第9話 第八話 SeptemberとMr.Roboto 〜その①〜

———————千葉県千葉市中央区 千葉県大学医学部附属病院——————————


「今日はお見舞い来てくれてありがとな一真。」


キャストを足につけ病室のベッドに寝ていた早乙女 健二は体を起こし、横のテーブルに果物の詰まった籠を置いた青年、吉村 一真に礼を言った。


「いや、昨日色々あってお見舞来れなかったしさ、そろそろ来ないと悪いだろ?」


一真は健二の方を向き直すとそう言って籠からりんごを取り出し皮をナイフで剥き始めた。

春だというのに室内は真夏のように暑く、外では蝉の鳴き声が微かに一真の耳で響いた。


「それで健二、その足は順調に治ってるのか?」


一真は健二のキャストを付けてる方の足を見て健二に確認する。


「ん、まぁな…。後1週間と5日で少しは動けるようになるらしいぜ。だけど一真よぉ……お前確か恵さんと連絡取った時はお前の右腕骨折して補強もしてるって聞いたんだけど…補強もつけてないししっかり動かせてる……もう治ったのか?」


健二は一真が病室に入った時から自分が抱いていた疑問を一真に投げかける。


「………。」


一真はリンゴの皮を剥くナイフを一瞬止めたと思うと再び剥き始め答えた。


「……え…と…だな…こことは違う病院で治療してもらったんだよ。ほら、町が襲われたことで怪我人とかもの凄い人数が出ただろ?この病院だけじゃ手が回せない患者たちは別の病院に送られて手術を受けたんだ。」


「そう…か……確かに町を襲われた時の被害の規模は大きかったからな……当然か……。」


健二は俯き落ち込んだ様子を見せる。


(健二に嘘をつくのは気がひけるけど、俺の力のことを教えて巻き込むわけにはいかないよな……。)


一真は真実を伝えられないことに罪悪感を覚えながらそう思った。


「で、でさ!恵さんは元気か!?お前の容体を伝えられてからあれ以来電話してないんだけどよ!」


健二は話題を切り替えようと一真に吉村 恵について聞く。


「ん…まぁな。あの時からなぜか家事をいつもより張り切ってやるようになっちゃってさ、俺はもう少し休んでくれって言うんだけど、40代の力見せてやるわー!って答えた後に勢い余って腰痛を起こすくらいには元気だよ。」


一真は腰を抑える仕草をしながらそう答えた。


「ぷっ…はははは!!それは元気すぎだろ!」


健二は思わず吹き出し一真もはははは…。と先程までの暗い空気も忘れ互いに笑いあった。


「よしっと…ほら、切って終わったぞ。」


皮を剥き、切り終わったりんごを皿に入れると一真はそれを健二に渡す。


「お、thanks you♪」


健二は外国人と大差ないほどの完璧な発音で礼を言うと皿を受け取った。


「お前発音ものすごくいいな……。」


「俺なぜか英語だけは結構できんだよな。やっぱりこれからのグローバル社会…俺みたいな英語話せる奴が重宝されるんだよな〜。」


健二はニヤつきながら答え、リンゴを食べ始めた。

ベットの下には『これで君も大手企業の社長!〜これからのグローバル社会について〜』と言う本が落ちてあったが、一真は見ないふりをした。ついでに健二の発言を聞き流してテーブルに置いてあるリモコンを手に取るとテレビをつけ旭町内だけで放送されている朝のニュース番組を見始めた。


『続いてニュースです。先日、千葉県千葉市中央区の矢作町のビルの隙間から二人の死体が見つかりました。』


一真の言う昨日色々あった場所が画面に映し出される。

ここで一真は旭町と矢作町でバラバラ殺人をしていた男と死闘を繰り広げ、ついに勝利したのだ。


『死体のうち一人は女性と思われ体の四肢と頭部がバラバラなっていて胴体を切開されており、内臓は全て取り除かれているとのことです。なお、もう片方の死体は銃で撃たれたかのような傷跡が身体中に残っていて、死体の周りにはゴム製の袋に入った女性の死体のものと思われる内臓と使用済みの閃光弾、刀やナイフ、針等の凶器が発見され、旭町で連日発生していたバラバラ殺人の犯人の死体ということが明らかになりました。犯人は女性を殺害した後、何者かに射殺されたと見られていますが使用された思われる銃器や弾丸は発見されておらず、現場には女性と犯人の指紋しか残されていないことから、犯人を殺害した人物の特定は難しいとされています。続いてのニュースです…………』


「バラバラ殺人鬼の最後は他殺なのか……まぁ何人も人を殺してきたんだ、因果応報…自分に巡り回ってきたことだな。」


健二はザマァ見ろと言った様子でテレビを見ながらリンゴを食べ続ける。


「…………。」


一真は何も言わず、ただテレビの画面を見つめ、自分がやったのは結局は奴がやっていた事と同じ殺人なのだろうと思った。番組は『みんなのウワサ!』というコーナーへと移る。


『みてください渡利便さん!これが今ネットで噂の「人によって季節が違うように見える公園」なんですよ!』


ニュースのディレクターは夏の日の物であろう緑葉が生い茂る木々が並ぶ公園の写真を手に取り出すとそう紹介した。一真はこの写真を病院に来る前に違うニュース番組で見たので少しだけ退屈そうにする。


(と言うかなんか今日暑いな…春って感じしないぜ……。)


一真は服の襟をパタパタさせて熱を逃がしながらテレビの向こうの写真を眺めた。


『あ〜…これが近頃噂になっていると言う話、私も聞きましたよ〜。」


司会者の渡利便という男は答える。


『この写真はですね!ある男性が千葉県のAsahicho Parkという公園を通りかかった時に他のお友達と見えてる景色が違うということで撮影し、SNSにあげられた物なんです!そしてこの撮った写真自体も違う季節の公園の写真に見えるため、拡散され次第に有名になっていったんです!』


『いや〜それにしてもとても綺麗な


『え!?私には


渡利便とディレクターのやりとりにスタジオは驚きに包まれた。


「え〜この人たち絶対演技だろ!」


健二はテレビを見て呆れたようにそう言うと最後のリンゴを食べ終える。

確かに今一真に見えているのは夏の景色であり秋の景色でも冬の景色でもない。


「その通りだぜ、これはどう見たって夏の景色だよな。」


一真は健二に同感の意を示し答える。しかしーーーーーーー


「え……なに言ってんだ…?これは……『春の景色』だろ……?」


健二は一真に向かって驚いたようにそう言うと一真が大量に汗をかいていることに気づく。


「おい、一真…お前そんな暑がりだったか…?今日は結構肌寒いと思ったんだけど……。」


「なっ……………。」


一真は健二にそう言われると同時に健二と壁に掛けられていた温度計を見た。ーーーーーーーーーーーーーーー







温度計は、22°


「…………!!」


一真は何かがおかしいことに気づき、さらに多くの汗を流す。


「ていうか絵が違うように見えるってことは、こ…これ……まさか本当に………。」


健二はもう一度テレビの方を見る。


「な…なーんてな!別々の景色にみえるわけないだろ!どう見てもこれは春の景色だぜ!」


一真は健二の次の言葉をかき消すように夏の景色に見える公園の写真を見て自身の発言を訂正する。


「え、そうなのかよ……なーんだ…少し期待したんだけどなぁ。」


健二は残念さ半分、安心さ半分の様子でそう言った。


「あ!そういえば俺母さんから郵便に手紙出すよう言われてたんだった!すまん健二!俺もうそろそろ行くわ!」


一真はそさくさと準備を済ませると健二の足に少しだけ触れ、病室の外へとドアに向かって早歩きした。


「お、おう分かった!恵さんに果物ありがとうございますって伝えといてくれ!」


健二はドアを開き外へ出ようとする一真に呼びかける。


「あぁ、伝えとく!」


一真はそう言って病室の外に出てドアを閉めると携帯を取り出しながらエレベーターへと真っ直ぐ向かう。


(Asahicho Park…すぐ近くとは運が良い……。)


一真はエレベーターに乗り一階のボタン押すと電話を開いて石川 本郷に繋いだ。


「俺だ師匠……Asahicho Parkで覚醒者だぜ…。」


『あぁ、分かっている…俺も今朝そのニュースを見たところだ。』


「師匠は


一真はエレベーターから降りると病院の外へと携帯を耳に当てながら進む。


『…冬だ。冬の季節の公園に見えた。』


本郷は息を大きく吐きながら答えた。


「どうやら、『見ている景色の季節を変えてその季節の時の温度を感じるようになる能力』らしい、だが景色の季節を変える方は公園の景色限定だと見て良いかもな。」


すると一真は次の本郷の言葉を聞くと目の前の光景を見て言葉を失った。


『……………いや、一真…どうやら……今見ている全ての景色のようだぞ………道場の周りが既に………。』



辺りは一面緑葉に包まれ、蝉の鳴き声がこだまする。それはそれは清々しいほどに、夏景色だった。


「…………………師匠。」


数秒の間を経て本郷に呼びかけると一真は大きく息を吸った。


「これが悪意ある行動なのかそうじゃないのかは知らないけどよ……この『能力』…人々が覚醒のことを知ってしまうかもしれない……人々が俺たちの戦いに巻き込まれてしまうかもしれない…!それだけは絶対に阻止する!俺は今からAsahicho Parkに直接向かうぜ!これ以上能力を世間に認知させないために!」


決意込めた声で一真は言うとAsahicho Parkのある方向に体を向ける。


『分かった、俺もその公園にできるだけ早く向かう。』


一真は携帯の向こうでで電話が切れる音を聞くと携帯を閉じてポケットに入れた。

そのまま公園の方向へと走り出そうとしたその時——————————


一真の首筋に、一本の閃光が光った。


「………。」


一真は違和感を覚え一旦止まると首筋に触れる。すると首筋に血の線が描かれたと思うと一真の首からスプリンクラーから水が噴出されるように大量の血が噴き出した。


「う…ぐ…これ……は………。」


一真は体中の骨が抜かれたかのようにその場に崩れ、首の切れ目を抑え地面に手をつく。

一真の手前には閃光の正体、ナイフが落ちていた。ナイフには一真の血がべっとりと付着している。


「はぁ……はぁ……俺は今…………?公園の奴が…俺に攻撃をして来ている……のか……?」


すると一真に向かって今度は一本ではなく、数本のナイフが銀色に光る軌道を描いて再び飛んで来た。


「ガッ……グ………スッ…『超音速(スーパーソニック)』………!!』


一真は先程の攻撃で警戒体制になっていたため何とかそれに気づき、ナイフを横に飛ぶ速度を上昇させて避けようとする。しかし、何本かは一真の足を切り裂き、そのまま一真は地面に転がり落ちた。


「く、くそ……一体どういう事だ……公園の奴の能力は、『公園を見た者が見る景色、聞く音、感じる温度を別の季節に変える能力』じゃないのか………。」


一真は『超音速(スーパーソニック)』で傷の修復の速度を上昇させると力を振り絞りよろよろと立ち上がろうとする。

その時だった。——————————


「グッ……カハッ……!!」


一真は首を何かに締め付けられたように苦しみ始める。


「ガハッ……!ゲホッ……!」


一真は抵抗しようと首を締め付ける何かを掴もうとするが一真の手は空を掴んでいくだけだった。


(な、何かに締め付けられている…!し、しかし……『何に』だ…!?触れることができないどころか、……!!締め付けられている感覚はするのに…!手がこれ以上首の方に行かない…!手が握れない…!)


一真は足をジタバタさせたり、地面の上で体を何度も激しく動かすが、首を締め付ける力は緩むどころか次第に強まっていく。


(い…息が……うまくできない……これじゃあ血液がうまく回らない……!今『超音速(スーパーソニック)』で血液の流れる速度を上昇させても効果が薄い…!)


「ズッ…『超(スーパー)……カハッ…!音速(ソニック)』………!!」


一真は眩い光のエネルギーを纏うと『超音速(スーパーソニック)』で肺でのガス交換の速度を上昇させ、


「ぐっ…おおおお!!」


続いて血液の流れる速度を上昇させると、一真は四方八方に向かって蹴りや拳を放つ。


「……!!」


当たった感覚はしなかったものの首を締め付ける力は緩み、一真は気道を確保することに成功する。


(チャ…チャンスだ!今なら首を引っ込めて締め付けている何かから逃れられる……!!)


一真はそのまま地面に身を引き首を引っ込めると、首に違和感が無くなるのを感じた途端再びAsahicho Parkへと走った。


(公園に……!Asahicho Parkに行かなくては……!敵の姿もわかっていないんだ…!こんなところで訳もわからずやられてたまるか!)


すると一真は何かにつまずいた感覚はしなかったが、何故か転ぼうとする。


「なっ……。」


そして一真の転ぶ先、ちょうど頭部のあたりに、

「なにいぃぃぃぃぃ!?」


「うおおおおお!!『超音速(スーパーソニック)』!!」


ナイフはついに一真を逃すまいと自分から一真に向かって飛んできたが、一真は空中での体の動く速度を上昇させると軸をずらしてナイフを避け、そのまま地面に手をつき前に一回転すると立ち上がり又しても走る。


「わ、訳がわからない…!なんで転んだんだ…!しかもナイフが自分で勝手に動いた!」


そう言って一真が振り返ると一真の後ろでナイフが空中でフヨフヨと浮いていた。


(一体……一体どうやって……!?敵はそこにいるということなのか……!?しかし……なぜ姿を消せているんだ!?そもそも何故俺をピンポイントで狙ってきたんだ……!?)


一真は走ることによるスタミナ消耗、出血、そして何より今感じる『暑さ』で脱水症状や息切れを起こす。


「はぁっ…!はぁっ…!はぁっ…!」


一真はAsahicho Parkに向かって前に、ただ前に走った。

すると後ろから一真の右足をナイフが掠め、アキレス腱が切断される。


「ぐあああっ!!」


一真は思わず転びそうになりながらも片足で進み続けた。


「Asahicho…はぁ……Parkに……はぁ………行かなくて……は……………。」


一真は切れたアキレス健の修復の速度を上昇させながら片足で必死に道の角を何度も曲がり公園に近づいていく。

しかし、後ろから飛ぶナイフは一真の横腹を切り裂いた。


「うぐっ……!!」


一真は激痛を堪え意識を朦朧とさせながらも進み続ける。


(し……死ぬ……殺……される……。)


どれくらい進んだだろうか?

どれくらい経っただろうか?

今の一真にそんな事を考える余裕はなく、ただ暗闇の中に消え入りそうな意識の中で進み続ける事しか考えられなかった。


「はぁ………はぁ………………。」


角を右に曲がると公園が現れる。公園の入り口付近にはAsahicho Parkという看板が塀にぶら下げられていた。


「あ…後……もう少しで……公園だ………。」


一真は目の前の公園に進もうとする。しかし——————————


「うぐぁ………!」


一真は左足のアキレス腱をナイフで切り裂かれ倒れるが、残った腕で地面を這いずろうとする。

しかし一真の体に二本のナイフが突き刺さり一真の動きは次々と制限された。


「があああ……!!」


一真は声を上げると寝たままの姿勢で後ろを振り返った。

後ろにはやはり誰もいないがナイフが一真に向かったまま空中へと上がる。


(……だめだ………敵の能力も……俺を襲ってくる動機も…………なにも……分からない………)


一真は何度も暗闇に飲まれそうになる視界の中でそう思った。


「……もう………諦めたぜ…………。」


ビュオッ


一真の頭部へとナイフが投げつけられる。





…………………。」


一真はナイフを首を傾け避けると飛んでいくナイフに手で触れ、眩い光のエネルギーを纏った。


「『超音速(スーパーソニック)』……………。」


そう言って一真がナイフを握ると同時にナイフは速度を上昇させ、一真を後方、Asahicho Parkへと連れて行く。


「もしかしたら………公園に敵はいるとは限らないかもな………だが………いないとも限らない…………なら……そこにあるかどうかもわからない絶望よりも………俺は希望があるかもしれない方に………真っ直ぐに…………人ってのはそういうもんだ………。」


一真はそう目の前のどこかに言い放つとナイフが公園の入り口の前まで来たところで『超音速(スーパーソニック)』を解除する。そのままナイフの速度が緩み始めると同時に一真はナイフから手を離し公園の中央あたりまで転がった。


「はぁ………はぁ………だいぶ距離もとった……公園にもついた………後は……敵の姿を見るだけだぜ………。」


一真は先に治った右足で立ち上がると辺りを見渡した。

公園には全く人がおらず、ベンチに一人男が座っているだけだった。

意外にも敵を見つけることは難しくなく、公園のベンチに落ち着いた様子で座って本を読んでいるその男がエネルギーを纏っているのを見てすぐ覚醒者だと分かった。


「あいつか……。」


一真はとても簡単に敵を見つけられたことに拍子抜けしながらも男の方へと近づく。


「おい……お前………これは……見える風景が変わって見えるのはお前の仕業か……。」


一真は息を切らしながら男に向かって問いかけると男はゆっくりと顔を上げ一真を見つめる。


「……そうだけど……君……なんで分かったんだい……?」


男は答えると心底不思議そうにした。


「お前のそのエネルギーを見ればすぐに『覚醒者』だってわかるさ……。」


一真がそういうと男を驚いたようにしばらく沈黙した。


「…………すごいな…………僕の『力』をわかる人がいるなんて……まさか君もなのかい……?僕と同じように能力を……………初めて会ったよ君みたいな人……。」


男は本を閉じる。


「どうだったかな……僕の能力……いい季節は見られたかい……?」


「いや……すぐその能力を解除してくれ……この力は人々に知れ渡っちゃいけないんだ。そして……俺への攻撃をやめろ……。」


一真はそう言うともしものために戦闘態勢に入った。


「え……どういう意味だい……?それに攻撃…何を言ってるんだ君は?」


男も一真の動きに不信感を抱き少しだけ警戒した様子を見せる。


「……!!」


一真はこれを敵意ある行動とみなしすぐさま男に拳を放つ。


「な!?『September(セプテンバー)』!!」


男が驚きそう叫ぶと同時に一真の視界暗闇に包まれる。

一真の放った拳は暗闇の中で男の頰を掠めた。


「いきなり何をーーーー!」


『いきなり何をするんだ!』


そう男が叫ぼうとした時。——————————


「ク、クソ!」


一真の背中から声が聞こえる。

一真の後ろにには黒髪の男が立っていて、


「……!!危ない!!」


茶髪の男は一真にナイフが当たる直前で突っ込み黒髪の男から一真を引き離す。


「『September(セプテンバー)』解除!」


茶髪の男がそう叫ぶと一真の視界が途端に晴れる。


「うっ……。」


一真は晴れた視界の向こう側に黒髪の男を捉える。


「一体……これは……。」


一真は目の前の光景に混乱する。

黒髪の男も視界が晴れたのか一真の方を見るなりナイフを一真に向けた。


「貴様……貴様ハ吉村 一真……石川 本郷ノ弟子デアル貴様ハ、アノオ方ニトッテ邪魔ニナルト判断シタ……!貴様ヲ今カラ排除スル……!」


黒髪の男はカトコトな喋り方でそう言うと一真に歩み寄る。


「おい君……。」


横から茶髪の男が一真に呼びかけた。

一真はハッとすると茶髪の男の方を向く。


「どうやら君を攻撃してきたのはこの男らしいね……なんだか知らないが事情があるんだろう?協力するよ……。」


男はそう言うと一真の手を引き一緒に立ち上がった。

一真は頭の中の整理がつかずただ呆然とする。


「どうしたんだ?早くどうにかしないとやられそうだぞ。」


「い、いや……俺今さっきあなたを攻撃しようと……。」


「大丈夫だ気にしてないから、慣れてるしね、それに……この状況で誰が1番危険かなんてわかりきってるからね。」


茶髪の男はそう言うと黒髪の男のを方を向いた。


「は……はい!わかりました!よろしくお願いします!」


そう答えると、一真もついに襲って来た敵と対面できたことに真夏に負けないほどの闘志を燃やして黒髪の男に向かって構えを取った。ーーーーーーーーーーーーーーー




『September(セプテンバー)』

本体名————彩季 節芽(さいき ふしめ)————


自身のエネルギーを粉末状にして範囲内(公園を覆える程度)に散布させる。エネルギーの粉末が付着した場所に光が当たると反射する光にエネルギーの粉末が混ざり、生物の目に光が差し込み混ざっていたエネルギーの粉末が付着することで能力が発動する。

エネルギーの粉末が目に付着した生物は視界に映る全ての景色の季節が変化し、(実際に季節が変わっているのではない。)その季節に応じた温度を感じるようになったり、音が聞こえるようになる。

また、エネルギーの粉末が目に付着した生物が本体の10m以内にいる場合、本体が見せたい景色をその生物に見せることができる。

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