第45話3-20大魔導士杯決勝戦その一
3-20大魔導士杯決勝戦その一
早朝、宿舎を出てうーんと大きく伸びをする。
アンナさん以外のみんなは控室へと向かう。
昨日はなんだかんだ言っていろいろと忙しくなった。
あの後ティアナはロクドナルさんの指導の下、無手での対人技などをいくつか覚てたようだ。
基本的には剣を扱う足さばきにリーチの短くなった分を補う動きをするのだが、ティアナには素質があるようで何度かロクドナルさんから教わっただけで覚えてしまったらしい。
やんちゃなお姫様なのは知っていたが、こう言ったことも得意のようだ。
んで、こっちは流石に体が小さすぎてあんまり役に立たなかったのでその後アンナさんの様子を見に行った。
アンナさんはどこから持ってきたのか、いろいろな魔法石やドラゴンの骨、其の他見たことの無い金属を使ってゴーレムを強化していく。
というより、もう一つゴーレムを作ったようなものだ。
どういったものかというと、操り人形のような女性型の素体を作り、各所に魔法石を埋め込み、特殊金属で関節を強化したものだった。
それ一晩で作ったんだよなぁ。
俺も夜は途中をいくつか手伝ったけど、その理論や効能、技術力は流石の一言だった。
アンナさんの作り上げた素体は今はゴーレムの中に入っている。
そして最後まで一人徹夜だったアンナさんは近くの寝袋にすやすやと眠っている。
その横でティアナがゴーレムを試運転するところだった。
ティアナはゴーレムに意識を集中する。
ティアナの意思に反応してゴーレムが動き出す。
おお?
上手く行ったか?
「うーん、動かした感じは前をあまり変わらないわね。気持ち重くなったような気はするけど問題は無いわね。」
そう言ってゴーレムを操るティアナ、いったいどこで覚えたんだその動き!?
ゴーレムは中国拳法の使い手のように動きまくっている。
「ロクドナルさん、いったいティアナに何教えたのですかしら?」
ロクドナルさんを見ると爽快そうに笑っている。
「いやはや、殿下がこうもあっさりガレント流無手三十六式体術を覚えてしまうとは思いませんでしたよ。」
ロクドナルさんはそう言って自分のお腹の辺りをさする。
「殿下はこう言った体術に非常に適しておられるようだ、まさか私に一本入れるとは驚きですな。」
「!?」
えっ?
あのロクドナルさんに一本入れたって??
剣の稽古の時は全くかなわなかったのに、無手の稽古で一本入れたって?
しかもこんなわずかな時間で??
「そんなに驚くことじゃないわよ、護身術で前から基本は習っていたもの。」
ゴーレムを動かしながらティアナはしれッと言う。
いやいや、それでもすごい事だと思うんですけど・・・・
「まあロクドナルに教わったガレント流無手三十六式体術、あれが無かったら一本も入れられなかったでしょけどね。」
そう言って軽くウィンクする。
ロクドナルさんにしては珍しく苦笑をしている。
「私もまだまだですな、もっと精進せねば。」
うーん、これっていい感じで行けるんじゃないかな?
「うん、いい感じ、大丈夫みたい。特に昨日と変わりなく行けそうね!」
ティアナは一通りゴーレムを動かし満足したようだ。
終わってからサージ君に飲み物をもらって一息している。
とりあえずサージ君が持ってきた朝食を食べながら本日の予定を話し合う。
「殿下、本日のゴーレム戦は基本はゴーレム同士の殴り合い。同一型のゴーレムどうしですから私めと練習したのとリーチなどが違いますゆえご注意を。」
サンドウィッチを食べながらロクドナルさんはティアナに注意点を話す。
「うん、わかってるわ。そうね、試合中はロクドナルが指示して。」
肉弾戦であればロクドナルさんの指示は必要だろう。
「そうしますと、援護魔術や強化魔術は私やアンナさんにお任せくださいな。」
果実のジュースを飲みながら俺は提案する。
今はまだ寝ているがアンナさんもきっと同意見だろう。
「そうね、お願いするわ。私はゴーレムの操作に集中するから。」
ティアナも同意見を持ってくれたようだ。
方針は決まった。
午後になり軽い昼食を済ませ控室で待機する。
テザさんが決勝戦開始の一時間前に来た。
「ガレントの皆さん、準備はよろしいでしょうか?よろしければゴーレムの確認をさせていただきます。」
そう言ってテザさんはゴーレムを目視確認する。
規定の最終装甲に収まっていればカスタムは問題無い。
武器の装備も無いのでこちらの問題も無い。
ほどなくテザさんは検認のしるしをゴーレムにつけて会場への移動を指示する。
長い地下通路を歩いていく、徐々に通路の先が明るくなる。
その先に決戦の場がある。
いよいよ決勝戦だ、ホリゾンよ待っていろよ!!
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