第134話6-6ユグリアの攻防
6-6ユグリアの攻防
エルフの村を駆け抜け、あたしたちは例の門にたどり着いた。
「緊急事態だ、門を強制的に開ける。俺から絶対にはぐれない様注意してくれ!」
そう言ってソルガさんは何やら呪文を唱える。
すると、森の精霊ドライアードが二人出てきて扉を左右に開いてくれる。
「行くぞ!」
それだけ言ってソルガさんは扉の中に入っていった。
あたしたちもそれに続き急いで入るが、あの金色の世界では無く紫や藍色のおどろおどろしい雰囲気の森になっていた!?
前を走るソルガさんを見失わ無いようにあたしたちもここを走り抜けける。
そして気付けば暗い森の中に出ていた。
ソルガさんは構わず走り続ける。
あたしたちもそれを追って走る。
既にゲート近くを通って森を抜けるところまで来た。
すると前を走るソルガさんが立ち止まる。
ソルガさんの所まで来て街を見ると西側から火の手が上がっているところがある!!
「はぁはぁ、ソルガさん敵は!?」
「くそう、もう街にまで入っているのか!!?火の手が上がっている!仲間のエルフの戦士たちと冒険者たちが応戦しているようだ、行くぞ!!」
ソルガさんは再び走り始める。
「アイミ、ショーゴさん!!」
「おうっ!我が主よ!!むんっ!!戦闘体形、転身!!とうっ!!!」
「アイミ、行くわよ!!」
ぴこっ!
ブンっ!!
ショーゴさんは変身して異形の兜の戦士になり、アイミはティアナと同調して目を赤く光らせ体の節々から炎を上げて走り去る。
その後をあたしたちも駆けて行き、乱戦になっているところまで来る。
既にショーゴさんとアイミが黒ずくめたちを一体ずつ倒し終わっていた。
「ぞ、増援だ!!助かった!!おい、倒れたエルフたちを今のうちに連れて下がれ!!!」
冒険者らしきおっちゃんが指示をしている。
見れば数名のエルフの戦士が肌の色を黒っぽくして倒れている!?
「主よ下がれ!!」
エルフに気を取られていたあたしたちに襲い掛かる黒ずくめをショーゴさんの正拳が一撃でなぎ倒す。
「あ、ありがとう、ショーゴさん!」
「数が多い、ロクドナル殿、主たちを頼む!!」
そう言ってショーゴさんとアイミは黒ずくめたちの中に飛び込んでいく!
「承知!むんっ!!」
居合切りでロクドナルさんも襲い来る黒ずくめを一刀両断に切り伏せる。
「支援します!」
そう言ってアンナさんも【火球】ファイアーボールを襲い来る黒ずくめたちに投げつける!
『みんな頑張るじゃない?エルハイミ、あたしに魔力を!広範囲電撃魔法で連中を倒すわよ!!』
「わかりましたわ!」
シコちゃんに言われてあたしは魔力をシコちゃんに注ぎ込む!!
『ロクドナルの向こうにいる連中に当てるわ!あたしをあいつらに向けてロクドナルを引かせて!!』
「ロクドナルさん、引いてくださいですわ!!」
あたしの声にロクドナルさんは跳び避ける。
そこへあたしとシコちゃんの雷撃魔法が猛威を振るう!!
『【雷龍逆鱗】!!!』
シコちゃんが魔力を放つと空に大きな魔法陣が出来そこから豪雨のような沢山の稲妻が落ちる!!
カッ!!
どががぁあああぁぁぁんんっ!!!
一瞬にしてその場にいた二十人くらいの黒ずくめを倒す!
黒づくめ連中は体からバチバチと放電をしながら焦げている。
うあぁーーー、なんつー魔法よ!?
「エ、エルハイミちゃん、それは電撃系の最高奥義、【雷龍逆鱗】じゃないですか!?」
「シコちゃんのサポートですわ!シコちゃん、次の魔力を注ぎますわよ!!」
『いいよ~!じゃんじゃん濃いの注いで!また同じのでいくぅ~っからっ!!』
少し言い方が気になったけどあたしは再度シコちゃんに魔力を注入しようとした。
その時、どこからともなく聞いたことのあるような高笑が聞こえてきた!?
「おーっほっほっほっほっほっ!!どこのどなたか存じませんがよくも私たちの邪魔をしてくれますわね!?って、あなたたち、確かノルウェンにいた貧乳娘たち!?」
「どぅぁれが貧乳ぅよぉおおぉぉぉっ!!?」
あ、間髪入れずティアナが反応した?
激おこである!
声のした方を見ると、巨乳美人のボンテージ女幹部が屋根の上で高笑いしていた。
相変わらず破廉恥な格好だな!
彼女は鞭と何か壺の様な物をもって外套のマントをなびかせている。
んっ、この人確かジェリーンとか言ったな?
「ふっ!裏切り者も一緒の様ですわね、これは好都合!前のお返しも一緒にしてあげますわ!!お前たちやっておしまい!!」
女幹部ジェリーンの声に反応して黒ずくめたちがあたしたちに群がってくる。
そして壁を破壊したり何処からから飛んできたりしたキメラ怪人が七体もいる!!?
「くっ、主よ!!」
「これ以上は来させん!!」
「アイミ!」
あたしとティアナ、そしてアンナさんをかばうようにショーゴさんとロクドナルさん、アイミが次々と黒ずくめをなぎ倒していく。
「何をやっているのですの!?魔怪人たち一斉にやっておしまい!!」
ジェリーンがそう言った瞬間一本の矢が彼女を襲う!
ひゅんっ!!
ばちっ!!
しかしその矢はジェリーンに当たる寸前見えない壁にぶつかってはじけてしまった!!
「ちっ!防御魔法か!?」
「あら、ずいぶんと無粋なことをしてくれますわね、そこのエルフ!今私は忙しいのですわよ!!」
そう言ってあの小さな壺をソルガさんに向ける。
「大人しくそこで寝てるがいいですわ!!」
そう言った途端、壺に巻き付かれていたネックレスのようなものが光り黒いモヤのようなものが飛び出しソルガさんにぶつかる。
「くっ!なんだ、何も起こら・・・ ぐあっ!」
ほんの少しの間をおいてソルガさんは倒れた。
「ソルガさん!!?」
見ると彼の顔が徐々に黒ずんでくる!?
これってあの呪い!?
「ふふっ、流石にエルフには効果てきめんですわね!いかがかしら、同族の亡骸を使った呪いのお味は?あなたたちの『命の木』をしっかりと枯らせてあげますわ!!おーっほっほっほっほっ!!」
そんな、あれが呪いの元凶!?
まさかあれのせいで師匠たちも!?
「殿下、エルハイミちゃんあの壺が原因のようです!禍々しいマナがあの壺から別世界に流れ込んでいるようです!!」
アンナさんは目を金色に薄く輝かせている。
心眼を開いて普通の人には見えないモノを見ているのだ。
「だったらあのおっぱいお化けを倒せばいいのね!アイミ!!」
ティアナのその言葉を皮切りにショーゴさんやロクドナルさんも動き出す!
『先手必勝!【雷龍逆鱗】!!』
シコちゃんがキメラ怪人の一番多いところに先程の雷撃魔法をくらわす!
カッ!!
どががぁあああぁぁぁんんっ!!!
空の魔法陣から再び豪雨のような稲妻が四体の怪人たちに降り注ぐ!
しかし怪人たちは体の表面に放電を残しながら焦げていても倒れない!?
「おーっほっほっほっほっ!残念ながら以前のようにはいきません事よ!この魔晶石核搭載型魔怪人たちは今までの怪人とは比べ物にならないほど強いのですわ!!さあ、お前たちとっととやっておしまい!!」
「ま”っ!」
ジェリーンの言葉に魔怪人たちが動き出す。
「やらせん!とうっ!!」
ショーゴさんは大きく飛び上がり全体重を乗せた強力な蹴りを近くにいた魔怪人にくらわす!
その威力を増すために足の中に仕込まれた魔晶石が活性化して双備型魔晶石核から供給される魔力を燃やし足の先を輝かせ魔怪人を貫く!
どごっ!!!
貫かれた魔怪人はたまらず数歩よろめき魔力暴走で倒れて爆発する!
ちゅどぉおおおおおんんっ!!
「ぬんっ!!」
居合切りの要領でさやから抜かれたロクドナルさんの刃は魔怪人をきれいに一刀両断にする!
ざしゅっ!
ぴきっ!
ずるっ!
・・・ぼとっ!!
「三十六式が一つバトルアックス!!」
飛び込みながらアイミはくるりと前転してその荷重を一気に踵に乗せ、魔怪人の脳天に叩き込む!
叩き込まれた踵が当たる瞬間アイミの踵から灼熱の炎が上がりその破壊力を増す!
踵を叩き込まれた魔怪人はその頭を胴体に半分以上めり込ませてロクドナルさんが切り伏せた魔怪人の上に倒れ魔力暴走を起こし二体共爆発する!
ぼこっ!
よろよろ、ばたっ!
ぴっ!
ちゅうどぉぉおおおおおおんんっ!!
「な、何なんですの!!?裏切り者ショーゴ・ゴンザレスと同様に魔晶石核を搭載した新型魔怪人たちがこんなにあっさりやられるなんて!!?あなたたち一体何者なのですの!!?」
一度に三体もの魔怪人を倒されジェーリンはうろたえているようだ。
「ふん、変態おっぱい!あなたの引き連れている魔怪人なんか私たちにしてみれば既に旧型!ガレントの技術を甘く見ないでよね!!」
「ちっ!まあいいですわ!もともとの目的だったこの壺が手に入りさえすればいずれエルフ共は死滅する!お前たち引きますわよ!!」
そう言って逃げようとするジェリーンだったが屋根の上から動く瞬間その手に飛び縄が絡まる!!
「逃がさないよ!!」
そう言って屋根の上に飛び乗ったのはミーヤ=エバン!?
しなやかな獣のような動きに鋭い眼光、そうかつてボヘーミャに留学していたユグリアチームの一人だ!
「姉さんの仇!!」
ひゅんっ!
放たれた矢はエルフのルルさんのモノ!
しかし防御魔法はまだ効いていたようでその矢はジェリーンには届かない!
が、バランスを崩したジェリーンは持っていた壺を落としてしまう!
「ガレントの!その壺を頼む!!」
ミーヤさんに言われあたしたちは慌てて屋根を転がりこちらに落ちるその壺を受け取ろうとする。
「ま”っ!!」
しかしそこに魔怪人が邪魔をする!
「【拘束】バインド!!」
アンナさんが光の鎖を魔怪人に投げつけその動きを止める!
しかしもう一体が転がり落ちる壺を奪いさらおうとする!!
「させぬ!!」
ロクドナルさんの刃が光り、魔怪人を切り裂く!
あたしは念動魔法を使ってその壺を手元まで引き寄せる!
と、そちらに注意しすぎた!?
あたしのすぐ横まで魔怪人が来ていたのに注意が遅れた!?
鋭い爪があたしを襲う!!
しまったっ!!
あたしは思わず目をつぶる!
しかしいつまで待っても何の衝撃も届かない?
恐る恐る目を開くとショーゴさんが間に入って義手でその爪を阻んでいた!
「無事か主よ!?」
「わ、私は大丈夫ですわ!」
ショーゴさんはそれを聞いてから一気に魔怪人を押しのけ正拳の連打で魔怪人を殴り飛ばす!
「主よ力を!」
「はいっ!【爆炎拳】起動!!」
あたしは魔力を込めたコマンドを飛ばす!
ショーゴさんの左の義手が輝き、その力を開放する。
左の拳の爪が伸び、下腕の排気ダクトが開きブーストされた圧縮魔力が炎となって吹き出す。
「うぉぉぉおおおおっ!!【爆炎拳】!!」
ドガッ!
びきっ!
ばぁああぁぁんっ!!!
当たったその手のひらを中心に魔怪人が溶けて飛散する!
ぶしゅうぅぅぅぅ・・・・
ショーゴさんの腕から冷却の排気が出る。
「くっ!お、覚えてなさい、この借りはいつかきっと返してやりますわ!!」
そう言っていつの間にかミーヤさんの束縛から逃れたジェリーンは逃げ去っていく。
取り巻きの黒ずくめもいつの間にかいなくなって、残った魔怪人もいつの間にか消えていた。
「エルハイミ!大丈夫!!?」
ティアナが駆け寄ってくる。
あたしは笑って大丈夫と気丈に見せるが足が震えているのはバレバレだろう。
「良かったぁ。」
そう言ってティアナはあたしに抱き着く。
ううっ、怖かったぁ~。
ちょっと涙目のあたし。
しかししっかりとあの壺は手にしている。
「ティ、ティアナ、それよりこの壺ですわ。」
「エルハイミちゃん!大丈夫ですね?よかった。壺は?」
アンナさんもこちらに来た。
あたしはアンナさんやティアナに壺を見せる。
「そいつのおかげでファルがやられた。ほかのエルフたちもそいつでかなりの人数がやられた、一体何なんだいそれは?」
ミーヤさんが近づきながら話しかけてくる。
「ね、姉さんは助かるの?」
ルルさんもこちらへやってきた。
「わかりません、これが一体何なのか。しかし師匠、学園長なら何か知っているかもしれません。こちらもソルガさんをやられました。ルルさん、エルフの村に私たちを連れて行ってもらえないでしょうか?あちらも長老含め大変なことになっています。」
「ええっ!?長老たちが!?わかった、ミーヤ、姉さんたちをお願い。」
そう言ってルルさんはあたしたちについて来るよう言う。
「殿下、こちらの守りが心配です。自分はこちらに残り万が一に備えます。」
ロクドナルさんはティアナにそう告げる。
「わかった、ルルさんお願い!」
あたしたちはルルさんを先頭にエルフの村に戻っていくのであった。
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