第377話14-2空から落ちた王宮

 14-2空から落ちた王宮



 あたしたちは連合軍駐在所で紹介された連合軍の幹部と顔合わせをしていた。



 

 「お初にお目にかかる、私はアラージュ、ティアナ将軍の補佐をしています」


 ぴくっ!


 「こんにちわ。私はカーミラと言います。ティアナ将軍の補佐をしています。」


 ぴくぴくっ!


 「私はルジェルド、第一軍を任されております」


 ほっ。


 「自分はガラと申します。二軍を任されています」


 ほう?


 「俺はルノマン、第三軍を任されている」


 へぇ~。



 今あたしたちの前にいるのはこの五人。

 みんな連合軍の幹部の人たちだ第一軍から第三軍は男性が指揮をとっているのかぁ‥‥‥



 しかし補佐役が女性ねぇ‥‥‥


 しかも二人ともすっごい美人。

 アラージュさんは青い髪でショートボブ、目鼻がすっきりとしていてティアナと同じ男性色が強い宝塚風。

 対してカーミラさんはティアナに負けず劣らすの豊満なものをお持ちなゆるふわ系のお姉さん。

 ブラウンの長い髪を右肩でみつあみにまとめている。



 何でティアナの周りには可愛い子とか美人が集まるのよ?



 あたしは目を細めてティアナを見る。



 おいティアナ、何故今あたしから視線を外した?



 「貴女がかの有名な『雷鳴の魔女』、エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトン殿ですか? お会いできて光栄です」


 ルジェルドとか言う男性の幹部はそう言ってあたしに握手を求めてきた。

 ここはあたしも大人の対応を取る。


 「お恥ずかしいですわ、有名などと。お初にお目にかかります。エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトンと申しますわ。ティアナ将軍の妻ですわ」


 あたしはわざとそう言ってちらっとティアナを見る。


 「ほう、ティアナ将軍の‥‥‥ 将軍はお盛んだと思っていたが奥方をお持ちだったか? しかもこんな可憐な奥方を」


 「あら、お上手ですわね? ところで、ティアナがそんなにお盛んだったのですの?」


 あたしは更にティアナをチラ見する。

 すると表情はいつも通り無表情の将軍ではあったが額に脂汗をぎっしりとかいている。


 「おや? ご存じ無かったか? 我が愛しのセレ殿とかなり親密なご様子ですが?」


 「ルジェルドさん、何度も言いますが私は男性には興味有りません。私がお慕いするのはティアナ様だけですからね!」


 セレがそう言ってあたしたちの挨拶に割り込んでくる。

 

 「そうですね、私もティアナ様をお慕いしています。他の方には残念ながら興味はございいません」

 

 ついでと言わんばかりにミアムもそう言う。

 それを聞いたガラさんがなぜか肩を落とす。

 しかしそんな姿を見ていたアラージュと言う女性の宝塚幹部は頬を染めてぽつりとこぼす。

 

 「あ、相変わらず可愛らしいですね‥‥‥ セレとミアムは。た、食べてしまいたい‥‥‥」



 ん?

 あたしはてっきりこのアラージュさんとカーミラさんはティアナの取り巻きなのでティアナ狙いなのかと思ったけど違うのかな?



 「相変わらずね。アラージュは。セレちゃんとミアムちゃんが怯えているわよ? 冗談もほどほどにした方が良いわね?」


 「い、いや、私は本気だぞ? セレ殿とミアム殿を嫁に欲しいと思っている!」


 「またアラージュの妄想が。いいか、アラージュ、セレ殿は私が娶るのだ!」


 カーミラさんに言われたアラージュさんははっきりととんでもない事言い、それに輪をかけてルジェルドさんも割り込んでくる。



 「私はティアナ様以外の所には行くつもりは有りません! ティアナ様ぁ~」



 どさくさに紛れてティアナに抱き着こうとするセレをあたしは片手で押さえて阻止する。

 なんかここも見事な三角関係!?


 

 『最近エルハイミたちの周りはこれが普通なのかと思うようになってきたわ‥‥‥』


 「エルハイミだものねえ~」


 シコちゃんやシェルはその様子を楽しんでいるようでもある。



 

 「んんっ、それでは顔合わせも終わったようですのでこれからの事について話したいと思います」



 そんな中ティアナは話を進めようとする。

 額には汗をびっしりかきながら。


 ティアナ、今は仕方ないけど夜になったら問い詰めるからね?

 今晩は正直に話さないと朝まで許してあげないからね?

 それはもう激しくしちゃうからね?



 あたしの視線にティアナは表情は崩さずたじろぐのだった。



 * * *


 

 「ですのでバックアップにはアラージュについてもらいます。それとイパネマさんは【回復魔法】も使えましたよね?」


 「ええ、使えるわ。【治癒魔法】はムリだけどね」


 そう言ってイパネマさんはあたしを見る。


 まあ【回復魔法】の上位になり魔力を込めれば込めるだけ肉体蘇生までできてしまうあの魔法はよほどの事が無い限り使うのは困難だろう。


 大体の人が肘から下を回復する前に魔力が尽きるから。

 教会の司祭級の人でも使える人が少ないからね。

 普通は数人が魔力を出し合って何とか回復するくらいだから。

 だから教会で治してもらおうとすると莫大な寄付金が必要になる。


 「それではバックアップにはアラージュ、セレ、ミアム、イパネマそれと近衛兵を付けます。『中央都市』自体にはガーディアンは少ないですが魔物が徘徊します。決して気を抜ける場所では無いので注意してください」


 ティアナはそう言ってこれからガルザイルの地下に眠る迷宮への攻略の予定を話す。



 * * * * *



 「へぇ、これが『空から落ちた王宮』かぁ。 ほとんど原形残ってなじゃない?」


 シェルは久しぶりに開く城門から入って目の前に広がる瓦礫の山を見る。


 元々この上空に王宮が浮いていて、その下に中央都市が存在していた。

 中央都市はそこから各国へのゲートが有ったり天空の王宮に物資運搬の為様々な施設もあったらしい。


 そんな中に『女神の杖』を封印する為の地下迷宮が設置されていたという話だ。


 ご先祖様の話ではそこそこ強力な守護者が配置されていたらしいがあたしたちなら問題無いだろとも言っていた。



 「お姉さま、これって魔晶石でしょうか?」


 イオマが転がっている石を拾って埃を払うとうっすらと輝いている。

 それは紛れもなく魔晶石で、当時古代魔法王国では魔晶石がお金の代わりにも使われていたと聞く。


 「そうするとまさしく宝の山ね。その辺に転がっているのはみんな魔晶石の様だわよ?」


 イパネマさんも石を拾い上げ埃を払うとこれもやはりうっすらと輝いている。


 『当時は魔晶石なんて当たり前に有ったからね。公共施設の魔力供給はケンちゃんがやっていたし、個人的に魔力が足りない時に使うくらいしか使い道が無かったからねぇ』


 シコちゃんは懐かしそうにとんでもない事を言う。


 現代でも魔晶石自体は便利なマジックアイテムとして使えるけどここまで魔力が込められた魔晶石は少ない。

 ほとんど容量の上限まで魔力がたまっているみたいだし。



 「こ、これは御馳走ばかりでは無いですか! ちょっと味見を‥‥‥」



 コクはそう言って魔晶石に口を付けて魔力を吸い取る。


 「うーん、魔力としてはそこそこ量もあるのですが、やはりお母様のおっぱいの味にはかないませんね? 大味で美味しくない」


 「コク、魔力にも味なんてあるのですの?」


 

 思わずあたしは聞いてしまった。



 「はい、お母さまのは甘くて濃い味がします!」


 『そうねぇ、エルハイミのは熱くてドロッとしていて濃厚なのよね』


 「あ、わかるわかる、奥にどぶっっと濃くてあっついのがどくどくと入ってくるのよね!」



 い、いや、ちょっと、みんな言い方が‥‥‥



 「エ、エルハイミ、まさか‥‥‥」


 ティアナはあたしを見て表情は崩さずわなわなとしている。


 「ち、違いますわ! 魔力! 魔力の話ですわ!! ティアナにだって昔は魔力供給沢山したじゃないですの!!」


 「ま、まあ、あれはあれで気持ちいいのですが‥‥‥」



 え?

 まさか昔からあたしに魔力注入されて気持ちよかったっての?


 

 そ、そんな、そんな前からティアナはあたしに魔力入れられて楽しんでいたの!?


 あたしはふと他の人も思い出す。

 アンナさんなんかにもしちゃったし‥‥‥


 もしかして魔力供給ってその人の奥に大量に流し込むのってやばいの?


 

 も、もしかしてあたしってやっちまっていたの‥‥‥



 頭を抱えているとショーゴさんが警戒の声を発する。



 「主よ、早速お客さんだ!」



 既にショーゴさんはオリハルコンのプロテクターを装着してなぎなたソードを構えている。

 見れば正面の瓦礫からアイアンゴーレムがのそのそとやって来た。



 「なんだ、アイアンゴーレムでいやがりますか? つまらない。ここはショーゴに任せるでいやがります」



 クロエさんは興味もなさそうにポリポリと頭を掻いている。



 「ええっ? ア、アイアンゴーレムですよ!? ティアナ将軍、どうしましょう!?」



 アラージュさんが近衛兵と一緒に剣を抜き戦闘態勢を取っているうちにショーゴさんがアイアンゴーレムを真っ二つに切ってしまった。



 「え?」



 「流石ショーゴですね。以前にも増してその剣の技に磨きがかかっています」


 驚くアラージュさんの横をティアナは平然として歩いていく。

 しかしそれだけで終わらなかった。

 倒されたアイアンゴーレムの後ろから無数の大猿たちがあたしたちを襲ってきたのだった!



 「ジャイアントモンキー!? やばい、奴等の群れが近くにいたのか!?」



 アラージュさんは引きつづきセレやミアムを守る陣形でこの大猿に対峙しようとする。

 しかし多勢に無勢。

 取り囲まれるの時間の問題だ。



 「【炎の矢】!」



 あたしは数百発の【炎の矢】を作り出してそれを大猿にぶつける。


 流石に一発で倒せないけどその大量の【炎の矢】に驚いて大猿たちの動きが止まった。



 「邪魔ですね、すぅ~」



 グロロォオオオオォォォォッ!!



 コクはそう言って大きく息を吸ってから威嚇の声で鳴く。

 すると途端にびりびりと感じる竜の鳴き声が響き渡り大猿たちは悲鳴をあげながら逃げ帰って行った。



 「くっ!? い、今の鳴き声は!?」


 「私が威嚇しました。あの程度の者、手にかけるのも面倒です」


 そう言ってあたしとコクはティアナの後について行く。

 その後にイオマもシェルもクロさんクロエさんもついて来る。



 「なんて人たちだ‥‥‥」



 「流石ティアナ様! ステキです!」

 

 「セレ、ティアナ様にお飲み物を持って行きましょう!」


 驚くアラージュさんの横をセレやミアムも通り過ぎる。

 

 「ティアナ将軍だけでは無い、この人たちがいればジュメルだって‥‥‥」




 アラージュさんたちは慌ててあたしたちに続いてくるのだった。

 

 

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