第423話15-12道中

15-12道中



 あたしたちはバックアップの人員を含め「女神の杖探索隊及び赤竜討伐隊」としてガルザイルを出発した。




 「はぁ~、ちょっと休めたと思ったら今度は赤竜が相手かぁ。赤竜ってコクと同じ太古の竜よね? 女神殺しの」


 「ええ、そうですわよ? 流石のシェルも赤竜には怖気づきまして?」


 馬車に揺られながらあたしたちはティアナが乗る馬の後を進んでいる。

 馬に乗るのが苦手なあたしは物資運搬用の馬車に乗っている。

 この馬車にはセレやミアム、ショーゴさんやコクにクロさんクロエさん、そしてイパネマさんなんかが乗っている。


 「シェルが怖気づくのも仕方ありません。赤竜は私と同じ女神を焼き殺せました。あれは我が主だったディメルモ様の仇でもあります」



 はいっ!?


 赤竜ってディメルモ様を焼き殺したの!?



 コクは静かに遠くを見ているけどその瞳には復讐の炎が燃え上がっていた。



 『ますます赤竜との戦いは回避できそうにはないわね? エルハイミ、対炎の魔法って知っている?』


 シコちゃんに聞かれるけど【絶対防壁】で何とかなるのじゃない?


 「シコちゃん、【絶対防壁】ではいけませんの?」


 『女神殺しの炎よ? 【対炎魔法】を教えてあげるわ。【絶対防壁】で防げてもその温度で黒焦げにされるわよ?』



 うっ。

 確かに防御は出来ても温度までは抑えきれないかもしれない。

 あたしは素直にシコちゃんに【対炎魔法】を教えてもらう。



 「エルハイミさん? 何をしている??」

 

 イパネマさんがあたしとシコちゃんがぶつぶつ話しているのに気付き聞いてくる。


 「ああ、『至高の杖』ことシコちゃんと【対炎魔法】について教えてもらっていましたの。そうだ、イパネマさんにも教えますわね! 赤竜の炎は強力ですからですわ!」


 万が一の事も考えてこの魔法が使えそうな魔術師には全員教えておく。

 しかしティアナとイパネマさん以外は使えなさそうでイパネマさんに限っては魔力量の関係で一回使えればいい方のようだ。



 うーん、普通の魔術師には結構大技に成るのか?



 それでも使えるのと使えないのでは雲泥の差が有る。

 あたしたちは可能な限りこの【対炎魔法】を習得しなければいけなかったのだった。



 * * * * *



 「それではティアナ、始めますわよ?」


 『ええ、始めましょう』



 あの後の道中で野営をするのだが食事の準備中にティアナに初号機の搭乗練習をしてもらう。

 初号機は外装をミスリルとオリハルコンをメインとした鎧姿であたしの発案で追加したマントの様な固形の背面器具を取り付けている。


 これは展開して魔力を流すと風の上級精霊の力によって空中に飛び上がれるものだ。


 対赤竜戦は空中戦も考えなければならない。

 アイミによる空中戦はあくまでも生身での対戦となるが「鋼鉄の鎧騎士」であれば物理的な攻撃もかけられる。


 ティアナは何度か目の搭乗で既に基本的な動作や動きはあつかいに慣れ始めていた。

 しかし空中戦の練習はまだなので本日いよいよ飛行テストを始める。



 「ティアナ、背中の飛行具を展開してくださいですわ。そしてそこに腰部の連結型から魔力を流し込むイメージをしてから飛行をするイメージしてくださいですわ!」


 「うーんとね、ティアナ、背中に力入れる感じだよ~」


 あまりあてにしていないけどマリアが飛び方を教えるとか言ってティアナと一緒に初号機に乗っている。



 ばくんっ!



 マントの様な飛行具が展開して風の魔結晶石に魔力が流れ始める。

 そして背面の飛行具に風の渦が出来始める。



 『行きます!』



 そう言ってティアナの乗る初号機はふわっと空中に浮かび上がった。

 

 「いけーっ! ティアナぁーっ!!」」


 同乗者のマリアが叫ぶ。

 それと同時に初号機は一気に上昇する。


 

 「わきゃっ! ティアナ、無理しないでですわぁーっ!!」



 風に巻かれあたしの声は届いたかどうか怪しいけど初号機はその巨体の割に一気に上空へと飛び上がった!



 「うわっ! あんなに高く!!」


 「あんな大きなものが!? しかも竜にも劣らない俊敏さ!?」

 

 見学していたシェルやイパネマさんが驚く。

 急上昇した初号機は既に豆粒のような大きさだ。

 いったん上昇して上空で止まってからティアナの乗る初号機は上空を旋回し始める。



 うん、予想以上にいい感じだ。



 ティアナはひとしきり飛び回ってから今度はゆっくりと地上に降りてきた。





 ふぃぃぃいいいいぃっぃ‥‥‥


 すっ

 がしゃんっ!


 

 風の巻く音がして初号機は静かに地面に降り立った。

 そしてその場で膝立ちになって胸部と腹部を開きティアナは操縦系のギアヘッドや胸部や腹部、肩や腰部、大腿を押さえる固定具も外し初号機から降り得来た。


 ずっと一緒にいたマリアもティアナの肩にとまって一緒に降りてくる。



 「ティアナ、お疲れ様ですわ!」



 「ティアナ様、お飲み物です!」


 「ティアナ様、タオルもどうぞ!」



 ティアナを出迎えるあたしとセレにミアム。

 ティアナはにこりと笑てタオルを受け取り飲み物で喉を潤す。



 「エルハイミ、これはすごいです。マリアの手助けもありましたが空中を飛ぶイメージがこれでかなり鮮明になりました」


 「ええ、すごいですわ。初めてなのにあそこまで上手く飛べるなんて」


 「へへぇーん、あたしの指導があったからだよ! ねね、ティアナ、これでもう上手に飛べるよね!?」


 ドヤ顔のマリア。

 ティアナは優しく笑ってマリアにお礼を言う。


 「確かにマリアのおかげです。ありがとう」


 ティアナに礼を言われたマリアは頭の後ろに手をあて「いやぁ、それほどでもあるよぉ~」などと言っている。



 「しかしお母様、これは確かにすごい。我々竜族にも引けを取りませんね。これなら赤竜とも互角に空で戦えそうです」


 ずっと一緒に見ていたコクもそう言って初号機を見る。



 「人の手による新たな時代ですね‥‥‥」



 何かぽつりと言っていたようだけどあたしはそれを聞き取れなかった。



   

 「主よ食事の準備が出来たそうだ。来てくれ」


 ショーゴさんが夕食が出来たのであたしたちを呼びに来た。

 




 あたしたちはお腹を空かせ夕食を食べに行くのであった。



 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る