第133話6-5長老たち
6-5長老たち
マーヤさんとの事が有った師匠は少し寂しそうであった。
あたしたちは先ほど長老たちと面会していた黄金の木の下に来ていた。
長老たちが準備してくれた宴に参加するためだ。
「エルハイミどこ行ってたのよ?いつの間にかいなくなっちゃうし。」
ティアナが膨れている。
「そう言えば、ショーゴもいなかったな?何処へ行っていたのだ?」
ソルガさんの何気ないその一言にティアナとアンナさんが反応する。
「まさかショーゴと何かあったんじゃないでしょうね、エルハイミ!?」
「そうです!エルハイミちゃん、ショーゴさんだけは不毛です!!!」
「何もないですわっ!!!師匠とちょっと野暮用が有ったのですわ!!」
ティアナはそれでも う”~っとか唸っている。
アンナさんは「まさかまた師匠と!?」なんて言っている。
もう、この人たちときたら・・・
「おお、準備が出来ておるな?では早速始めようかの!」
最古のエルフであるメル長老はそう言って来た人たちに席に座るよう勧める。
なんというか、お膳の様なものに野菜や果物を中心にいろいろなものが乗っている。
ちゃんとエルフ豆の塩ゆでっぽい物もある。
「英雄ユカ・コバヤシが持ってきた酒もあるじゃろう?まずはそれをいただこうではないか!」
メル長老は宴会にノリノリである。
勿論他の最古の長老たちも同じだ。
なんとなく気を使っているのは次代の長老たち。
給仕のエルフや有力者のエルフだろうか、あたしたちに酒の席ながら次代の長老たちは次々に紹介されていく。
「おおっ!!なんじゃこの酒は!?うまい、うまいぞ!!ユカ・コバヤシよこれは一体何の酒じゃ!?」
メル長老が大はしゃぎで一升瓶抱えて自分で手酌を始めた。
美少女の巨乳エルフが一升瓶抱えて酒盛りしているというシュールな絵がそこに出来上がっていた。
うーん、周りにいるお姉さんエルフなら似合うんだろうけどなぁ。
「メル長老、それは米と言う穀物から作った濁り酒です。本来はこれを更に濾して透明な清酒と呼ばれる酒にするのですが、生で一番おいしいのはこの濁り酒でしょう。あと数日すると更に発酵が進み味が変わってしまいます。」
師匠もどぶろくを飲みながら答えるけど、あたしは師匠が一口一口飲むごとに心配が増える。
「あ、あのお酒ね!?あたしにもちょうだい!」
ティアナも乗り出してきた。
うう、大丈夫かな?
「そんなにおいしいのですか?私も少しいただけますか?」
そう言ってアンナさんも器にどぶろくを注いでもらう。
こうなるとここにいる人たちみんな飲みたがるので給仕のエルフが残り七本の一升瓶をもって酒をふるまい始める。
そしてそこかしこでやれうまいだのやれこんな酒は初めてだの称賛の声が上がる。
あたしも器に注がれるけど前回の事が有るのでちょっとトラウマが・・・
しかしそんなあたしを無視して酒盛りは進んでいく。
「この酒はよいですね、非常に飲みやすい。」
いつの間にか来ていたファイナス市長もくいくい飲んでいる。
ああ、そんなに飲んだらやばいって!
「うむ、誰か音楽じゃ!それと舞をせよ!!今日は久しぶりに愉快じゃ!!」
あうっ!
メル長老が真っ赤になっている。
よほど気に入ったのか自分で飲む一升瓶は離さない。
『あー、あの子まだあの酒癖治ってないみたいね?あんなんだから勢いでガーベルに食べられちゃうのよ。』
シコちゃんがなんか怖いこと言っている・・・
ご先祖様、あなたって人わぁ~!!
そして宴はエルフ独特の弦楽器をはじめ不思議な太鼓や笛を使った聞いたことのないような音楽が奏で初め、光の精霊や羽衣のような衣装をまとったエルフの女性の舞がみんなを楽しませる。
すでに暗くなったここで光の精霊をまとった非常に幻想的な舞はエルフの美しさも相まって見る者を虜にする。
「きれいね。」
隣にいたティアナはぽつりとそう言う。
あたしも今は黙ってティアナとその舞を見ている。
そして先ほどのマーヤさんを思い出す。
前にソルガさんに聞いていた呪いの話に出てきたエルフの女性。
その悲惨な想いは時間だけでは癒せないだろう。
でもあたしにティアナがいるように今の彼女にもよりそうあの少女がいるようだ。
あたしは何となくティアナにぽてっと体を預ける。
「うん?どうしたのエルハイミ?」
「いえ、一人になるのは寂しいのだなって思ったのですわ。」
ティアナは不思議そうな顔をしてあたしを見る。
そしてにっこりと笑ってこう言った。
「大丈夫!エルハイミは私の嫁になる!ずっと一緒だよ!!」
ははっ、思わず小さく笑ってしまった。
あたしがティアナをお嫁さんにするんだ!
そう反論しよとした時だった。
ばたっ!
師匠がいきなり倒れる。
あ~、もしかしてまた飲み過ぎかな?
仕方ない、アンナさんに魔法を使ってもらって・・・
しかしあたしは師匠の顔色を見て慌てた!!
肌の色が黒っぽくなっている!?
どういうことだ!?
「ティアナ!アンナさん!!すぐ来てください!!」
あたしが慌てていると別の所でも騒ぎが起こっている!?
「英雄ユカ・コバヤシ!!マーヤを、マーヤを助けて!!」
見るとあのエルフの少女だ!!
「いったい何が起こって・・・ うっ、こ、この感覚は!!?」
ファイナス市長も何か感じているようだ!!
「こ、この感じ、あの呪いとそっくりだぞ!!」
ソルガさんが自分の胸を押さえながら言う!?
「皆の者!落ち着け!!英雄ユカ・コバヤシはどうじゃ!?それとシェル!マーヤがどうしたのじゃ!?」
涙目のエルフの少女はメル長老に向かって説明をする。
「マ、マーヤがいきなり苦しみ始めて倒れたんです!そしてみるみる肌の色が黒っぽくなってきて、あたしどうしていいのかわからなくて!英雄ユカ・コバヤシなら治せるんじゃないかって・・・」
しかしその英雄は今、マーヤさんと同じような状態で倒れている。
あたしたちは師匠を介抱しながら意識の有無を確認する。
「師匠、師匠!私の声が聞こえまして!?」
「うう、エルハイミですか・・・まずいです、これはあの呪いです。マーヤが、マーヤの命が削られていきます・・・」
呪いだって!?
アンナさんはそれを聞いてすぐに心眼を開き師匠を見る。
「駄目です、多分師匠ではなくそのマーヤさんと言う方が原因です。『時の指輪』を通して呪いが伝わってくるようです!。」
どういうことだ!?
と、ここで一人のエルフの男性が慌てて駆け込んできた。
「大変です!精霊都市ユグリアが襲撃されました!!墓地を中心に敵軍らしきものが暴れています!!」
その言葉にここにいる全員が驚きの声を上げる。
「一体何者じゃ!?精霊都市ユグリアを襲うのは我がエルフと敵対するも同然!皆の者出合え!! ・・・・うっ!?な、何じゃこれは!!??」
大声を張り上げたメル長老だったがいきなり胸を押さえてうずくまる。
見ると彼女の肌も黒ずんでいる!?
「ぐあっ!」
「あうっ!!」
またまた数人の人たちが倒れ始めた。
「まずいです、これは以前の呪いよりずっと強い!早く何とかしなければなりません!!」
ファイナス市長が倒れたメル長老を介抱する。
「俺も応戦に出る!襲ってきた奴はどんな奴だ!?」
ソルガさんは連絡に駆け付けたエルフの男性に聞く。
「全身黒ずくめの連中に見たことのないような怪人が混ざってます!」
「!!?」
あたしたちはそれを聞きすぐにソルガさんの下へ行く。
「ソルガさん、あたしたちも行きます!」
「多分そいつらが師匠やマーヤさん、メル長老たち呪いをかけている張本人ですわ!」
「わかった、ついてこい!!」
走り出したソルガさんにあたしたちもついて走り出したのだった。
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