第十二章
第313話12-1沼地を抜けて
12-1沼地を抜けて
ツエマの町であたしたちは必要な物を買ったり冒険者ギルドで不要な素材を売ってお金にしたりして移動の準備をしていた。
「エルハイミ、水上都市スィーフに行くにはやっぱり湿地帯を抜けなきゃだめらしいわね」
シェルは冒険者ギルドで受付嬢と話していた。
ショーゴさんは乗合馬車等の確認、あたしとイオマは保有していたミスリルやその他の部材を換金してもらっている。
「人間とはいちいち厄介なものでいやがりますね。そのまま目的地まで飛んでいけないとは」
「クロエ、そう言うな。我々は黒龍様、そして主様に仕える身。郷に入らば郷に従えともいう」
コクたちはとりあえず待合の椅子に座ってもらって待ってもらっている。
「シェル、それは仕方ありませんわ。もともとそのつもりでしたし」
「でもお姉さま、そうすると馬車とかは無理っぽいですね? 湿地帯では何かあったらすぐに馬車が動けなくなってしまいます」
確かにイオマの言う通りだ、なのでここツエマの町でどうやって水上都市スィーフに行っているかを聞きもしキャラバンなどが有ればそれに同行させてもらおうと思っていた。
「主よ、乗合馬車は無いそうだ。ここではオオトカゲを馬代わりに移動するのが主流らしいな」
ショーゴさんも戻ってきた。
そうするとそのオオトカゲを調達しなければだ。
「ミスリルやアースドラゴンの牙などを換金したおかげで当面は資金的には問題はありませんわ。しかし、オオトカゲってそんなに簡単に調達できるのですの?」
あたしは馬には乗れない。
いや、乗せてもらうことは出来るのだけど自分では操れない。
それにそのオオトカゲってのもどんなものかまだ見ていないので果たしてあたしで乗りこなせるのか?
「そう言えば移動用のオオトカゲはこのギルドでも販売しているって言ってたわね。見に行ってみない、エルハイミ?」
シェルはあたしにそう言ってきてくれる。
確かにまずは見てみないと何とも言えない。
シェルはさっそく先ほどの受付嬢に話して担当の人をまわしてもらった。
* * *
「こ、これがオオトカゲですの!?」
今あたしが見ているトカゲは大きさ的には象くらいある。
この大きさならば荷物を載せてもゆうに三、四人は乗れそうだ。
「この子らは大人しい性格だから餌もその辺の草で十分だからね、スィーフに行けば向こうのギルドでも下取りで引き取ってもらえるよ」
担当の人はあたしたちにそう言っておすすめの子たちを紹介してくれる。
あたしたちはそのオオトカゲを二匹買い入れ早速にも水上都市スィーフを目指すことにした。
「この子らの足ならスィーフまで十日くらいかね、野営するならヒル除けの薬は忘れない方が良い、特にお嬢さん方は肌に傷なんてつけたくないだろう?」
商売上手なこの担当の人はそう言ってヒル除けの薬を出してくれる。
確かにその通りなのでその薬も購入してあたしたちは出発した。
* * * * *
「そうですか、嫁が見つからないとは難儀ですね。しかしそのスィーフに行けば仲間も多いのでしょう?」
コクがオオトカゲの頭の上に載って何か話している。
あたしたちにはオオトカゲが何言ってるかなんてさっぱり分からないが竜族に近いトカゲはコクがその気になれば念話が出来るらしい。
「一体何の話をしているのですの?」
「黒龍様はお優しいのでこう言ったトカゲ風情の身の上話まで聞いてくださるのでいやがります」
「世話好きのおばちゃんかよ? あーそう言えばエルハイミ、ファイナス市長から連絡有ってどうやらティアナとも連絡が取れたらしいわよ」
シェルのその言葉にあたしは大喜びで続きを聞く。
「今はジュメル討伐に出て手が離せないらしいけど、半年くらいしたら一旦ボヘーミャに来るらしいわよ」
そうか、ティアナがボヘーミャまで来てくれるのかぁ。
あたしはものすごくうれしくなって浮かれるけどシェルやイオマは微妙だった。
「ふう、お姉さまに甘えられるのもあと半年かぁ。お姉さまこれから毎晩可愛がってくださいよ?」
イオマがそう言ってあたしに抱き着いてくる。
と、その時にコクが警告を発した!
「主様! 何者かが近づいています! ベルトバッツよ、その者を止めよ!!」
「はっ! 黒龍様の仰せのままに!」
コクがそう言うと何処から湧いたのかベルトバッツさんたちが影から出て飛び去って行く!?
「なっ!? ベルトバッツさんたちも付いて来ていたのですの!?」
「何を言っていやがります、ずっと一緒について来ていやがりましたよ?」
あたしが驚いているとクロエさんが当たり前のように言ってきた。
いやいやいや、普通の人間が影の中になんて潜めないって!!
あたしが驚いているとコクが戻ってきて報告をしてくる。
「どうやら人では無いようです。魔獣やその他の類かもしれません、主様も気を付けてください」
「コク、その前にベルトバッツさんたちってずっと付いて来ていたのですかですわ?」
「はい? ああ、彼らには常に私たちの周りを警戒させています。それと便利なのでいろいろと人間の世界では使っていましたよ? 主様も必要であればどうぞいろいろと申しつけください」
サラっと言ってくれるけど、ヨハンさんたち以上の隠密がずっと付いて来ていたとは。
そう言えばロックワームの時もコクは鼻歌交じりで討伐に手を貸してくれていたっけ。
しかし、今はそのやって来るという者に集中しなければいけない。
あたしたちは警戒をするのだった。
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