第244話9-16エルハイミ対エルハイミ

9-16エルハイミ対エルハイミ



 「弱き者たちよ、汝らに黒龍様の様子を見てもらいたいのだ。」



 クロさんのその言葉にあたしたちはびっくりしている。

 昨日は起こすなとか言っていたのに一体どういう風の吹き回しなのだろう?


 「クロ様、一体どう言う事かご説明いただけますかですわ」


 クロさんはお茶を一口飲んでからあたしたちを見る。

 そしてその重い口を開いた。


 「どうも昨日より黒龍様が無意識に防御結界を張ったようだ。そして近づく者にその者と同じ力の守護者を作り出し近寄らせぬのだ」



 どういう事だ?

 同じ力の守護者ってどういう意味?



 「忌々しき亡者の王リッチの呪いは今なお続いているようで、黒龍様はそれに抗う為に大量の魔力をお使いになり更に眠ることによりその呪いの進行を止めようとなさっておられる。しかし我ら分身でさえ近づけさせぬとは黒龍様の身に何かあったのやもしれぬ。我ら分身では力が大きすぎて守護者も同等の力を得てしまう為本気で戦えばこの屋敷どころか迷宮さえも吹き飛んでしまうのだ」


 そこまで言ってからクロさんは大きなため息をついた。

 

 「まさか鏡写しの秘術をお使いになるとは、無意識とは言え黒龍様のお体に何かあったのではないか心配でな。汝ら人間であれば守護者と戦い、勝ち黒龍様にお近づきになれるやもしれん。鏡写しの秘術は一旦破れれば我らが近づいても再発動はされん。どうだろうか、頼まれてはもらえんだろうか?」


 クロさんはじっとあたしを見る。


 「クロ様にはお世話になっておりますし、私たちのもともとの目的は黒龍様にお会いする事、勿論引き受けさせていただきますわ」


 あたしは快諾する。

 クロさんは「感謝する」と言って立ち上がった。


 「ついて来るがいい。下の神殿へと案内しよう」


 そう言うクロさんについて部屋を出る。

 そして廊下に全員が出た所でクロさんが言う。


 「下の神殿に行くが汝ら身に着けし武具はそろっているのか?」


 「はい、こう見えても如何なる時でも対応出来るようにしておりますわ」


 あたしがそう言うと「結構」とだけ言ってぱちんと指を鳴らした。

 すると一瞬浮遊感が有ったかと思うとあたしたちはいきなりだだっ広い空間へと来ていた。



 「うわっ、なにこれ?」


 「お、お姉さまぁ~」



 「みんな落ち着いてですわ、クロ様が私たちを瞬間移動させたのですわ」


 「ほう、よく気付いたな。まさしく汝の言う通りだ」


 ここへ来て初めてクロさんは小さく微笑んだ。



 この人、笑えるんだ。



 あたしはそう思ってもう一度周りを見る。

 するとここは石畳の床にギリギリ見える所に壁らしきものが有る。

 

 そして正面、うっすらと影が見えるが巨大な生物が寝ている。

 その巨大な生物は半透明な殻のようなもので覆われている。

 シャボン玉のようにゆらゆらと表面が七色に変化している。


 

 「これより先に進むと守護者が現れる。それは汝らと同じ力を持ちし者。汝らがそれらを打ち負かせればその秘術は破られる。頼めるか?」


 「ええ、分かりましたわ。シェル、ショーゴさん、イオマ準備は良いですの?」


 「ああ、大丈夫だ、主よ」


 「また戦闘? 仕方ないわね、いいわよ何時でも!」


 「ふえぇえぇん、お姉さまぁ~」



 あたしたちは前に進み戦いの準備をする。

 あたしもシェルもライトプロテクターを身に着ける。

 ショーゴさんも異形の兜の戦士に変身する、そしてストライクモードになる。

 イオマもおっかなびっくりしながら魔術師の杖を構えている。


 しばらくあたしたちが進むと各々の前に等身大の鏡があらわれあたしたちを映しだす。



 映し出されたあたしたちは無表情で鏡から這い出してきた!



 「あたしってもっとかわいいわよね?」


 「そうですわね、私だってあそこまで不愛想ではありませんわ」


 無表情で視点の定まっていない瞳。

 しかしあたしたちがもう一歩足を踏み出したその瞬間その守護者たちは動き出した!

  

 「ふんっ」


 ショーゴさんが切りつけてきた守護者のショーゴさんの刀を受け止める。


 つばぜり合いになった状態からショーゴさんが肘から小刀を引き抜き守護者のショーゴさんに切りつけるが相手も全く同じに動いてその刃を受け止める。



 「ひゅっ!」



 シェルが守護者のショーゴさんに矢を放つが、なんとその矢に守護者のシェルが放った矢がぶつかり両方とも空中で飛散して地面に落ちる!


 「なっ! なんて器用な事を!」


 あたしは【氷の矢】を守護者のシェルに放つと守護者のあたしが【炎の矢】を放ち【氷の矢】を相殺する。



 ボシュ!



 「私と同等の魔法の矢を放ちますのですの? 流石クロ様が言われるだけの事はある!」


 あたしはそう言いながら既に【束縛】の魔法を展開しながら【絶対防壁】を皆にかけ離れた位置から【雷撃魔法】を発動させる!


 その動きを読んでいたのか、守護者のあたしは【絶対防壁】をすでに展開しながら【束縛】をはねのけ、【地槍】を発動させる。

 しかしこっちだって動きは読んでいる、【地槍】はあたしの【絶対防壁】で防がれている。

 そしてわざと離れた所に発生させた雷撃が別の角度から守護者のあたしを襲う!



 ばちっ!



 その雷撃が守護者のあたしに当たると思った瞬間、守護者のショーゴさんが投げた小刀が【地槍】に刺さり避雷針となって雷撃を防ぐ。



 むむっ!?

 向こうも結構連携がとれている!?




 がきぃぃいいいんっ! 



 ショーゴさんが切り結んでいた状態から離れた。

 そしてあたしの横に一旦さがる。

 同時にシェルが光の精霊で目くらましを入れる。


 「イオマ防壁魔法! シェル続けて牽制を!」


 あたしは指示しながら【絶対防壁】を皆の頭上に展開する。

 シェルの目くらましの光の妖精が消える前にその光の中からショーゴさんに向けて矢が飛んでい来た!

 しかしイオマの【防壁魔法】がそれを防ぐ。


 と、頭上に大きな魔法陣が現れたと思ったら雷の雨が降ってきた、【雷龍逆鱗】の大技だ!



 がらがらどっかぁぁああぁぁぁんっ!



 雷の豪雨はそれでもあたしが展開していた【絶対防壁】で防ぎ切った。

 あたしたちが離れて一所に集まったので狙ってきたのだろう。

 しかしそれはこちらも同じ、その瞬間を狙ったあたしの【竜切断破】が守護者のあたしたちを襲う!


 その光の刃はまとめて守護者のあたしとショーゴさんを切り裂く!


 よしっ!


 そう思った瞬間あたしをショーゴさんが抱きかかえその場を飛び退いた?

 着地して今まであたしがいた所を見ると別の角度から守護者のショーゴさんがアサルトモードで撃って来ていた。


 「なっ? 【竜切断破】で倒したはずじゃ」


 「よく見ろ主よ、幻影だ。本体は別の所にいた」


 なにっ?

 いつの間に??


 見ると守護者のショーゴさんと守護者のあたしはは全く別々の場所にいた。

 

 「さっきの目くらましが逆手に取られたか!?」


 シェルは牽制の矢を放っている。

 


 こりゃ、まだまだ長引きそうね。




 あたしはショーゴさんに降ろしてもらいながら守護者のあたしを睨むのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る