第422話15-11赤竜討伐隊
15-11赤竜討伐隊
王都ガルザイルに戻ったあたしたちはアコード陛下に謁見をしていた。
「陛下におかれましてはご健勝のこととお慶び申し上げます」
ティアナは謁見の間で膝をつき頭を下げながらそう言って挨拶をする。
「ティアナよ、面をあげるがよい」
アコード陛下はそう言ってティアナからの報告を待つ。
「申し上げます、かねてより宮廷魔術師アンナ殿が計画しておりました『ガーディアン計画』の『鋼鉄の鎧騎士』零号機が完成いたしました。現在ティナの町にて稼働試験に入っております」
どよっ!
ざわざわ‥‥‥
「静まれ! してその実力は如何に?」
「はっ、基本構造の素体状態での稼働テストでは黒龍の分身と互角に渡り合いました」
ざわざわっ!!
「静まれ!! ティアナよ、それは真か?」
「はい、真実にございます。そして現在標準装備の鎧にて武器となる剣や盾の装備も完了しております」
ひそひそ‥‥‥
うん、まあそれは驚くだろうね。
何せあの伝説の女神殺しの黒龍の分身と互角に渡り合えたのだから。
単純に肉弾戦で言えばジュメルの巨人を圧倒するクロエさんと互角に対峙できたのだから巨人の脅威がかなり薄れたわけになるし、もう融合魔怪人なんか相手にならないだろう。
それに標準装備のあの盾。
剣はあたしが作ったなぎなたソードと同じものだから事実上この世界の物質で切れない物は無いだろう。
盾も表面には「エルリウムγ」を使用したクロスバンド方式のコーティングがされ、更に対魔法処置までされているからそうそう壊れる事は無い。
たぶん、ドラゴンブレスも平気だろう。
「うむ、莫大な予算をかけたこの『ガーディアン計画』であったがその成果が出た様だ。大儀であった」
「もったいないお言葉にございます。所で陛下、私共連合軍は赤竜の持つ最後の『女神の杖』を回収すべく国境の火山に向かおうと思います」
ざわざわ
「ティアナよ、赤竜のもとへ行くか?」
「はい、そして必ずや最後の『女神の杖』を手に入れ秘密結社ジュメルの野望を阻止してご覧に入れます!」
ティアナにそう言われ陛下は大きくうなずく。
「そなたの働きに期待する。今宵は英気を養うがよいぞ! 皆の者、宴の準備をせよ!!」
アコード陛下がそう宣言する。
おおーっ!
歓声が沸き上がる。
ティアナはアコード陛下にもう一度頭を下げてからあたしを連れて退席するのであった。
* * * * *
宴も終わりあたしとティアナはベッドの上で天井を見上げながら話をしている。
「いよいよ赤竜討伐ね。相手は女神殺し、油断はできないわね」
「ティアナ、決して無理だけは、アイミのあの力だけは使わないでくださいですわ。それにコクたちもいますわ。お願いですわ‥‥‥」
ティアナはあたしの唇をいきなり奪いながら優しく言う。
「分かっているわ。エルハイミが無理して作ってくれた『鋼鉄の鎧騎士』もあるわ。きっと勝てるわよ」
「でも初号機にはまだ乗り手が決まってませんわ。最終外装の装着もまだですし、私では戦闘は出来ませんですし‥‥‥」
するとティアナはあたしを見つめて言う。
「あれにはあたしが乗るわ。あたしの魔力なら連結型魔晶石核も動かせるし、体術も剣術もガレント流が有るわ。それにエルハイミが作った機体だもの、きっといけるわ!」
そう言ってまたキスしてくれる。
確かにティアナならあれを動かせるだろう。
それにアイミの力じゃないからティアナの体の心配もない。
ここガルザイルで早急に外装の部材を手に入れ最終外装を作らなければならない。
あたしがそう思っているとティアナがあたしの唇をまた奪う。
「大丈夫だって、うまく行くわ‥‥‥」
そう言いながらあたしたちの影がまた重なるのだった。
* * * * *
「いや、分からなくはないけど無理があるって!」
シェルはそう言いながら風の上級精霊を呼び出している。
あたしたちは今ガルザイル郊外に有る連合軍の駐屯所にいる。
「そこを何とか頑張ってくださいですわ! せっかくの魔結晶石ですわ! 何が何でも融合させますわよ!」
どう言う経由かは知らないけど、王城で魔結晶石が一つあったのだ。
あたしはそれを譲り受けさっそくシェルと共に魔結晶石核を作ろうとした。
シェルは風の上級精霊を呼び出している。
媒介が無く呼び出せるなんてシェルの実力は既にファイナス市長に匹敵している。
しかし流石にまだ完全に安定はしていない為呼び出せる時と呼び出せない時が有る。
「このぉ! 来いっ! 風の上級精霊っ!!」
するとこの闘技場の真ん中にいきなり竜巻が現れた。
そしてその中から風の上級精霊テンペストの乙女の姿が現れる。
見た目はシルフに似ているがその雰囲気は全く違う。
彼女は呼び出されて不機嫌のようだ。
シェルを睨んでいる。
「うひぃ、この上級精霊相性が悪い! いくら頑張っても言う事聞いてくれない!!」
シェルはそれでもかなり頑張って風の上級精霊を操ってここに留めている。
「上出来ですわ! さあ、言う事を聞いて大人しくこの魔結晶石に融合してくださいですわ! 同調フルバースト!!」
あたしがあの力を引き寄せ瞳を金色に変えて風の上級精霊に睨みを効かせる。
ふん、こんな小物相手にあたしは来たのか?
しかしもう一人のあたしはこの石っころにこの小物を融合させるつもりか?
まあ、いいだろう。
「おい、そこの貴様。大人しくこの石っころに融合されろ。でなければ消すぞ?」
あたしがそう言った途端にこの風の上級精霊は大汗をかきながら思い切り頭を上下に振りこの石っころの中に入って行った。
全く、最初から大人しく言う事を聞いていればこんなつまらない事であたしが呼び寄せられなくても良かったのに‥‥‥
ん?
もう一人のあたしがオリハルコンを残して行けって?
何する気だ?
ああ、あの玩具に使う気か?
ふん、この世界にあの玩具か‥‥‥
面白い、良いだろう、次に来た時に面白いものが見れるのならば。
あたしはオリハルコンの塊を作り出しおいていく。
次に来た時にその玩具がどれだけ遊べるか楽しみにして。
‥‥‥ん?
あ、あのあたしが帰って行った?
今回は意外と素直だったなぁ。
と言うか、以前よりあたしの意思の方が強くなった?
「エルハイミっ!」
「シェルですの? もう大丈夫ですわ。私ですわ」
シェルは大きく息を吐き安堵する。
「いきなり上級精霊が言う事聞くから驚いたけど、エルハイミの瞳が金色になってやたらと凄い圧力が出たかと思ったらあんな大きな金の塊置いていくのだもの、びっくりよ!」
シェルが指さすその先にはかなり大きなオリハルコンが有った。
これで初号機の外装が作れる。
そして風の上級精霊の魔結晶石核も出来た。
アイミの中にいるウィンドーとは別の子だけど、ちゃんと言う事聞いてくれるかな?
あたしは出来上がった魔結晶石核を手に取り語り掛ける。
「ねえ、あなた、ちゃんと協力しないと消しちゃいますわよ?」
びくっ!
だらだら
なんか魔結晶石核がびくついて汗をだらだらをかき始めた。
「言う事聞いてくれますの?」
こくこくっ!
なんか頷いているっぽい。
うん、言う事聞いてくれるのならよろしい。
「エルハイミ、なんかものすごくえげつないような気がするけど‥‥‥」
「でもこれで初号機は私の考えどうりに出来そうですわ」
あたしはオリハルコンもポーチにしまいながらシェルに答える。
シェルは「それはそうだけど‥‥‥」なんて言っていてあたしの周りをうろちょろとする。
「なんですの?」
「頑張ったからご褒美もらうわね!」
そう言っていきなりあたしの唇を奪う。
ちゅっ!
「シェ、シェルぅううううぅぅっ!!!?」
「んふ、ごちそう様、あなた♡」
そう言って脱兎のごとく逃げていく。
あたしは慌てて周りを見る。
‥‥‥だ、誰もいないわね?
こんな所ティアナに見られたら‥‥‥
あたしは身震いするのだった。
* * * * *
第一軍から第三軍は分散して各国の巡視を始めている。
小規模のジュメルのアジトなら魔装具を装備した連合軍で対処できる。
魔怪人クラスなら倒せなくなくはない。
それに数は少ないけどそ双備型のマシンドールも今回の巡視から同行させている。
これで融合魔怪人にも対応はできる。
現在あの種と巨人が出てこない限り連合軍はジュメルの討伐に対しての切り札になっている。
おかげで各国も連合軍の巡視には非常に協力的だ。
駐屯所で待機していたアラージュさんとカーミラさんの話だと戦果も上々らしい。
「ティアナ将軍、いよいよ最後の『女神の杖』ですね?」
「これで赤竜を打ち倒せれば『ドラゴンスレイヤー』の称号が手に入ります。セレ、ミアム、私がその称号を手に入れれば今度こそ私のもとに来てくれるよね?」
「寝言は寝てから言ってください!」
「アラージュさん、今度お尻触ったら殺しますからね?」
「ああっ! いけずなセレとミアムも可愛いいっ!!」
相変わらず漫才やっているな。
あたしは戻ってきて魔結晶石核が出来上がった事を話した。
「そうですか、それは良かった。ウィンドウ―以外に魔結晶石核が手に入るとは」
『凄いわね、もうエルハイミに全部お任せで良いみたいね? そんなに簡単に風の上級精霊を従わせるなんてね』
ティアナもシコちゃんも風の魔結晶石核が手に入った事は喜んでくれているけどあたしもそれなりに苦労はしているんだよ?
主に最後のシェルとか‥‥‥
「しかしこれで初号機の方も目処が立ってきました。 約一週間後にガルザイルを出発して赤竜の火山に向かいます。各自準備をするように!」
ティアナのその一言でここに居るもの全員が襟を正す。
一週間後、いよいよ赤竜討伐に出発となるのだった。
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