第79話4-16双備型魔晶石核
4-16双備型魔晶石核
開発チームの部屋に来たあたしはさっそくアンナさんを含め主要スタッフに話を始める。
部屋にはゾックナス教頭、マース教授、ジャストミン教授たちもいた。
現在学園の協力を受けながらマシンドールの心臓部である魔晶石核の延命を研究中であるのだけど、はっきり言ってこの半年ほとんど成果を得ていない。
「皆さん、ごきげんようですわ。早速ですが皆さんにお話を聞いてもらいたいのですわ。」
あたしはそう言って部屋に掲げてある黒板に思い付いた内容を書き始めた。
「どうしたのですかな、エルハイミ。ずいぶんと慌てて。」
ゾックナス教頭は分厚い魔導書から顔を上げ、あたしが書き込む黒板に目を通す。
「複数下級精霊の同時融合化?」
カッカッ
黒板に書き終えてからあたしはゾックナス教頭に向かいなおして話を始める。
「そうですわ。今までは魔晶石に下級精霊を一体だけ融合して魔力循環機関の原動力にしていましたわ。でも、それは呼び出した下級精霊一体だけの力、同時に複数が融合出来たらどうなるか気になりません事?」
「ふむ、して複数融合させる理由は何なんだね、エルハイミ君?」
マース教授は魔晶石の素材を見ていたが、こちらに向かい直り質問してくる。
「はい、教授。ソルミナ教授の話ですと同じ下級精霊にも若干の個性があるそうですわ。ですので同じ機関に融合させた場合魔力欲しさに競合相手と競った行動を示すのではないかと推測しますの。そしてその競争意識は強ければ強いほどこちらの世界に残留するのではと思いましたの。」
「つまり、精霊自身のこちらの世界への残留意思を強化すると言う事ですかな?」
ジャストミン教授は要約してこちらに視線を向ける。
あたしは肯定のために頭を上下に振る。
今までの研究で二年から三年で魔晶石核が寿命になる最大の理由は下級精霊の現世での滞在ができなくなり、霧散してしまうからだった。
あたしがそれに気づいたのは魔晶石核に個体差があって、要はやる気のある子とやる気のない子と別れたからだ。
今のあたしにはよく見えるけど、実際魔晶石核にあるマナは徐々に減ってきている。
それはマナと混同しやすい精霊の現世の滞在時間として見れる。
マナは外部から吸収する機関を取り付けているので今は補填できる。
後はあの子たちにやる気を持たせれば、もっとこっちの世界に居たいと思わせればもしかしたらもっと魔晶石核の寿命が長くなるのじゃないかと思ったわけだ。
「うーん、要するに餌付けってこと?」
ああ、ティアナ、それを言ちゃあぁおしめぇよ!!
せっかくそれっぽく理論立てて説明していたのにぃ!!
「しかし試してみる価値はありそうですね。」
アンナさんは何やら黒板に公式のようなものを書き込み、下級精霊の現世での霧散時間を算出している。
・・・アンナさん、いつの間にそんな方程式作ったのよ?
「ふむ、して、複数の下級精霊をどうやって呼び出すのだね?」
マース教授は魔晶石を置いて指でたたく。
あたしはアイミを手で招き魔晶石を指さしながら聞いてみる。
「アイミ、一度に二体のサラマンダーを呼び出す事は出来ますかしら?」
ぴこっ!
どうやら二体なら可能と言っているようだ。
アイミは早速両手を魔晶石に向ける。
すると両方の手に一匹づつサラマンダーが召喚される。
あたしは早速【融合】魔法を発動させ、この魔晶石に二匹のサラマンダーを融合させる。
赤い光がいつもより濃く渦巻くかのように魔晶石に吸い込まれ、白く輝きながら楕円の形にまとまっていく。
それは徐々に白から赤へとその色を変えていきながら輝きを押さえていく。
最後に出来上がった魔晶石核は 左右に赤いとぐろの模様をつけたものになった。
「出来ましたわ!!」
「やった!エルハイミできたじゃない!」
「これは見事な【融合】魔法ですな。」
ゾックナス教頭もメガネのずれを直しながら見る。
マース教授やジャストミン教授も出来上がった魔晶石核を興味深く見る。
「それではさっそく実装してみましょ!」
ティアナがあの疑似永久機関のうちわ付送風義手っを引っ張り出してくる。
まだあったんだ、あのガラクタ。
いきなりマシンドールに搭載するのも危ないからそれの方が良いかな?
あたしは早速この疑似永久機関の義手に魔晶石核を装着してみる。
そして始動すると・・・
パタパタ
バタバタ
ばたばた
ばったんばったんっ!!
あ、このパターンって!
ぴかーっ!!
「のっっきゃぁぁぁあああぁぁぁぁ!!!」
どっかーんっ!!
◇
「失敗は成功の母と言いますわ!!」
黒板に力説するあたし。
みんなの目が白いのはきっと気のせいだ。
ちゃんと治癒魔法で直したからいいじゃないの!!
「まさか魔晶石核内で融合したサラマンダー同士が追い出しの喧嘩するとは思いませんでした。」
あの後アンナさんの解析で分かったことは居心地がよくなった魔晶石核内から自分以外のサラマンダーを追い出そうとして暴走したようだと言う事。
同一種の下級精霊を一所に集める実験はやめた方が良いとソルミナ教授には伝えておいた。
餌付け作戦失敗。
うーん、わんこみたいに共存下で競争してくれると思ったのだけど、そうそううまくはいかないみたい。
「発想自体は悪くなかったというのは認めよう。しかし、暴走するようでは意味がない。」
マース教授の手厳しい指摘が入る。
「確かにその通りだが、サラマンダー同士がいがみ合うというのは発見だったと思いますな。」
ジャストミン教授は一応良い点も探してくれる。
「ふむ、そうしますと下級精霊にも感情に近いものがあると言う事ですな。そうしますと初期理論の競争をさせて残留意思を強めると言うのもあながち外れではないのかもしれない。問題はどうやってその環境を作るかですな。」
ゾックナス教頭は割れたメガネを魔法で修復しながら今までのまとめをする。
うーんと全員で考え込む。
「ねえ、エルハイミ。要はサラマンダーたちに競争させればいいのよね?」
「ええ、ティアナ、そうなんですがその方法がなかなか。」
「鈴虫の共鳴勝負みたいに別々の篭で出来ないものかなぁ?」
「!!」
魔晶石核どうしの共鳴をさせて動かす!
それだ!!
「殿下それです!共鳴作用を促す魔晶石核の改造を行えば、二並列の新型魔晶石核が作れます!」
「早速試作の生産開始ですわ!!」
あたしたちは双備型魔晶石核の設計を始めるのでであった。
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