この神殿に有ると言われている『女神の杖』を守るようにと」


 それを聞いてあたしはある事を思い出した。


 ―― 赤竜の縄張り ――


 もしかしてそれって守る「女神の杖」から離れられる最大の距離なんじゃないだろうか?



 「そうするとこのミスリルゴーレムたちは?」


 「おそらく赤竜の腹いせでしょうね。魔法王ガーベルにやらされている事に対する」


 ティアナの質問にまた即答するコク。

 敵対はしていても同じ竜族なのでその心情が分かるのだろうか?




 「でも良いじゃない、これで面倒な戦闘はしなくてよさそうなのだから!」


 

 シェルが重くなりつつある空気をあっけらかんと吹き飛ばす。

 そう、もう終わった事だ。

 財宝を回収し終わってあたしたちはミスリルゴーレムの残骸も回収して神殿に踏み入るのだった。



 ◇ ◇ ◇



 「ティアナ様!」


 「ティアナ様、ご無事で!!」


 セレとミアムがティアナに寄り添う。



 まあ、抱き着かないならこのくらいは許しておくか。



 「ティアナ将軍、赤竜は?」


 アラージュさんがティアナに聞いてくる。

 

 「かろうじて倒せました。かなりぎりぎりでしたが」


 それを聞いたアラージュさんたちは大喜びだ。

 勿論ここで待っていたベナレル村長たちも大喜びになる。



 「すごいですぞティアナ将軍!」


 「流石連合軍! ドラゴンスレイヤーだっ!!」


 「まさか本当に倒しちまうとはな! すっげーよあんたら!!」



 村の人々や案内をしてくれたゾリッダさんも大喜びだ。

 無理もない、これでこのザキの村はもう二度と赤竜におびえる必要は無いのだから。

 



 「では『女神の杖』の回収も?」


 みんなが喜ぶ中、カーミラさんも小声で聞いてくる。


 「それもエルハイミが成功しています。これで各地に預けられていたほとんどの『女神の杖』が我々の手に入りました」



 カーミラさんたちはそれを聞いて更に喜ぶ。


 これで連合軍「女神の杖探索隊」としての危険な任務は全て完了したのだ。


 後は各地に影響を及ぼしているジュメルたちを駆逐していき、明確に取り込まれているホリゾン帝国を解放できればジュメルの主要機関は壊滅できるだろう。



 喜びの中、その晩ザキの村は夜遅くまで祝宴の喜びで包まれるのだった。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



 「よくぞ赤竜を倒し『女神の杖』を持ち帰った、ティアナよ」


 「はっ、すべては我がガレントの為、ジュメルをこの世から駆逐する為に!」



 うおぉおぉぉおおおおおぉぉぉぉっっ!!



 あたしたちは今ガルザイルの王城で国王陛下、アコード様に赤竜討伐の成功を報告していた。

 事前に連絡は行っているが正式な報告は今が初めてだ。


 既にこの話はガルザイルだけでなく近郊の衛星都市にまで広まっている。


 天秤の女神アガシタ様に祝福されしガレントの姫が今度は太古の竜、赤竜を討伐したのだ。

 それは正しくガレントの、そしてティアナの名を世界に広めるモノとなる。


 そしてそのティアナは今や連合軍の将軍職にいる。


 必然とジュメルのに対しての期待も上がる。

 巡視を始めた第一軍から第三軍は加盟国各国からも支援を受け、徐々に成果もあげ始めている。

 各国で暗躍していたジュメルの動き自体もかなり収まって来たらしい。


 

 「ティアナよ、そなたを称え凱旋の祝いをしようぞ。ドラゴンスレイヤーの栄誉をそなたに」



 うぉおおおおぉぉぉぉ!!!!!



 アコード陛下が最後にそう言ってティアナをドラゴンスレイヤーとして称えた。

 その瞬間ここに居る者全てが歓声を上げる。



 「ティアナ殿下!!」


 「ドラゴンスレイヤーティアナ様!!」


 「きゃーっティアナ様ぁー!!」



 うーん、単に称えるだけでなくなぜか女性陣の熱い眼差しも向けられているのが気になる。


 ティアナは宝塚男優状態だし、一応あたしが正妻であることは公認になったけど、セレやミアムを妾として囲っているという話も出回っているしなぁ。


 やたらと貴族令嬢たちのティアナに向けられている視線が熱い。

 そんな暇があったらエスティマ様の方に行けばいいのに。



 あたしはふと思う。

 これ以上変な虫がつかない様にティアナの体に今晩辺りに良く教え込んでおかねば!!




 そう決意するあたしがいるのだった。

 

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