第38話3-13大魔導士杯第二戦目その三

3-13大魔導士杯第二戦目その三



 大魔導士杯二戦目の本日、競技場ではあと半分のチームが対戦の順番を待っていた。



 今回のお題は海水路の障害物レース。

 お約束の水着はまだしも、今までの状況を見るとそれ以外のサービス満点な状況となっている。


 ふと観客席を見れば、何故か男性が多い。

 それに第二回戦からは観客入場数が多い為、優先権を得るために観客は入場料払っているらしい。

 


 生徒会よ、いったい何やってんだ?



 俺たちの出番は最後。

 対戦相手はサージム大陸南方都市スィーフチーム。

 サージ君が持ってきた資料を見ると、女性ばっかのチーム。

 イリナ=タルトという女性をリーダーにミネルバ=ダボシー、プルス=ピース、アクアス=ミレと全員が宮廷魔術師見習生らしい。

 年齢はみんな十四歳。

 成人前だね~。

 おかげで水着はワンピースでスタイルもアンナさんの比ではない。

 しかし可愛らしい彼女たちは数年後が楽しみな人材だ。


 俺は対抗チームの資料をみながら相手チームもチラ見する。

 うーん、体力的にはこちらは俺とティアナがいるからちょっと不利か、いや、アンナさんも含めると体力は決定的にこちらが不利。

 そうすると上手く魔術を使いながら行かなきゃか。



 そんなんことを悩んでいると次の対戦がはじまった。


 

 「それでは続いて三組目の第二回戦はじめっ!」


 生徒会長の合図で三組目がコースに突入する。

 既に今までのトラップを見ているのですんなりとクラーケンまでクリアする。

 しかし前回戦同様時間が掛かってるぞ、そろそろ海流が変わってウナギ軍団登場になる。


 今回競技で対戦しているチームは東イージム大陸のドドス共和国と西ウェージム大陸ノルウェン国。


 ドドス共和国は男性三人に女性一人、ノルウェン国は女性二人男性二人のチームだ。

 両チームともに成人以上に見える。

 

 流石に両チームとも対策を取っているようで、ドドスなんかウナギが来た瞬間なんと身体に石化魔法をかけたよ!

 しかも頭だけ残して!

 あれって解除できるのかよと不安になるものの、男三人ものもだえる姿は見たくない。

 

 ノルウェンは純粋に自分の手にプロテクションの魔法をかけてその絶対防壁を駆使してウナギが入ってこれないように通路に菱形の城壁を組み立てた。

 

 ここでミソなのは自分の手のひらにプロテクションという強化魔法をかけたと言う事。

 俺もずっと考えていたのだけど、人体にかけられる魔法は使い方によっては強化と受け止められる。

 なのでジャッジの司会である生徒会長ロザリナさんを見ると・・・


 「おおっっと!両チームともに通常は自身の身体にかけない魔法を発動した!!これは人体にかけられた魔法なので有効です!さあ、どれだけ維持できるか、魔力は足りるのかぁ!!?」


 

 うん、やっぱり人体にかかってさえいれば良いらしい。



 時間が過ぎ、海流が変わってウナギ、ナマコが終わった。

 

 一旦流れが止まったそのすきに両チームとも急いで前進するも、次の海流が始まった。!!


 水の流れが始まって、先程と同じく石化とプロテクションを展開する各チーム、しかし、どうやら今度は海洋生物がいないようだ?


 ここがチャンスとばかり、ノルウェンチームがプロテクション解除して先に進む。



 しかしここで先頭の男性がいきなり倒れてドザエモンになる。

 

 「きゃっ!なにっ!!」


 「うっ!」


 「やっ!何かに刺されたぁ!!」


 残りの三人も短い悲鳴を上げたが、その数秒後バタバタと倒れ、ドザエモンになる。



 何が起こったのだろう?



 残ったドドスチームはまだ石化したままだが、その先頭にいた男性が異変に気付いたようだ。


 「なんだこの半透明なちっこいやつ!?」


 「浮袋・・・じゃないな、あ、引っ付いてきてなんか刺そうとしてる?」


 「これ、クラゲじゃないのかしら?あぶなー、石化してなかったら刺されてしびれさせられてたわよ!!」


 ドザエモンの原因がどうやら分かったらしい。

 と、ここで生徒会長さんの説明が入る。


 「さあ、この海流には麻痺毒を持つクラゲが混じっています。もちろん致死には至りませんが刺されるとしびれて一定時間動けなくなりますのでご注意を!」



 いやいや、解説遅いって。

 既に一チームドザエモンじゃん。



 動くに動けないドドスチーム、ドザエモンだけど一定時間動けないノルウェンチーム。

 状況は膠着状態が続く。


 と、次なる海流が発生し始めた。


 「さあ、いよいよ最後の海流となります、これが終わると一定時間でまたまた最初の海流に戻りますが、時間が掛かればかかるほど体力、魔力ともに減少して行きます。両チームどうする!?」


 生徒会長ロザリナさんが次なる海流発生の予告をする。

 いったいどうやってこんな海流や海洋生物集めるのかすごく気になるけど、これも何かの魔法なんだろうなぁ。

 あんま役に立ちそうにないけど。


 水路の海流が始まった。

 ぷかぷか浮いていたクラゲは一斉にいなくなり、ドザエモンだったノルウェンチームが復活してここぞとばかりに進行する。

 石化解除に手間取っていたドドスチームもあわててその後を追うが、とうとう次なる試練が始まったようだ。


 順調に進むノルウェンチームがそろそろと警戒として再びプロテクションの魔法を展開したと同時だった。

 水面がいきなりざわめき何かが飛び出してきた。

 それも一つや二つではなく一斉に無数のそれが空中に飛ぼ出してきたのだ。

 プロテクションの絶対防壁と言えど高さが無限にあるわけではない、その飛び出したものはほとんどがやすやすとその壁を乗り越えて参加チームに襲いかかる。


 「うあっ!何、なんだ!?」

 

 上から襲いかかるそれに驚いた男性が見上げるとそれは羽の生えた魚、そうトビウオだ!


 「魚に羽がある!?」


 これには参加チームも観客も驚いている。

 どうやらこのボヘーミャ近海ではいない魚のようである。


 「なにあれ!?魚が空飛んでるの!?」


 驚くティアナ。


 「ティアナ、あれはトビウオと言って胸びれが長く進化した魚ですわ。確かある程度の滑空が出来るはずですわ。」


 「エルハイミちゃん、よくそんな魚の知識を言っているわね?私も確か書物で少し見たような記憶があります。」


 「魚なのに空飛べるんだ、でもただの魚なら問題無いわね?」


 そう安堵の域を漏らした矢先、主に情勢を中心に悲鳴が上がる。


 「きゃぁあぁぁっ!!」


 「いやっ!なにこれっ!」


 悲鳴のした方に目を向けると、絶対防壁を飛び越えたトビウオたちがなんと女性の水着にひっかっかりくっつき、その勢いで水着をずらしたり引っぺがしたりする。



 うぉぉおおおおおぉぉぉぉっっっっーーーー!!!



 男性観客が一斉に歓喜の雄たけびを上げる。

 今までなかなかご褒美シーンが無かったせいか、その雄たけびは地響きがするほどである。



 「思い出しました!たしか南方に生息する『くっつきトビウオ』と言う魚で、対象に飛びつきくっ付いて鳥や大型生物に遠距離まで運んでもらう性質があったはずです!」


 アンナさんが記憶の奥に眠っていたトビウオの知識を引っ張り出す。


 「え?くっつくだけ?」


 ティアナはもう一度その様子を見る。

 数は他の海洋生物に比べ少ないが、よくよく見れば胸びれの下に六本の細い蟹のような足がある。

 くっつきトビウオは器用にその足を使って衣服にとりついたり、身体にとりつこうとしたりしている。


 「いやんっ!そんなに強く胸を掴まないでっ!!」


 中にはビキニ姿の胸をその六本の足で鷲掴みにして取り付いたり、必死に衣服にとりつこうといろんなところをまさぐっているのもいる。


 「あひゃひゃひゃひゃっ!わ、脇はやめてくれぇ~!!」


 「うわっ、そんなところに引っ付くな!やめろ、ズボンが落ちる!!」


 「きゃーっ!やめてぇ!!先端をつままないでぇえぇぇぇっ!」


 ここにきてノルウェンチームは総崩れとなる。


 チャンスかドドスチーム!?

 だがしかしくっつきトビウオは無慈悲に今度は石化していないドドスチームの頭に殺到し始める。


 「うわぁぁ!」


 「ぐはぁぁつ!」


 「やめてよして、やめてよして、っぶっっっ!!」


 「いやぁっ!こないでぇええぇぇぇぇっ!!」


 無残ドドスチームの頭に群がるくっつきトビウオ。

 石化解除していないので頭部に魚の群れが群がる。



 うあぁっ、あれ嫌だなぁ、夢に出てきそう。



 再び阿鼻叫喚となる両チーム、しかしここでノルウェンチームに動きが出た。


 くっつきトビウオは一旦落ち着くとそれ以上は動かないようである。

 ノルウェンの男性がプロテクションの魔法を解除して身体強化の魔法を使った。

 そしてくっつきトビウオの重さで伸びる海パンを重要な所だけ手で隠して水しぶきを上げながら障害物を強引に押しのけゴールした。



 最後はあっけないほど力押しではあったが、結局ドドスチームは頭部に集中したくっつきトビウオのせいで解除呪文も他の呪文も一切唱えられず敗北してしまった。



 「勝者ノルウェンチーム!」


 生徒会長の判定で少々微妙な歓声が起こっている。

 それもそのはず、ゴールに到着したノルウェンチームの男性は内またになりながら手を最後の防波堤で重要部門を隠していたからだ。

  

 強引に動いたせいで彼の海パンは破れ、前のわずかな部分しか残されていなかったのだ。

 まさに尻丸出し状態。


 アンナさんなんか真っ赤になってそっぽを向いている。


 「は、破廉恥ですっ!!」

 

 まあわからんでもないが、流石に野郎では観客のみんなも微妙な歓声になるよな。

 アンナさんなんかまだ小声で破廉恥ですを連発している。


 うーん、次は俺たちの番だけど、どうしたものか?

 参謀のアンナさんがあれじゃ、落ち着いたプランも立てられそうもないしなぁ。


 俺はもう一度海流の変化する時間を考える。


 大体海流が変わるのは六分くらい。

 力技だけでこのコースを抜けるならホリゾンの連中のように大体六分強の時間で渡れるだろう。

 そうすると方法としては最速でコースを抜けるか、強化魔法を駆使して強引に進むかのどちらかになる。


 前例で一番いいのは悔しいがホリゾンのようなやり方だろう。

 しかし、そうすると体力的に俺とティアナがみんなの足を引っ張ってしまう。


 かと言って何らかの強化魔法を使うとタコが・・・


 って、タコ以外って魔素吸収しないんだった!

 よし、これだ!


 「ティアナ、アンナさん、ロクドナルさんちょっとお話がありますわ!」


 そう言って俺はみんなを呼ぶ。

 

 さあ、行ってみようかっ!



 

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