第37話3-12大魔導士杯第二戦目その二

3-12大魔導士杯第二戦目その二


 

 衝撃の第二回戦の開幕を見届けた俺たちは、次なるチームの対抗を見守る。

 続いて競技に参加するのは貿易都市サフェリナチームと地元ボヘーミャチーム。



 サフェリナチームはすべて女性のチームで、年の頃やはりアンナさんくらいの美女軍団。


 対する地元ボヘーミャチームは女性二人、男性二人のチームだ。

 ボヘーミャチームの方が若干若いかな?


 サフェリナチームの美女軍団は全員がビキニ姿。

 なんか観客に愛想振りまいてセクシーポーズとかまでとっている。

 

 対するボヘーミャチームは女性はワンピースだけど競泳着のような感じの水着。

 野郎は・・・

 端折ります。


 「それでは、続いてサフェリナチーム対ボヘーミャチームの対決です!皆さん準備は良いでしょうか!?」


 両チームともスタート地点につく。


 「それでは、第二回戦はじめっ!」


 会長の声で両者チームとも呪文を唱え始める。

 先に呪文を唱え終わったボヘーミャチームがコースに突入する。

 続いてサフェリナチームもコースへ突入、両チームとも最初の浮きや網は簡単に超える。

 そして魔のクラーケン海域に突入する寸前に海流が発生、両チームとも強化魔法を一旦止める。


 ボヘーミャチームは男性が先頭にタコを押しのけながら進む。

 続いてスクラムを組みながらじりじりとサフェリナチームがこの海域を通過する。


 アナウンスにあったように魔法を発動していないとタコどもは通過する人間に見向きもしない。

 しかし、ここでサフェリナチームは大きく差を開けられてしまう。


 「おおっと、サフェリナチーム大事をとってスクラムを組みながら魔のクラーケン海域を通過するも大きく後れを取ったか!?この差をどう挽回するのでしょうか!!?」


 生徒会長の司会で状況説明。

 男性観客は楽しみにしていた海域で何も起こらないのでぶーぶー言っている。

 が、しかしここにきて先行するボヘーミャチームに異変が起こる。

 

 「ぐあ!なんだ海流が変わっただと!?」

 

 「なにっ?なにっ!?足にぬるぬるしたものが絡みついてきたわ!!」


 「いやぁぁああっ!きもちわるぅぅいぃぃっ!!」


 「・・・・」


 どうやら海流が変わったようだが同時にタコ以外の何かがボヘーミャチームに影響を与え始めているようだ。

 と、動きが鈍ったボヘーミャチームにサフェリナチームが追い付くが、悲鳴がこちらからもあがる。


 「いやぁぁっ!なにっ?なにっっ?ぬるぬるしたものが絡みついてくる!?」


 「やああぁぁぁっ!ブラに何か入ったぁぁああっ!」


 「きゃぁあぁぁぁあっ!どんどん増えてくる!」


 「なんなのよぉ!?って、これウナギっ??」


 女性たちの悲鳴に、ぶー垂れた男性観客が一斉に注目する。

 と生徒会長ロザリナさんがマイクを取る。


 「はい、今回のこの障害物コースは時間の経過ごとに海流が変わります。それに合わせて海水には生命に害をなす事の無い海洋生物が混じることもあります!さあ、急いでゴールしないとどんどん海流が変わりますよぉ!!」



 うおおぉぉぉぉぉっーーー!!



 男性観客が何故か歓喜の雄たけびを上げる。

 海流ごとに違う海洋生物って!?


 ちなみにウナギは通常海から川に来るので海洋生物と言っても間違いじゃないです。



 「な、なんておぞましい競技でしょうか!?不潔ですっ!!」


 あ、アンナさんが青ざめている。

 

 「エルハイミ、あれって海の生き物らしいけど、蛇とは違うのかな?」


 見た目は確かに細長いうにょうにょした生物、蛇みたいと言えばそうだけどよくよく見ればエラも尻尾もあるから細長い魚にも見えるんだよね、ここからじゃ遠くて見えないけど。


 「ティアナ、確かに魚、どちらかというとナマズの細長いようなやつですが問題はその数ですわ!あれではぬるぬるで身動き取れなくなってしまいますわ!!」


 そう、すでにウナギはこの一帯を埋め尽くすほどいる。

 その数は尋常ではなく、参加チームがウナギまみれで身動きが取れなくなってしまうほどだ。

 そして何故か女性中心にウナギは群がっている。


 「いやぁあぁっ!!変なとこ入り込まないでぇぇええっ!!」


 「だめっ、そこはぁっ!!」


 どんどん増えるウナギにサフェリナチームが捕まる。

 ウナギはぬめりを増しながら彼女たちの体に更にうごめきまとわりつく。


 「もう、もう、ら、らめえええぇぇぇぇぇっっ!!」


 「嫌なのに、いやなのにぃぃぃぃっ!!」


 おいおい、女性陣の声が悲鳴から嬌声に変わってないか??

 

サービス満点にうねうね動くウナギども、それは意図的か無意図か更に彼女たち女性陣を中心に絡みついている。

 暴れれば暴れるほどぬめぬめはひどくなり、彼女たちをとらえる。

 が、中には・・・


 「うがぁぁああっ!やめてよしてっ!そこはだめなんだぁあぁぁぁっ!!」

 

 何故か男性も悲鳴が上がる。

 ウナギよ、お前は見境なしか?

 

 「も、もうお嫁に行けなぁぁぁああぃぃぃっ!!」

 

 「だ、だめぇえぇぇぇ!も何も考えられなくなっちゃうぅぅっ!!


 「うあぁぁぁああ!お、おれはそんなところ初めてなんだぁああ!!」 


 各チームの悲鳴が怪しくなっていく。

 おいこれ何のゲームだよっ!?


 拷問?

 それともなんかのご褒美??



 がしかし、どういうわけか一人の男性がこのぬるぬるを克服してこの海域から抜け出した。

 それはボヘーミャチームの男性。

 これといった特徴もない感じなのに、このウナギ地獄をするりと抜け出す。


 魔力感知で様子を見ると、この人だけ体の周りになんかの魔法が掛かっている。

 でも何だろう、ものすごく存在感が薄い。

 もともと見た目もモブなので気にも留めなかったが、今はそのモブ属性すら怪しい。

 いや、これってもしかしてステルス魔法?

 ただでさえ存在感薄いのに更にステルス魔法でその存在感をウナギにすら感じさせないほどに薄めているって事か!?


 続いてまたまた海流が変わったらしい。

 何故かウナギどもはきれいさっぱり流されて、今度はナマコ軍団が押し寄せる。


 「今度は何っ!??いやぁああっ、なんかベトベトのものかけられたぁああっ!!」

 

 「なにっ?足元にごろごろしてる!くっつかなないでぇ気持ち悪い!!」

 

 「やだぁ!変に硬いし太くておっきいぃ!!ちょっと、こっち来ないでぇ!いや、なにこれっ!!」


 ナマコは刺激を与えると内臓を吐き出す、白くてねばねばしたやつを。

 女性陣は気味が悪く手で押しのけたり握ったりして押しのけようとするがかえってナマコを刺激してしまい、内臓をぶちまけられてる。


 「いやぁああんん!白くて濃いのがたくさん!!」


 「らめぇええ!ウナギでもういっぱいいっぱいなのに、これ以上は許してぇえぇぇっ!!」 


 何故か女性を中心に顔や体にその白くてねばねばしたモノを大量にかけられていく。

 先ほどのウナギのせいでまだ高揚して赤い顔つきの女性陣にかかったそれは何故か非常になまめかしく見とれる。



 ビジュアル的にひじょーにうらやまけしからんです、ハイ。



 男性観客のほとんどが前かがみ、いや、わかるよその気持ち、俺も女じゃなきゃ同じになっていただろう。 

 

 そんなん中、先行していたあの男を見ると・・・

 あれ?海流があるのに水の抵抗も障害物も彼をよける節がある?

 なにそれ!!?


 で、あっさりゴールする。

 と、ここで自分にかかっていた魔法を解除。


 いきなりゴールに人が現れたので周りの人は驚く。

 いや、今まで気づかなかっただけなんだけど、その隠蔽精度はほぼ透明人間に近いレベル!?


 「な、なんと!いつの間にかボヘーミャチームゴールに一名送り込んでいた!?これは凄い!勝者ボヘーミャチーム!!」


 司会の生徒会長ロザリナさんも驚いている。


 おおおおっー??


 なんか観客の歓声も微妙でなんで勝ったのか誰も理解していない状態。

 むしろ疑問の歓声だなこりゃ。


 「あ、あんなおぞましいものを避ける魔術があるなんて、流石ボヘーミャ、まだまだ私たちの知らない魔術の奥義があるのですね。」



 いやいや、アンナさん、あれって普通のステルス魔術じゃないからきっと。

 元のモブっぽさに輪をかけて目立たない性質だったからできるんじゃないだろうか?

 ウナギどころか水や障害物の無機物まで彼に気付かないなんて。



 「ちょっと、何の魔術か知らないけどあれも身体強化魔法になるの?」


 「多分、ステルス魔術だと思いますわ。しかし、ウナギやナマコ、海流、障害物まで彼をスルーするほどとは、信じられませんわ。」


 「なんと、エルハイミ殿は彼の者の動きが見取れておりましたか!?」


 「エルハイミちゃん、どういうことなのかしら?私にもよくわからないのだけど。」



 ちょっと待て、マジでみんなあいつの動き見えなかったの??

 見るとみんな真剣な眼差しでこっちを見ている。


 えー、マジ?



 「えーと、たぶんステルス魔法、存在感を限りなく低くして自分の存在自体を他人に認知させない隠蔽魔法の類だと思いますわ。自身にかけた魔法なので強化と言えば強化魔法にはなりますが、まさか海洋生物にまで効くなんて。」


 「エルハイミちゃん、そうすると私たちは見えていたのに認識できていなかったって事になるのかしら?」


 「そうなりますわ、アンナさん。私はたまたま感知魔法で様子をうかがっていたので、彼が何事もなくするするとゴールに向かう様子は見えました。多分皆さんも見えてはいても認知できていなかったのでしょう。」


 「なにそれ、なんかずるい!」


 腕を組んでご立腹のティアナ、何か真剣に考えるアンナさん、爽快な笑いをしながらこれは参った等と言ってるロクドナルさん。

 三者三様なのはいいけど、そう言う対処法もあると言う事だ。



 条件は強化魔法の類を自分たちにかけるか。

 単に筋力や俊敏度あげる以外にも方法がありそうだね。



 さてさて。

   

 

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