第48話3-23大魔導士杯決勝戦その四

3-23大魔導士杯決勝戦その四



 なんだありゃ!?



 ホリゾンのゴーレムが怪人の様な姿になった!?

 まさしくその姿は化け物。

 子供の頃テレビで見たヒーローものに出てきそうな怪人そのものだ。


 「あれも反則じゃないの!?」


 ティアナの声に今度はビエムが答える。


 「あれはゴーレムを取り込んだ身体強化の魔法だ!違反ではない!!」


 魔力をかなりつかったのであろう、肩で息をしながらも大声で答えてきた。

 それを受け取り、生徒会長も了の意思を表す。


 「身体強化の結果と言う事で、外観上大きな変化が見られますが有効とします!」



 ざわざわっ!

 おおっーーーーーー!!!



 あれだけ変化してもオーケーかよ!!



 観客も微妙な反応をしているが、オーケーが出てしまえばこちらとしてはどうしようもない。

 にやりと笑うビエムの顔がむかつくっ!!


 「ふふふ、ゴーレム試作一号よ、チャンスだ!今度こそ奴を血祭りにあげろ!!」



 「ま”っ!!!」



 鍵爪を構えホリゾンのゴーレムが一歩、また一歩と迫ってくる!



 「動いて!動いてよ!!なんで動かないのよ!!」


 何度もティアナはゴーレムにコマンドの魔力を送るが、膝をついて未だ関節からうっすらと煙を上げているティアナのゴーレムは沈黙をしたままだ。


 「すみません、殿下。素体が限界を超えてしまい各関節が焼き付いてしまいました。これでは外装と同調している為動きようがありません。」


 唇をかみしめるアンナさん。

 動け動けと叫びながら何度も魔力発信しているティアナ。



 くそう、ほんとにもう手が無いのかよっ!!??

 


 ガキンッ!!


 ホリゾンの怪人がティアナのゴーレムを殴り倒した!

 次いで蹴り上げ数メートル転がす。


 「動いてよ!!」


 ティアナは悔しさのあまりその唇をかみしめ流血している。

 よほど悔しいのか、目の端には光るしずくが流れ始めた。



 「ティアナ・・・」



 俺には彼女の名を呼ぶしかない。

 ちくしょう!

 女の子が泣いてるんだぞ!?

 あんなに悔しがって!

 俺には何もできないのか!?

 なんて役立たずなんだ、俺は!?


 ホリゾンの野郎、ティアナを泣かせやがって!

 大体にしてあんな融合魔法何てインチキじゃねーか!!


 融合魔法・・・


 ん?


 待てよ?



 「アンナさん!素体の核には確か魔力同調性の高い竜骨と魔法石が使われてますわよね!?」


 「ええ、そのとおりだけど、どうしたのエルハイミちゃん?」


 「アンナさん、これからティアナが召喚する精神体とその魔力を竜骨と魔法石、ミスリル合金に融合できますかしら!?」


 

 ゲシゲシっ!!!


 ホリゾンの怪人がティアナのゴーレムを足蹴にして何度も踏みつけている。

 ティアナのゴーレムは徐々にその外装をゆがめてしまっている、やばい時間が無い!



 「アンナさん、これからティアナが召喚する精霊王をゴーレムと素体核に融合してください!ティアナ!!」


 

 そう言ってティアナの背に両の手のひらをつける。


 「ティアナ!ありったけの魔力をあなたに注ぎ込みます!イフリートの召喚をゴーレムの素体にしてください!同時にアンナさん融合魔法を!!」


 「エルハイミ?」


 半べそかいているティアナにとびきりのウィンクをして俺は思ったことを伝える。


 「あきらめたくはないでしょう?まだ間に合う、ティアナの背は私が守ります!!さあ、早くっ!」


 見るとホリゾンの怪人はティアナのゴーレムを片手で持ち上げ、とどめの手刀をその胸に叩き込もうとしているところだった!!


 「わかった!エルハイミ、アンナ!!」


 「「はいっ!!」」



 俺は一気に俺の魔力をティアナに流し込む!



 同時にアンナさんも難しい融合の魔法をすらすらと詠唱してその力を具現化するために集中する。

 持っている魔術師の杖はアンナさんの集中に応じて徐々にその先端に埋め込まれた宝石を輝かせ始める!


 ティアナも俺の魔力を受け取ると同時に炎の王、イフリートを召喚する。


 と、同時にアンナさんの魔法が完成する!



 「【融合魔法】!!」


 

 まさにホリゾンの怪人の手刀がティアナのゴーレムの胸に吸い込まれる瞬間であった!

 ティアナのゴーレムは途端にまばゆい光を発し、その体から紅蓮の炎を立ち上らせるのであった!!


   

 いきなりの炎に驚いた怪人はその手を放し数歩引き下がる。



 ティアナのゴーレムはその炎を全身にまとい、光り輝く!

 そしてその光が落ち着くころ、体を一回り小さく、その姿を全身真っ赤に輝く金属質の女性の姿をした機械人形のような姿に変えた。


 スリムなボディーに女性のシルエットを引き立たせながら、最低限の部位を最小限の防具で固め、瞳の無いその目は真っ赤に輝いている。

 まるで前世であった漫画の中のアテネの少年戦士の様な姿だ。



 「なにこれ!?この感覚すごい!体から力がどんどん湧いてくる!!」



 ティアナはゴーレムの腕を軽く振らせる。

 するとボッっという音と共にその手刀には炎が立ち上る。


 

 それを見たホリゾンの怪人は「ま”っ!?」とか言いながら警戒をしてさらに数歩下がる。



 「よし、いけそう!行け!私のゴーレム!!」



 びかっと一瞬目を赤く光らせティアナのゴーレムは動き出すのであった!!  

 

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