第41話3-16大魔導士杯第三戦目その一

3-16大魔導士杯第三戦目その一



 昨日はものすごく疲れた、精神的に。



 大衆の前に醜態をさらしてしまったのはもちろん、ティアナの柔肌をさらしてしまったのは更なる失態であった。

 当の本人は何とも思っていなかったようだが、仮にも女の子の肌を大衆の面前にさらしてしまうとは!

 深々と反省をしながら俺も初めて見たティアナの裸体が頭から離れない。

 


 そんな馬鹿な、俺はロリコンじゃないはずなのに!!

 

 

 精神年齢中年おっさんの俺はボン、キュっ、バーン!が好きなはず。

 そう、アンナさんのような清楚華憐でいながらダイナマイトボディーに心動かされるチェリーおじさんなんだぞ。


 それがつるペタに・・・

 いや、わずかに膨らみかけてはいたが・・・、とにかくそんな幼女に気を取られるはずがない!


 昨晩から妙な葛藤に苦しんでいる。



 「おはよう、エルハイミ!」

 

 「ぴゃっ!」

 

 朝食をとるためにいつものテラスに先に来ていた俺は後ろからかけられたティアナの声に思わずびくついてしまった。


 「お、おはようございますですわ、ティ、ティアナ。」


 何故か声が裏返ってしまう。


 「エルハイミ、どうしたの?なんか声変だよ?熱でもあるの?」

 

 そう言ってティアナは俺のおでこに自分のおでこを押し当ててくる。

 朝から美しい美少女の顔が目の前に近づく。



 うあっ!ティアナ近いっ!!



 あまりの唐突さに心の準備ができていなかった俺は瞬間湯沸かし器のようにボンっと頭から湯気を立て赤面してしまった。

 はたから見ればほほえましい風景なのに今の俺にはそんな心の余裕はなかった。


 「お、おほん、ティ、ティアナまったくもって私は問題ありませんのが事よ、ご、ご心配召されるなでありますわ。」


 言葉遣いまでおかしくなってくる。


 「おはようございます、エルハイミちゃん。なんか変ですが本当に大丈夫ですか?」


 アンナさんも心配そうにしてくれる。


 「昨日は大変でありましたからな、もしやエルハイミ殿はお疲れか?」


 ロクドナルさんまで心配してくれる。


 「エルハイミさん、もしよければこれを。我が一族秘伝の体力回復薬です。」


 サージ君まで給仕の合間にそっと元気になるお薬を渡してきてくれる。


 

 なんかみんな、ごめん。



 大きく深呼吸をして気持ちを切り替える。


 「大丈夫ですわ!皆さん、今日の第三戦も必ず勝ちますわよ!」


 そう言って俺たちは朝食を取り始める。





 午後になり、再び第三戦の為に会場に赴く。

 会場のステージには二つのブースが設けられていて、各ブースの背面には大きなスクリーンが掲げられている。


 本日の第三戦目は魔術操作技術勝負。

 決められた素材を使って課題を作り上げるというもので、錬金術の勝負に近い。

 ただしその課題は芸術性も必要とされ、そのセンスも評価対象になるようだ。


 残ったチームはホリゾン、ボヘーミャ、ノルウェン、そして俺たちガレントチームだ。

 各対戦チームは所定の対戦ブースに入る。


 そして生徒会長ロザリナさんの司会が始まる。


 「さあ、やってまいりました大魔導士杯第三戦目!準決勝戦の開幕です!」


 うぉおおおぉぉぉーーーー!


 観客席から歓声が上がる。

 いよいよ準決勝戦だ。

 

 「本日の第三戦目は魔術操作技術勝負、指定した素材を使って課題を作り上げるというものです。すでに各対戦ブースには素材が並んでいますが、今回のお題はこれだぁ!!」


 各ブース後ろに掲げられていたスクリーンにお題が表示される。

 じゃんっ!


 「お題:美しいもの」


 随分とあいまいな表現だな。

 明確な指示ではないので余計にそのセンスが問われる。

 次いで素材を見ると、なんだこれ?


 炭?


 黒くなった木炭は無骨な格好をして転がっている。

 これを素材に美しいものを作り上げていかなければならない。

 

 炭使ってどんな美しいもの作れってんだよ?

 そんな疑問を持っていると生徒会長が解説に入る。 


 「ではルールの説明に入ります。今回は準備された炭を使っていただきお題である「美しいもの」を作成してもらいます。元の素材さえ使っていればどのような加工も可です。制限時間は四十五分。皆さんの魔術操作技術と美的センスが評価対象となります。」


 そしてスクリーンに昨年の優秀作品が表示される。

 そこには緑のドラゴンが今にも飛び立ちそうな感じの作品だ。

 そして驚かされるのはこの作品が植物でできていると言う事だ。

 大きさは人と同じくらいの大きさ、鉢植えの幹からツルや枝、葉っぱが複雑に絡まり見事なオブジェになっている。

 おー、と観客席からも声が上がる。

 それほど素晴らしい出来であった。


 「参考として昨年の優秀作品を表示しましたが、素材さえ使っていればどのような加工も可能です、この作品のように植物の育成と操作魔術を使っても可、植物を成長させ大木にしてから作品を削り出すのも可です。」


 スクリーンの画面が変わって、隼優秀作品の木彫りの英雄像が映し出される。

 なるほど、素材さえ使っていれば必ずしも植物が生きている状態で無くても良いのか。


 「皆さんよろしいでしょうか?それでは第三戦目、はじめっ!」


 生徒会長の開始の声で一斉に各チーム相談を始める。

 説明中に既に話し合いをしていたチームもあって、呪文を唱え加工を始めているところもある。


 「こんな黒いものでどんな美しいものを作るのよ?」


 ティアナが不満を漏らす。

 

 「殿下、形状を整え、表面を圧縮して研磨して鈍い光沢が出るように加工してはいかがでしょうか?」


 「黒い色を主体とした作品を仕上げると言う事ですな?」


 うーん、そもそも黒い色で見栄えの良いものを作るというのが難しいお題だ。

 表面を可能な限り研磨して光沢を出す案は悪くない。

 問題は素材が炭なのでどこまで光沢が出せるかだが・・・


 「じゃあ、その加工方法で良いとして、何を作るの?」


 ティアナの一言で一番の問題点にみんな悩む。

 黒くて見栄えのいいもの。


 「サーペイントなどいかがでしょうか?」


 「うーん、黒っぽい生物だけどちょっと地味じゃない?」


 「では、黒騎士の像などいかがでしょうか?」


 「勇ましいでしょうけど、美しいかどうかは別物ね。」


 案を出すも、決定打にかける。

 時間も刻々と過行く。


 焦る俺たち。


 何か、何かないか?

 表面を圧縮して、鈍い光沢が生えるもの・・・


 悩むティアナを見る。

 と、俺の中である妙案が立ち上がる。

 

 「さあ、残り時間三十分です。各チームどんどんと呪文を唱え作成に入り始めました!!」


 生徒会長の時間経過を告げるアナウンスが入る。


 「皆さん、ここは私にお任せくださいまし!!」


 そう言って俺は魔力を高めていった。

  


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