第404話14-29海賊襲来
14-29海賊襲来
『では魔術師様、今後は我も自由に動いて良いと言う事ですな?』
シェルにコテンパンにやられたリバイアサンはあたしの回復魔法で復活していた。
「ええ、勿論そうなりますわ。今までお疲れさまでしたわ」
『これで晴れて竜宮城に遊びに行ける! ポポムンよ、共をせよ! 久々に楽しむぞ!!』
「ははぁっ! すぐに支度を致します!!」
そう言ってポポムンさんはぴょんぴょん飛び跳ねながら行ってしまった。
あたしたちも当初の目的を達成できたことだしそろそろ戻るとしよう。
「ふん、せいぜい女性の容姿に対しては気を付ける事ね!」
未だにシェルは不機嫌のままだった。
あたしは苦笑いをしならコクとシコちゃんに念話を飛ばす。
『コク、シコちゃんどうにか無事に【女神の杖】を回収できましたわ。これから戻りますわ。合図をしたら潜水艇を引き上げてくださいですわ』
するとコクとシコちゃんから念話の回答が来た。
『わかりました、お母様。ご無事で何よりです』
『了解。じゃあ準備が出来たらもう一度連絡を寄こしてね。セレ、ミアム! ティアナが戻ってくるわよ。合図が有ったら引き揚げ開始よ!』
どうやら無事帰れそうだ。
シコちゃんも上手くあの二人に指示を出しているみたいだし。
あたしはティアナたちに振り向き頷く。
ティアナやシェルはあたしの念話が聞こえているはずだから今までのやり取りが分かる。
「イパネマさん、そろそろ戻りましょうですわ」
「そうね、なかなか興味深い所もあるけどこの海底神殿はこれ以上特には何もないみたいだし」
イパネマさんは一応あの水着も持ち帰ると言う事で腰の普通のポーチに納める。
そしてあたしたちはこの神殿を出て潜水艇まで行く。
「お? 魔術師様たち用事は終わったかい?」
潜水艇の近くではロップンさんたちが座って何か話し込んでいた。
「ええ、無事終わりましたわよ。それとあなたたちの主であるリバイアサンも役目を終えこれからは自由に動けますわよ」
あたしがそう言うとマーマンたちは喜びの声をあげる。
「そうか! とうとう主様が自由になられたか!! それはめでたい!」
うーん、マーマンたちが喜んでいるのに当の本人であるリバイアサンは既に遊びに行く事にばかり気を取られているというのに。
なんかちょっとロップンさんたちが気の毒だ。
「よし、祝いにみんなで竜宮城に行くぞ!」
「おおっ! 久しぶりに羽目を外せるな!!」
「お、俺、ヒラメ子ちゃん指名する!!」
「俺はエビ子ちゃんだ!!」
‥‥‥前言撤回。
主も主ならこいつらもこいつらだ。
あたしは軽い頭痛を感じながらロップンさんに別れの挨拶をして潜水艇に乗り込む。
「おう、お前ら! 魔術師様たちがお帰りだ! 粗相のない様に水の中までお送りするぞ! うぉらぁっ! わっせい、わっせい!!」
あたしたちが乗り込むと同時にロップンさんたちが神輿を担ぐかのように潜水艇を持ち上げ水壁の中に運んでくれる。
角刈りマッチョなマーマンに担がれるあたしたち‥‥‥
しかもみんな上半身裸。
よそう、深く考えるのは。
『コ、コク、それとシコちゃん、引き上げの開始をしてくださいですわ‥‥‥』
『どうしましたお母様? 元気が無いようですが?』
『引き揚げ開始ね、分かったわ。セレにミアム! アラージュたちに言って引き揚げ開始よ!!』
コクは心配してくれるようだけど潜水艇の引き上げを始めてもらわなければならない。
あたしはコクに『なんでもありませんわ、大丈夫ですわ』と言って引き上げを始めてもらうのだった。
* * *
「なかなかいい体験をさせてもらったわ。魔術以外でもこういった技術で深海に行けるとかすごいものね」
イパネマさんは今回件で魔術以外の可能性などを実感していたらしい。
あたしには前の世界では当たり前の事だがこの世界には魔術に頼る為そう言った技術の発展が乏しい。
せっかくだから魔術とあちらの世界の技術を融合すればもっと凄い事も出来るんじゃないだろうか?
例えばイオマが今開発している新型魔晶石の高出力を使って飛行船の動力を作るとか‥‥‥
「エルハイミ、だいぶ浮上していたようですね? 窓の外が明るくなってきました」
ティアナがそう言った時だった。
がくんっ!
潜水艇が大きく揺れた。
そして浮上が止まった様だ?
「なっ? なに?」
「なにかしら、浮上が止まった様だわね?」
「エルハイミ! 外に!!」
窓から外の様子を見ていたティアナが緊張した声をあげる。
あたしたちはすぐさま窓の外を見ると吸盤のようなものがへばりついて来た!?
「うわっ! なにこれっ!?」
シェルの悲鳴に足元を見るとうねうねしたものが数本侵入を始めていた!
「クラーケンかっ!?」
ティアナはすぐさま太ももにくくり付けていた短剣を引き抜きその侵入してきた足に刃を突き立てる。
しかし巨大なクラーケンの足は短剣くらいでは切り落とせない。
「くっ! このっ! このっ!」
シェルも短刀を抜いて切りかかる。
イパネマさんも魔術師の杖でクラーケンの侵入してきた足を叩いている。
みしっ!
潜水艇がきしむ。
『エルハイミ! 敵襲よ!! 海賊が襲ってきたようだわ!!』
シコちゃんからの念話が入った。
『シコちゃん! こちらもクラーケンに襲われていますわ!』
どうやら本当にあたしたちの引き上げと同時に海賊どもが襲いかかって来たようだ。
船も心配だが今はこちらを先に何とかしなければならない。
みしみしみしっ!
いけない、潜水艇に亀裂が入り始めた!?
今までの事を考えるともうだいぶ引き上げてもらっているはずだ。
このまま潜水艇の中にいては押しつぶされる。
「シェル! 水の精霊魔法で水中呼吸と水圧緩和を出来ましてですわ!?」
「うっ? やってみる!! 水の精霊よ、私に力を貸して! 水の中で呼吸が出来その水圧を軽減して!!」
シェルが水の精霊魔法を発動させる。
するとあたしたちの体に淡い光が取り付きその効果を発揮し始める。
今のシェルなら出来ると思ったがどうやらうまく行ったようだ。
「ティアナ、シェル、イパネマさん! 私が合図したら防壁魔法を展開してくださいですわ! このままだと潜水艇ごとやられてしまいますわ、潜水艇を爆破して外に逃げ出しますわ!!」
あたしがそう言うとみんなは「わかった!」と短く答えた。
あたしはすぐさま潜水艇の壁に手をつき魔光弾を放つ準備をする。
「行きますわよ! 【魔光弾】!!」
あたしの気合と共にティアナが絶対防壁を展開してあたしたちを包む。
そこへあたしの魔光弾が壁を爆破し、潜水艇を破裂させる。
ぼごぉおおおぉんっ!!
水中ではじけるように泡と共に潜水艇が爆発して巻き付いていたクラーケンの足を引きちぎる。
とたんにあたしたちは海中に投げ出される。
ごぼごぼごぼっ
しかしシェルの精霊魔法のおかげで呼吸も出来るし水圧も全く感じられない。
あたしは【念動魔法】を使って三人を海面へと浮上させる。
そして自分も【念動魔法】で海面に浮上させようとした時だった。
あたしの足に何かが絡み付いた!?
まさかっ!?
下を見れば足をちぎられ怒りに目の色を赤く染めた大きなクラーケンがいた。
やばい、この展開はっ!
にゅるにゅるにゅるっ!!
「がばごぼがばっ!!」
あたしぴーんちぃっ!!
やばいっ!
絶対やばい展開になるっ!!
あたしはもがくがクラーケンの足に絡め捕られていってしまう。
それはあたしの体にどんどんと絡み付きとうとう完全に捕まってしまった。
「ごぼごぼっ! がばごぼっ!」
やばっ!
本当にやばい展開になる!!
既にクラーケンの足はあたしの危険なラインに迫りつつあった!!
こ、このままではティアナ以外にされちゃう羽目に!?
「いごぼっ、やぁでごぼごぼごぼでうわごぼぁぁぁッごぼごぼ!!」
どぼんっ!
ごぼごぼっ。
ざんっ!
ずばっ、ずばっ!!
しかしやばい展開になる寸前にあたしの体に絡み付いていたクラーケンの足は粉々に切られてあたしは解放された。
あたしは急ぎ海面に【念動魔法】で自分を引き上げる。
ざばっ!
「ぶはっ! 危なかったですわっ!!」
「主よ大丈夫か!?」
見ればあたしのすぐ近くにショーゴさんがいた。
どうやらさっきのはショーゴさんのおかげで助かった様だ。
「エルハイミっ!」
「うわっっと! エルハイミ!」
「きゃっ! エ、エルハイミさん!?」
声のした方に顔を向ければティアナがアイミに乗ってシェルとイパネマさんがしがみついている。
アイミに乗ったティアナはそのままこちらに来て手を伸ばす。
「つかまって、エルハイミ。このままアイミを飛ばして船に戻ります。ショーゴもアイミにつかまって!」
そう言ってティアナはあたしを引き上げてアイミの上に乗せてくれる。
アイミの肩に乗ったシェルとイパネマさん、足にしがみついたショーゴさんの姿を確認したティアナはアイミを空中へと浮かばせる。
アイミは緑の光を散布しながらみんなを体に乗せたりへばりつかせたりして海面から浮き上がった。
そこへ先ほどのクラーケンが水面に出てきてアイミを絡め捕ろうとする。
「よくもやってくれましたわね! お返しですわ!! 【竜切断破】!!」
ずぅばぁっっっ!!
足を延ばして海面に出ると同時にあたしが放った【竜切断破】にこのクラーケンはあっさりと真っ二つにされてまた海に沈んで行った。
「船は!?」
あたしは空中高く浮かび上がったアイミから船を探す。
するとすぐ近くで海賊に襲われているあたしたちの船がいた。
「エルハイミ、船に行きます! アイミ!」
ティアナはそう言って船へと向かう。
既に海賊に乗り込まれ始めている様だ。
あたしたちは急ぎ船へと飛んで行くのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます