第37話
表向きは上手くいっている。
病院のスタッフに対して人を見下した言動や高圧的な態度で人の入れ替わりが激しいと。
お手伝いの
邦広の機嫌が悪いと二人に八つ当たりをしていた。
そして朝子は神経質な性格なため二人に対してなにかと注文をつけていた。
朝子は頻繁にお客様を呼んでホームパーティをするので、二人は朝子の注文に応えるだけで精一杯である。
上品な物言いで指摘するが地味にダメージを食らわせる感じである。
最終チェックは朝子が行うことになっているが、姑のごとく細部までするので、二人にとって息が詰まるのである。
以前つゆ子のもとに二人から「朝子様はコップの位置やお皿の位置など細かく注文をつけるし、邦広様は機嫌が悪いと私たちに八つ当たりをするのです。もう限界です」と泣きつかれた。
源三のもとにも「邦広様のスタッフに対する態度がパワハラなのではと陰で言われている」と話が来ている。
現に邦広が来た日の病院はスタッフが縮こまっているし、患者の見えないところでスタッフに人格否定する言葉が投げつけられている。
それが原因なのかスタッフので入れ替わりが激しくなっている。
患者の前では「評判のいい先生」ぶっているし、権威のある人の前だと徹底的に媚びを売っている。
全ては自分の地位確立のために。
香子に対しても朝子と邦広は厳しかった。
頭から足先までの所作はもちろん、家族との会話は敬語で。
香子は子どもの頃から「上流階級に相応しい女性」のために大人の集まりの度に、挨拶だのお茶出しだの来客の対応をしていた。
小学校から女子校、許嫁を小学校の段階で決められる。そんな孫につゆ子と源三は黙っていなかった。
香子がいつだったか「おじいちゃま、おばあちゃま。私はこのまま両親の意向に全て従わないといけないのでしょうか」と二人にポツリ呟いた。
つゆ子と源三は何も返せなかった。
無責任に「そんなことありませんよ」なんて言えなかった。
子供の頃から大人の対応を求められる香子。
一方喜久はのびのびと育ったものの、邦広と朝子のもとに引き取られてから、元気がなくなった。
そして今日会話をちらほら聞いたら、朝子と邦広の圧力で二人の将来を決めようとしていた。
子どもたちを巻き込んで喜久の同級生及びその親に復讐という名の嫌がらせをした朝子。
それを正当化し、相手方に圧力をかけてなかったことにしようとする邦広。
自分の選挙に影響するからと。身勝手な理由で。
このままだと香子と喜久が潰れてしまう。
邦広と朝子は孫たちにとって悪影響を及ぼす存在にすぎない。
――つゆ子は決心した。孫を守ろうと。とことん味方になろうと。
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