第394話14-19貿易都市サフェリナ共和国

 14-19貿易都市サフェリナ共和国



 あたしたちは次なる「女神の杖」を求めて貿易都市サフェリナ共和国に向かう事となった。




 「状況はどうですか?」


 「そうですな、やはり殿下の狙い通り第三軍はこの陣形が良いようですな」



 ティアナの質問にロクドナルさんはそう答える。


 今はガルザイルの郊外に有る連合軍駐屯所に有る闘技場で第三軍の訓練状況の確認をしている。

 第三軍が仕上がれば第一軍、第二軍ともに各国の巡視が始まる。


 今の所報告は上がって来ていないが明確なジュメルの話は無い。

 一刻各国に発生した新興宗教もメル教祖のジュメルとの関連から一気に監視対象になり信者の数も激減してしまい自然消滅する所も有ったそうだ。


 なのであたしたち「女神の杖探索隊」も引き続き「女神の杖」を回収する為に行動を開始しなければならない。


 「私たちはこれから貿易都市サフェリナに向かいます。次なる『女神の杖』が存在すると言われている『海底神殿』へと」

 

 「殿下、くれぐれもお気をつけていかれよ。今の連合軍はあなた無しでは立ちゆきませんぞ」


 ロクドナルさんに言われティアナは「分かっています」とだけ言いこの場を離れる。

 そしてあたしたちはまずボヘーミャへと向かうのであった。



 * * * * *



 「失礼します、師匠」



 扉をノックしてティアナとあたしは師匠の所へと来ていた。


 「来ましたか、ティアナ、エルハイミ」


 そう言いながら師匠はあたしたちを迎えてくれる。

 そしていつものお茶を入れ始める。


 「あ、師匠お構いなくですわ」


 「お茶くらい飲んで行きなさい。そのくらいは時間もあるでしょう?」


 そう言って師匠は緑茶を入れてくれる。

 そしてソファーに座っているあたしたちに師匠はお茶を出してくれた。


 「いただきます」


 ティアナはそう言ってお茶を飲む。

 あたしも師匠もまずはお茶を一口。

 

 静かに湯飲みを置いてまずは一息つく。


 

 「さて、アンナから話は聞いていると思います。貿易都市サフェリナ共和国のアインシュ商会から連絡がありました。今次の『女神の杖』探索に協力をしたいと」


 「師匠、アインシュ商会は何を考えているのです?」


 師匠はあたしたちの湯飲みにお茶を注いでくれる。

 アインシュ商会の事だ、ジュメルがらみでも無いのに協力を申し出るとはきっと何かあるのだろう。



 「アインシュ商会の保有する船荷会社の交易路上に最近海賊が出るそうです。サフェリナとこのボヘーミャは大陸間同士の貿易で古くから関係が強いのですが特にその航路が狙われていて貴重なマジックアイテムの強奪などが目立っています」



 師匠はそう言いながら自分の湯飲みを持ち上げる。

 そしてまた一口お茶を飲む。



 「海賊ですか? しかしそのような賊、アインシュ協会なら冒険者などを雇って十分討伐が出来るのではないでしょうか?」


 「並の賊であればそれも可能でしょう。しかし普通ではないそうなのです」


 「それで我々に話が?」


 師匠は静かに頷く。

 

 「連合軍に『女神の杖』探索に協力する代わりに海賊の討伐を手伝えとは大々的には言えないでしょう。しかし『女神の杖探索隊』にはあなたやエルハイミがいる事を彼らは知っています。そしてあなたたちの実力も」



 あたしはロザリナさんを思い出していた。


 アインシュ商会であたしたちの実力をよく知っている人物と言えば彼女くらいしかいない。

 相変わらず物事に対して必ず損得が働きあたしたちを上手く使おうとする。


 しかし今回の海底神殿のゲートは既に破壊されそこへ行く手段は船しかないらしい。

 となればアインシュ商会などの大きなところと手を組めばいろいろと便利ではある。

 あたしはため息をつく。


 ロザリナさんの事だから酷過ぎる事はしないと思うけど要注意ではある。



 「わかりました。今回の探索に関して確かにアインシュ商会の協力は助かります。そのお話を受けましょう」


 ティアナはそう言ってお茶を飲み干す。



 「師匠、ごちそうさまでした。それでは行ってまいります」


 「サフェリナへの定期船は二日後に出航です。こちらで手配はしておきましょう。ティアナ、エルハイミ十分に気を付けて行ってくるのですよ?」


 「はい、分かっておりますわ師匠」


 そう言ってあたしたちはサフェリナに向かう準備をするのだった。


    

 * * * * *



 「こ、これがボヘーミャ名物たこ焼きですか!?」


 「ティアナ将軍、いまだに信じられないのですが本当にクラーケンが入っているのですか?」


 意外な話アラージュさんとカーミラさんはたこ焼きが初めてだったらしい。


 

 「クラーケン? 人間はまたけったいなものを食いやがりますね?」


 「あれ? クロエは食べた事無いの? 結構いけるわよ?」


 「お母様、私も食べてみたいです!」



 わいわいがやがや。



 出航までまだ時間が有るのであたしたちはボヘーミャの街で買い出ししながらまだ街をちゃんと見た事の無いアラージュさんやカーミラさんを連れて来ていた。



 「この学園都市は相変わらずね。昔と変わらない‥‥‥」



 「あら? イパネマさんもこの学園都市に来たことが有るのですの?」


 「ええ、遠い昔にね。でもこのたこ焼きと言うのは初めてだわ。面白いわね、丸くてしかもクラーケンを使っているのでしょう?」


 イパネマさんはそう言いながら一つたこ焼きを口に運ぶ。



 「むふぅっ! はぅはふぅ、んんっ、あふい、ん、おおふふぎぃ」



 妙に色っぽく熱がりながら大きく口にほうばったたこ焼きを食べるのだがそのしぐさがやたらと妖艶で思わずあたしは反応してしまった。




 「エルハイミ、私にもたこ焼きを取ってください」



 ぎゅっ!



 「みゃっ! ティ、ティアナ?」


 他の人には見えない様にティアナが笑顔であたしのおしりをぎゅっとつねってきた。


 

 『エルハイミも相変わらずね。そう言えば海底神殿にはどうやって行くつもり?』


 そんなあたしたちの様子にシコちゃんは海底神殿に行く方法について聞いてくる。

 あたしはおしりをさすりながらあたしを見てるティアナに愛想笑いをしてからシコちゃんに答える。


 「シェルに大いに手伝ってもらいますわ。それとアイミにも協力してもらってウォーターの力も使って海底神殿に行くつもりですわ」


 あたしは考えていたプランを言う。


 『まさか全員で?』


 「今回はアインシュ商会の協力が有りますわ。船で目的地まで行ってそこから潜水艇で神殿の近くにまで行ってそこから精霊力を使って神殿まで行きますわ」


 「潜水艇?」



 ティアナはその聞き慣れない単語に聞き返して来る。


 「はい、深い水の中に入っても大丈夫な船ですわ」


 『水の中に?』


 シコちゃんも興味を持ったようで更に聞き返して来る。


 「ええ、船と言っても球体の鉄の塊ですわ。それに鎖と空気を送り込む管がついていて船から沈めてもらうものですわ」


 あたしは指を立ててそう説明する。

 

 「なになに? また変な事考えているの? なにその『潜水艇』って?」


 シェルもやって来た。


 「えー、あたし水の中やだぁ。あたしいかなくてもいい?」


 マリアもたこ焼きを食べながらそう言ってくる。

 まあ今回は水の中だしいける人数も更に絞られるからなぁ。



 「お母様、これ意外と美味しいです! もっとください!!」


 「くっ、人間風情の食べ物のくせに! 主様、私もおかわりでいやがります!!」



 あたしは苦笑しながらまたたこ焼きを買う。

 この後潜水艇用の部材なんかも買い集めてみんなにも協力してポーチにしまってもらわなければならない。




 あたしたちはしばしたこ焼きを楽しみながらボヘーミャの街を散策したのであった。   

 

  

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