第46話3-21大魔導士杯決勝戦その二 

3-21大魔導士杯決勝戦その二 



 地下通路を抜けるとそこは闘技場だった。


 

 俺たちの登場に歓声が沸く。

 会場は満員御礼状態。

 貴賓席も満席で各国の大使や招待客でいっぱいだ。



 会場中央には四角い台状の舞台が準備されている。


 その舞台の反対側にホリゾンチームと彼らのゴーレムがいる。

 あ、あいつら真っ黒にゴーレム塗っている。



 こちらは銀色のままだってのに、こんなことならこっちも彩色しておけばよかったかな?



 舞台の端には各チームの人員が舞台全体を見れるように専用ブースが設けられ、舞台よりやや高めのブースは全員が上ってもまだまだ余裕があるほどの広さだ。



 「お集まりの紳士淑女の皆様、大変長らくお待たせいたしました。それではこれより本年度『魔術総合実演会:大魔導士杯』の決勝戦を行います!!」


 どっ!と割れんばかりの歓声が上がる。

 

 「それでは改めて、各チームの紹介です!まずは東側、ホリゾンチーム!!」


 うおぉぉぉぉぉおおおおっーーーーー!!


 「西側、ガレントチーム!!!」


 うおおおぉぉぉぉぅぅぅーーーーーー!!!


 「決勝戦は皆様ご存知のゴーレムによる対決!ゴーレム同士の殴り合いで、破壊され動けなくなるか、闘技場から落とされ場外になるかで勝敗が決まります!」



 おお、まさしく天下一武〇会じゃないか?

 おら、わくわくしてきたぞ!



 「武器、対戦チームへの直接攻撃、ゴーレムへの直接攻撃魔法は禁止ですが、ゴーレムを強化してのゴーレムへの攻撃、防御強化魔法は有効です。また、武器でなければゴーレムの外装の多少の変形は認められます。例えばゴーレムの指を強固な鍵爪にするなどは認められます!」


 ふむ、基本は肉弾戦でもそのくらいの変化は許可されるんだ。

 そう言えばビエムの奴が何か聞いてたもんな。


 「それでは各チーム、操作ブースに入ってください。また、ゴーレムは所定の舞台位置まで移動させてください。」


 生徒会長が指示してきたので、ティアナはゴーレムを舞台の上に移動させる。

 そして俺たちも操作ブースまで行く。


 操作ブースには一応手すりとかもあって、一番前の見えやすい所をティアナが、その後ろに指南役のロクドナルさん、左右に魔法援護の俺とアンナさんが固める。



 「それでは両チームとも準備はできたでしょうか?問題が無いようですね、それでは大魔導士杯決勝戦、はじめっ!!」



 生徒会長の開始の声で双方のゴーレムが動き出す。


 「速攻で決める!」


 ティアナが気合を入れてゴーレムを動かす。

 ティアナのゴーレムはスムーズな動きでホリゾンチームのゴーレムにジャブを入れる。


 が、あちらもただ殴られるわけは無く、両腕をうまく使いガードする。


 

 ん?

 相手のゴーレムの動きもかなりスムーズだ。



 ティアナはゴーレムを一旦引かせ、距離を取る。


 そこへアンナさんの防御力増加の魔法がかかる。

 次いでアンナさんは口早に関節強化、過重操作魔法を発動させる。

 これは内蔵している素体に埋め込まれた魔法石などにあらかじめ呪文を封じておき、短縮詠唱で発動させることができる。

 

 これで防御力が上がったうえに攻撃の一発一発が重くなる。


 ティアナは相手のゴーレム目掛けパンチの連続から肘打ちをすると言う中国拳法のような動きで相手をけん制する。

 しかし、相手のゴーレムはこれらの三段攻撃をことごとくかわし、今度はあちらが距離を取る。



 なんだ?

 やたらと動きが良いな?


 

「はっはっはっ!なかなかやるではないかガレント!しかし多少動ける程度では我がホリゾンには勝てんぞ!!」


 ビエムが高笑いする。


 

 びきっ!



 ティアナの額におこの血管が浮かび上がる。

 

 「なんですって!?防戦一方のくせして何言ってるのよ!」


 むっかぁ~っ!という擬音がティアナの頭の上に見えるのは俺だけだろうか?


 しかしそんなこと言っているうちにホリゾンのゴーレムに動きが出る。

 両手を胸の前に持ってきたと思ったらその手刀が黒く輝き始めた。


 そしてこちらのゴーレムに手刀を連続でたたき込む。


 ティアナはその手刀をいなし、さばき後退するが、ここで腕の装甲がその手刀にかすっただけで削られているのに気付く。


 下段から腹部目掛け牽制の蹴りを入れて一旦ティアナは下がる。


 よくよく見るとミスリル入りの合金の腕に防御力強化魔法が掛かっているにもかかわらず両腕は防御に使っただけで傷だらけになっている。

 

 やるなホリゾン!

 と、ここでアンナさんが次なる魔法を詠唱する。


 「殿下、こぶし、肘、膝、足に【重力魔法】を発動させます!一分間だけその部分は数倍の打撃力を出せます!」


 俺は同時にプロテクト、【絶対防壁】の魔法を両腕にかける。


 「ティアナ、両腕にプロテクション魔法をかけましたわ!行ってください!」


 「よしっ!行くわよ!」


 ティアナはゴーレムに踏み込ませながら低い拳を入れる。

 それをホリゾンのゴーレムはかわしながら左の手刀を頭目掛け叩きこんでくる。

 しかしティアナはそそれを見越し頭部を残った腕でガードする。


 ガキンッ!


 金属どうしが強くぶつかるような音がしてホリゾンのゴーレムの手刀が跳ね返される。

 と、そのスキを狙って踏み込んだ足を軸に逆の足を鋭く蹴り上げホリゾンのゴーレムの腹部に叩き込む!


 ゴッ!


 鈍い音がしてその蹴りは決まった!

 たまらずホリゾンのゴーレムは数メートル跳ね上げられて地面に叩き付けられる。


 が、叩き付けられる瞬間に両手を地面につき受け身をしながら転がり距離を取って立ち上がる。



 なんだと!?

 あれだけきれいに決まったのにあんなにすぐ立ち上がれるのか!?



 い、いや、腹部のアーマーがへこんでいる。

 

 と、ここまでで一つ気付いたのがあちらのゴーレムも重量がかなり増している。

 いや、かなりというよりこちらと同じくゴーレムの中に実際に人でも入っているかのような感じだ。


 「殿下、あれはすでにゴーレムの動きではありません、戦士と戦うつもりで技を出しましょう!三十六式が一つ、レイピア!」


 ロクドナルさんの声にティアナはゴーレムを走らせ、相手の目の前で大きく蹴りをする。

 その動きは完全に読まれ半歩下がってよけられるがティアナのゴーレムは蹴り上げた足を力強く大地に叩き付けその反動を体全体に伝達してくるりと回転させ背を向けると同時に逆の足に全体重を乗せてかかとより蹴り刺す。   

 

 慌ててよけるホリゾンのゴーレムだが、その鋭い蹴りは見事相手の肩にヒットする。


 貫くような衝撃が肩のアーマーを割り蹴り飛ばす!



 「ちっ!踏み込みが浅かったか!」


 そう言ってすぐにゴーレムの体勢を立て直し、身構えるティアナ。

 そして警戒して更に距離を取るホリゾンのゴーレム。


 「ふはぁっはっはっはっはっ!やるではないかガレントぉ!しかしまだまだぁ!本当の力を見せてやれ!強化ゴーレム試作一号!!」



 ビエムの笑い声でホリゾンのゴーレムが変化を始めた!!

 それは全身の色が更にどす黒い色に変わり、肩やひじ、膝、頭部や背中にとげとげしい突起を生やしたのであった!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る