第403話14-28封じられた主

14-28封じられた主



 あたしたちはマーマンの王、ポポムンさんに連れられて神殿の前まで来ていた。




 「魔術師様、どうか長年封じられてきた我らが主を開放してくだされ」


 ポポムンさんの言うその主とは何なのか未だに分からないままあたしたちは神殿の中に通される。



 『何者だ? 我が守りし財宝を奪いに来たか? なれば容赦はせぬぞ!』



 神殿に入りすぐに広間になっていたそこには大きな蛇? いや、これはリバイアサンがいた!!



 「おおっ、我らが主よ! 主の待ちわびておりました魔術師様が来られましたぞ! やっと、やっと御身が自由になれるのですぞ!」


 ポポムさんは感極まって号泣している。



 いや、角刈りマッチョおじさんの号泣はちょっと‥‥‥



 しかしそんなポポムさんに主と呼ばれたリバイアサンはその鎌首をもたげあたしたちを見る。


 『汝らがそうか? 我への生贄では無いのか? ん? その娘は要らんぞ、そんな貧相なモノでは我は満足できんからな!』


 「だ、誰が貧相ですってぇっ!!!!」


 あー、シェルが誰とは言わないのに思わず反応してものすごく怒っている。

 あたしは思わず両腕で自分の胸をはさんでしまった。


 ぽよん。



 うん、あたしじゃないもんね。



 「エルハイミ! この生意気なのぶちのめして!!」


 「い、いえ、シェル落ち着いてですわ」


 「なんでエルハイミまで胸強調しているのよ!? 貧乳はステータスだっちゅーのっ!!」



 ぷんすか!



 シェルは大いに怒っているが冷静なイパネマさんはこのリバイアサンに話しかける。


 「あなた、封じられていると聞いたけどどう言う事?」


 『む? 汝魔術師様であられるのにご存じないのか? 見事なものをお持ちの割に我への処遇を知らぬか? むう、栄養がそちらに偏っておるか?』



 びきっ!



 あ、珍しくイパネマさんにおこマークが。


 「どちらにせよ、私たちは我が先祖、魔法王ガーベルの預けし『女神の杖』を受け取りに来た。リバイアサンよ道を開けていただこう」


 ティアナがそう言うとこのリバイアサンはティアナを見る。


 

 ばいんっ!



 手を振ったティアナのが揺れる。



 『なんと見事な! あ、では無かった、魔法王の子孫なるや!? なれば我の守りし宝は引き渡そう。しかし盟約の封印は解いてもらうぞ。我は約束通り長年にわたりこれを守護してきた』



 盟約の封印?

 どう言う事だろう?



 「『試練』があるだけではなのですの?」


 『いや、当時魔法王はご多忙でな。我に【女神の杖】を預けに来た代行人がどう言う訳か我がサボタージュするだろうという理由で封印をかけこの場から動けぬようにした。更にこの杖を狙うものに対して無差別に攻撃するように【束縛魔法】ギアスもかけて行ってな。ほとほと困っておる。おかげで竜宮城へも遊びに行けぬわ。我のお気に入りの娘、元気にしておるかのぉ~』



 いや、遊ぶ気満々でしょうに?

 そりゃぁ、封印に【束縛魔法】ギアスもかけられるわけだ。



 あたしはため息をついてから手をかざす。


 「それでは【解除魔法】を使いますわ。ちょっと待っていてくださいですわ」


 『いや、それはまかりならん! 【解除魔法】をかけると我が暴走するように仕組まれておる。我を開放するには我と戦い打ち破らねばならん。しかしおなごの汝らではいくら魔術師様とは言え荷が重いであろう?』




 「ほほぉう、つまりはこいつをぶちのめせばいい訳ね!?」



 シェルが指をぽきぽき鳴らしている。

 そしてあたしたちの前に出る。



 『おいこら、胸の小さき者よ! それ以上前に出ると我が【束縛魔法】ギアスが発動してしまうぞ!』


 「誰が胸の小さき者よぉっ! 人が気にしていることぉおおぉっ!!」



 シェルが怒りの咆哮と同時に精霊魔法を発動させる。

 それに呼応をするかのように侵入者を撃退する為にリバイアサンも【束縛魔法】ギアスによって目の色を変え咆哮をあげながらシェルに襲いかかる!



 「水の精霊よ! この失礼な奴をぶちのめして! 水よ壁となり押しつぶせ!!」



 シェルがそう言って精霊たちを使って水の壁を出してリバイアサンの攻撃を押し返そうとする。

 と、水の壁がいつものモノよりでかい?



 どごっ!



 リバイアサンの噛みつき攻撃をシェルの水の壁が見事に押しのけるどころかそのまま壁で押しつぶす?



 「なっ? シェルその精霊魔法はですわ!?」


 「あれ? いつもより操作が簡単になっている?」


 『ぐぼぉぉおおおぉぉぉっ! な、何だこれは!? この我があんな貧乳娘に押されておるだとぉ!?』


 「また言ったっ!! うるさい黙れこのばかぁっ!!」



 どごんっ!!



 リバイアサンが余計な事言うからシェルは更に水の壁を強く押し付ける。


 『ぐぅがぁばぁがぼぉぉぉおおおぉぉっ!!』


 完全に水の壁に押しつぶされ水圧に溺れ始めるリバイアサン。


 リバイアサンでも水に溺れるんだ‥‥‥



 どだぁーんっ!



 完全に白目をむいたリバイアサンがシェルの魔法から解放されて床に倒れる。



 ぶぎゅるっ!



 「誰が貧乳かもう一遍言ってみなさいよ!? こいつっ!」


 『ううっ、踏まれるなら他の胸の大きな娘がよかった‥‥‥』


 「まだ言うかっ! 炎の精霊よ! 死なない程度にこいつを焼きなさい!!」



 ぼわっ!



 シェルが近くに媒体の炎が無いにもかかわらず炎の精霊を使った!?

 しかもその炎、【紅蓮業火】並の火柱が立っている?


 こんなの使ってリバイアサン大丈夫なの?



 ぼわっ!!


 ぼてっ!




 「うわぁぁぁぁぁっ! あ、主様ぁっ!!」


 ポポムンさんが慌てて飛び跳ねて近寄る。


 『ううっ、先代の乙姫が見えたぞ‥‥‥ がくっ』



 どうやら確かに死にはしていないみたいね‥‥‥

 しかし、シェルのあの精霊魔法、どう言う事?



 「シェル、いつの間にあんなにすごい精霊魔法が使えるようになったのですわ?」


 「分からないわよ、ただ今日はいきなり精霊が言う事よく聞いてくれて操作も楽になっていて、まるでみんながあたしに服従するかのようで‥‥‥」


 シェルはそう言って考え込む。



 「凄いわね、精霊魔法使いでもあなたほどの使い手は初めて見たわ。まるで上位精霊でも使っているかのようで」


 「確かに見事な精霊魔法でした、シェル」


 イパネマさんは驚きティアナも賞賛している。

 しかしいきなりあんな精霊魔法が使えるなんて。


 「うーん、なんか今日は体の底から力が湧くって言うか、まるでエルハイミに魔力を供給されているかの様な感じよね?」



 ん?

 体の奥底?

 魔力供給??


 ‥‥‥ 

 ‥‥‥‥‥‥


 あっ!?



 「シェルもしかしてですわ!」


 シェルの魂との隷属を確認してみる。

 すると今までのつながりがずっと太く強くなっている?


 「こ、これは、シェルとの魂の隷属がさらに強固になっているのですの?」


 「はぇ? あたしとエルハイミがもっと深く濃く繋がっている? もう、エルハイミったら、そんなにあたしと繋がりたいの?」


 「エルハイミ!」


 「に”ゃぁっ!!」


 あたしが可能性を口にしたらシェルはなんかとんでもない勘違いするしティアナは真顔でお尻をつねって来る。



 「ちょ、ちょっと、ティアナ落ち着いてですわ! シェルも変な勘違いしないっ! どうやら私の魂とつながっていたシェルがあの力の影響で魂のつながりが強くなって魂の器が大きくなったようですわ!」


 あたしはティアナにつねられたお尻を擦りながら思いつくことを言ってみる。


 「へっ? じゃあ精霊魔法をもっとたくさん強力に使えるってわけ?」


 「たぶん、そう言う事ですわ」


 するとシェルはにへらぁ~と笑ってもう一度リバイアサンを踏みつける。



 ぶぎゅるっ!



 「ふっふっふっふっ、これでわかった? もう二度と減らず口はたたかない事ね!」


 「ああっ! もうやめてあげてぇ! 主の生命力はもうわずかですぅっ!!」


 勝ち誇るシェル。

 踏まれ焦げているリバイアサン。

 そんなシェルの足を甲斐甲斐しくも外そうと涙するポポムンさん。



 これって誰が収集つけるのよ‥‥‥



 あたしはため息をついてしまうのだった。


 

 * * * * *



 「ふう、これでここの『女神の杖』は回収できましたわ」



 あたしはあの試練を受けて『女神の杖』を回収した。


 この女神の杖は「商売の女神エリル」様の物だ。

 しかしコクの話では「一番の駄目な女神」らしく、関わらない方が良いらしい。

 周りは幸福にするけど自分は不幸になっていくと言う貧乏神?

 とにかくろくな事は無いらしい。


 あたしはそれをポーチにしまい周りを見る。



 「これが魔法王国時代の宝かしら?」


 イパネマさんは当時からの変貌が無いはずのこの神殿をくまなく調べていた。

 そしてゲートの魔法陣が有ったり緊急処置で魔晶石が有ったりとそこそこいろいろなものが見つかった。




 そして今イパネマさんが開いた宝箱からは‥‥‥



 「水着?」



 シェルはイパネマさんがつまみ上げた水着を見ている。

 しかしそれは水着と呼ぶには疑問を持ってしまう。


 「すごいわねぇ、流石に私でもこれは恥ずかしくて着られないわね。ティアナさんは?」


 「私でもこれは‥‥‥ し、しかしエルハイミに夜に着てもらう分には一向にかまいません!」



 真顔で何言ってんのよ、ティアナ!

 よくよく見ると口元にわずかによだれが‥‥‥



 「でもこんなに布が少ないのじゃ着ているのかどうかも分からないほどね? 意味ないんじゃない??」


 シェルはイパネマさんから受け取った水着を自分の水着の上に当ててみる。



 マイクロビキニの水着。

 そう表現するしかないだろう。

 誰がこんなの着るのよ!?



 「あら、こんな所に説明の石板が? 何々『この水着は最低限の面積と容量でどこまで防御力を高めるかの研究成果で着込めば【流星召喚】メテオストライクの直撃にも耐えられるという究極の防御を誇る』ですって? あら凄い!」


 イパネマさんは魔術師らしくその魔術の極めに驚き喜んでいる。

 しかし、誰が着用するのよこんなの?

 

 そう思いあたしは水着の上からその水着を胸に当てているシェルを見る。



 いたよここに‥‥‥




 「ねえ、エルハイミ、今もの凄く失礼なこと思って無い?」


 「いえ、何も思っていませんわ!(きりっ!)」




 頬に一筋の汗を流しながらあたしたちは「女神の杖」を回収出来たのであった。  




 

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