第47話3-22大魔導士杯決勝戦その三

3-22大魔導士杯決勝戦その三



 ビエムの声でそのゴーレムは異様な雰囲気をまとい形状も刺々しさを増した。


 

 なんじゃあれ?

 まさか第二、第三形態あるとか言わんだろうな!?


 

 「あれって武器?規定違反なんじゃない??」


 ティアナが声を張り上げる。

 しかし司会の生徒会長は冷静に回答をする。


 「はい、形状確認上武器の保有とは認められません!形状の若干の変化は許容範囲とします!」


 規定違反ではない判定が下る。

 見た目はごつくなって雰囲気も変わったのは演出としては良いのだろうが、問題はその性能の方だ。

 果たして何が変わったのであろうか?



 「行くぞ、ガレント!やれっ!ゴーレム試作一号!!」


 ブンっ!とホリゾンのゴーレムの両眼が光る!

 

 「ま”っ!」


 なんと相手のゴーレムはビエムの声に反応して返事した!?

 そしてホリゾンのゴーレムは驚く速さでティアナの操るゴーレムに連続攻撃を仕掛けてきた!


 連続のパンチから膝、蹴りとこちらに反撃する暇を与えない!


 流石にティアナもさばききれず何発かもらってしまう。

 しかも見た感じさっきより一発一発が重くなっているようだ!?



 「くっ、さばくので手いっぱい!距離取らなきゃ!!」


 猛攻に反撃のチャンスが作れないティアナは一旦離れようとするがホリゾンのゴーレムはそれを許さない。

 そして上段蹴りにガードが追い付かず蹴りが決まってしまった!



 ガシャンっ!



 大きな音を立てティアナのゴーレムは蹴り飛ばされた。 

 受け身を取り切れず二転、三転してやっと止まる。


 「くあぁつ!よくもやってくれたわねっ!!」


 何とかゴーレムを立ち上がらせるティアナだったが、その外装がボコボコに歪んでいる。

 先ほどの攻撃でかなりのダメージを受けてしまった。



 「殿下、こちらもリミッターを外します!エルハイミちゃん、もう一度防御の魔法をお願い!」


 そう言ってアンナさんは短縮詠唱で素体のすべての力を解放する。


 「行きます。【限界解放】!」


 ティアナの操るゴーレムが一瞬震え、外装の隙間から一瞬淡い光を放つ!

 次いで俺のプロテクション魔法【絶対防壁】を両手両足、そして頭部、胸部、腹部と展開する。


 「殿下、これで五分はフルスペックで戦えます!」


 「わかった!行くわよ!」


 「殿下三十六式が一つ、ランスからバトルアックス!!」


 ロクドナルさんがティアナに指示を出す。

 ティアナはそれを受けリミッター解除したゴーレムを走らせる!


 ゴーレムは今までとは比べ物にならない素早さで、それはまさしく稲妻がごとき動き!

 両腕を腰に溜め、飛び込むような勢いで相手に肉薄し、大きな踏み込みと同時に全体重を乗せた両手の突きを放つ!


 まさしくランスのごとき速度と重量を載せた両手突きは相手のガードを弾き重い拳をのめり込ませる!?

 が、ガードは弾かれたものの決め手の拳は届かない!

 

 ホリゾンのゴーレムは強引に弾かれた腕を引き戻しその手刀をティアナのゴーレムの頭に叩きこもうとするが、ここでティアナはゴーレムを前転させその勢いのままかかと落としを仕掛ける!


 まさしくバトルアックスを振りぬくかのようなかかと落としはホリゾンのゴーレムの左肩に叩き込まれその装甲をかち割る!


 よろめいたホリゾンのゴーレムは肩口からどす黒い液体をこぼしながら距離を取る。



 なんだあの液体は?



 

 「何をやっているゴーレム試作一号!とっとと奴をぶち壊さんか!!」


 ビエムの声に「ま”っ!」と答えてホリゾンのゴーレムのラッシュ攻撃が再開される。

 しかし、先程のかかと落としが利いているのか左腕が上手く上がらない。

 


 なんかゴーレムのくせにやけに人間っぽいな?

 内部の人間がダメージを喰らったかのように腕自体が上がらなくなってきている?



 と、ここでホリゾンチームからリカバリー【修復魔法】の呪文が飛んでくる。

 外装の修復かと思ったら、どうも違う!?


 リカバリーの呪文を受けたホリゾンのゴーレムは例のどす黒い液体を体内に戻し、その修復された部分をのぞかせる。


 !?


 なんだあの人間みたいな肌!?

 しかも白っぽいうす紫な気持ちの悪い色!? 


 「アンナさん、あれって人間の肌でしょうか?」


 アンナさんにも外装が無くなった左肩を見てもらう。

 するとアンナさんは何かを思い出したかのように叫んだ!


 「殿下相手はフレッシュゴーレムです!!あの肌の色は人造人間です!!」


 「なんですって!?」


 両手が使えるようになったホリゾンのゴーレムは更に攻撃を激しくしてきている。

 それをリミッター解除したティアナのゴーレムが受けて立つ。

 攻防は均衡を保ち五分の勝負を続けている。


 「道理で動きが人間ぽく、あれだけの操作をしていながら魔力が尽きないわけです。人造人間は意思は無いものの自ら魔力を保有し、痛みも疲れも感じず人間の限界を超えた動きが出来る訳です。」


 アンナさんの説明が入る。

 うーむ、つまるところビエムたちは自分たちの魔力を送らず指示だけで操作していたって事か!


 「ならば三十六式が一つ、ウォーハンマー!」


 ロクドナルさんからティアナに指示が出る。

 ティアナはすぐに反応してゴーレムを一瞬しゃがませ全身のばねを使いながらホリゾンのゴーレムに左手の掌底を打ち込むと同時にその掌底に更に右手の掌底を重ねて打ち込む。



 ボッ!!



 鈍い音がしたと思ったら二重掌底を受けたホリゾンのゴーレムがよろめく。

 そして外観上は何もないのに外装の隙間から例の黒い液体を吹き出した。


 よろよろと数歩下がるが、辛うじて立っている感じだ。

 

 「チャンスですわティアナ!」


 「ええっ!これで決める!」


 そう言ってティアナはゴーレムにとどめを刺そうとするがその動きが著しく遅くなった。


 「しまった!殿下リミッター解除の時間切れです!!」


 途端にティアナが操るゴーレムの節々から煙が上る。

 そしてよろよろと数歩下がり膝をついてしまった。


 「くっ!どうしたの動いてよ!!」


 最大のチャンスのはずがこちらも体中から煙を立ち上らせ膝をついてしまう。


 


 「くそうっ!かまわん全員【融合魔法】詠唱だ!もたせろ!!」


 ビエムがわめいてホリゾンチーム全員が呪文と唱える。

 その呪文が完成してよろめくホリゾンのゴーレムに新たな力を与える!!


 それはホリゾンのゴーレムを一瞬震わせ隙間からあのどす黒い液体を一気に全身にまとわりつかせ、外観を一回り大きくする。

 そしてその表面を一部金属を残し生物的な表皮に変えていく。

 両眼は赤いぎょろりとした目玉をむき出しに、筋肉質な肉体の節々に元のゴーレムの金属をのぞかせ、鋭いかぎづめを持たせる。

 


 その姿を金属プレートメールを取り込んだ怪人へと変えたのであった! 

   

 

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