第243話9-15クロの頼み

 9-15クロの頼み



 あたしは久しぶりベッドで目が覚めた。



 いつもの癖で裸で寝てしまった。

 

 「いけませんわ、ティアナがいないというのにいつもの癖で服を全部脱いでしまいましたわ」


 寝ぼけた眼を手でこすり体を起こそうとすると何かが手に当たる。

 ぽよんと自分の胸が揺れるのを感じながらそちらに首を回す。


 すると‥‥‥


 イオマが気持ちよさそうに寝ていた?


 

 あれ?

 あたし昨日イオマと一緒に寝たっけ?


 

 昨日の事を思い出してもそんな事は無い。 

 この子、いつの間にあたしの部屋に?


 「イオマ、イオマ起きなさい。何故私の部屋で寝ているのですの?」


 イオマをゆするがすぐには起きない。

 幸せそうな顔をして熟睡している。


 仕方なしにあたしはイオマにかかっているシーツをはぎ取る。

 そして思わず固まる。


 イオマも裸で寝ているのだ。


 

 え?

 ええ??

 なにこれ!?

 なんで事後みたいになっているの!!!?



 するとお約束でイオマがう~んとか言いながら目覚める。


 「あ、お姉さま、おはようございます。昨日は激しかったんだからぁ~」


 「いやいや、そんなはずはないですわ! 昨日はちゃんと一人で寝ていたはずですわ!!」


 「もう、お姉さまのいけずぅ~ せっかくもぐりこんだのにあたしに手を出してくれないんですものぉ~」



 ちょっとマテ、何それ!?

 あたしがイオマに手を出すわけないでしょうにっ!

 この子勝手に忍び込んできたって事?




 ばんっ!



 

 「おっはようぅ~ いや~流石にベッドだとよく眠れぇ、るぅ??」


 「違いますわ! 私は何もしていませんわ!!」


 「あん、お姉さま、昨日はすごかたぁ~」


 二人とも裸でベッドに居れば有らぬ誤解が発生する。

 

 「え、ええと~、そうだ、あたしは何も見なかった、うん、見なかった。ティアナにもそう言おう!」


 「しぇぇぇるぅぅぅぅっっ!!!!」


 あたしは裸のままシェルを捕まえに行くのだった。



 * * * * *



 「だってぇ、お姉さま最近全然胸のマッサージしてくれないんですもの!」


 「その前にイオマ、反省はですわ?」


 今はイオマにお説教中だ。

 最初は正座をさせ足がしびれるのを我慢させてお説教と思ったのだが途中からやたらと興奮して気持ちいいとか言い出したので慌てて椅子に座らせた。


 どうもこの子はあたしがするお仕置き、特に肉体的負荷に興奮をしてしまうらしい。

 おかげでお尻でも叩いてやろうかと思ったら恍惚とした表情で期待し始めあたしをドン引きさせた。

 

 なので体に負荷がかからないこのお説教へとなったのだった。


 「とにかくもう二度とあのような事はしないと約束しなさいですわ」


 「わかりましたよ、お姉さま。でも、ちゃんと胸のマッサージはしてくださいよ、約束ですよ?」


 約束をした手前嫌とは言えずあたしは「いずれやってあげますわ」とだけ言ってイオマを開放する。



 「ねえ~、エルハイミぃ~そろそろこっちもおろしてよぉ~」


 見るとシェルが天所から両手両足を縛られ水魚のポーズでつるされて、体を揺らしながらあたしを呼んでいる。

 

 「で、シェルも約束は守ってくれるのですの?」


 「守るからもうおろして~」

 

 「本当にですの?」


 あたしは両手でシェルのほっぺたを押さえてこちらを向けさせる。

 そして鼻がくっつくくらい顔を近づける。 


 「するってば、するわよ! だからもうおろしてよぉ~いい加減手足が痛いわよ!!」


 「絶対にティアナには内緒ですわよ!!」


 あたしはそう言ってからシェルを開放してやる。

 シェルは手首や足首をプラプラして首をこきこき鳴らしながらあたしに話しかけてくる。


 「それでこれからどうするつもりよ? 黒龍様ってのは寝ているのでしょう? 起きるまで待つつもり?」


 「それは今考えてますわ。どちらにせよもう一度クロ様とお話する必要がありますわ」


 あたしはそう言ってカートから昨日見つけたお茶を取り出し準備する。

 起き抜けに久しぶりにお茶をいただく。

 体の中に温かい液体が流れ込んできて体を温めてくれる。



 「そう言えばショーゴさんはもう起きているのでしょうかしら?」


 「うーん、まだ行ってないから分からないけどショーゴの事だから起きているんじゃない?」


 シェルもお茶を飲みながらそう言う。

 するとドアをノックする音がした。



 「起きていやがりますか? 朝飯を恵んでやるから出てきやがれです。」



 クロエさんのようだ。

 

 あたしたちは慌てて扉を開ける。

 すると昨日と変わらぬ黒髪の美しいメイド姿のクロエさんが立っていた。   



 「えーと、おはようございますですわ、クロエ様」


 「挨拶はいいからついてきやがれです。クロ様がお待ちかねです」



 そう言ってクロエさんはショーゴさんも同じように呼び出す。

 ショーゴさんはすでに起きていてあたしたちと一緒にクロエさんについて行ってあの食事をした部屋へと着く。



 テーブルには既にクロさんが座っていてあたしたちが座る席には朝食が準備されている。


 

 「来たか。まずは食事を済ませる事だ。それから話が有る」



 そういって静かに目を閉じる。

 何だろう?

 改まって。



 あたしたちは席に着きクロエさんの給仕で食事をとる。

 スクランブルエッグにソーセージ、サラダにパン、果物に紅茶。

 今までの迷宮生活では考えられない理想の朝食だった。


 あたしたちはそれらをおいしく頂き紅茶を飲む。

 するとクロさんが目を開きあたしたちを見渡す。


 「弱きものたちと言ったが、人間の汝らならできるかもしれん。汝らに我が主、黒龍様の様子を見てもらいたい」


 いきなりクロさんはそんな事を言い出した。

 一体どういう事だ?



 あたしたちは静かにクロさんの次の言葉を待つのだった。



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