第3話 第二話 覚醒
「な、なんだよ…これ…。」
街を襲った男がいるビルの屋上に向かって走っていた一真は目の前の光景を前に立ち止まる。
目の前にはまさに地獄絵図とも言っていいほどの死体の山が転がっていた。
腹部が裂け内臓が飛び出ていたり、首を掻っ切らていたりなど殺され方は様々で老若男女関係なく殺されていた。死体の中には同級生の顔もあった。いつも通るパン屋のお姉さんいつも忙しそうに通勤していたサラリーマンも頭から脳を垂れ流しながら死んでいた。
「全部‥あいつらがやったのか…。」
一真はビルの屋上に立つ男を見上げ、再び死体に目をやる。
「ふざけんなよ…!いきなり現れて一体なんなんだ…!」
一真はビルに向かってさらに奥へと進んでいく。
ビルに近づけば近づくほど異臭は強くり、死体の数は増えていく。
(絶対に仇はとります!)
一真は死体を眺めそう心の中で誓った。
ついにビルに着き一真は中へと入っていく。エレベーターが故障しているため階段を登って屋上を目指すと、階段には突入したのであろう警察官の上半身と下半身真っ二つになった死体があちらこちらに散らばっていた。
「…待ってろよ野郎…。」
ついに一真は屋上の扉の目の前に立つ。
「この先にあいつが…。」
一真は震えながらドアノブに手をかける。
「…ふぅ。」
一呼吸すると、ドアノブを回しドアを開けた。そこには一真の住む旭町を襲った男が立っていた。男はドアの開く音に気がつくと振り返る。
「お前が…全部やったのか…。」
一真は男を怒りの表情で睨む。
「…あぁ、そうだ…。」
男は短く答える。
「何故だ…。なんでこんなことをする…!」
一真は目の前町の人たちの仇を目の前に必死に怒りをこらえる。
「ある男を探している…こうすればその男は必ず来る…それこそが俺が支えるお方の御心なのだ…。」
男は落ち着いた口調で淡々と理由を説明した。
「…お方?…ある男?…だと?そんなことのためにか…」
一真は声を震わせながら歩みを進める。
「そんな…そんなくだらない理由のために…!!この町の人たちが何人死んだと思ってるんだ!!ふざけるなよ!!お前は…!!ここで殺す!!」
そう言って走り出し拳を掲げる。
「奴を呼ぶには十分やった…。もう殺す必要はない…自分から死ににいくような真似をするのか‥?」
「黙れ!そんなことは問題じゃない!この町の人々の仇は俺が打つ!」
ついに拳が当たる間合いにまで入り一真は拳を男に向かって振りかぶる。
「話のわからん奴だ…貴様には力の差を見せつけてから殺す必要がありそうだな…。」
男は避けもせず仁王立ちする。
そのまま男は顔に一真の拳をまともに食らうが微動だにしない。
「なっ…。」
「これが俺とお前の差だ…お前には力がない…無力だ…誰も守れない。仇も取れない。それなのに志だけ一人前だとさらに始末が悪い…。そんなのはただ誰かの足を引っ張るだけだ。何も生まれない…お前のような奴は死んでも無駄死にするだけだ…。」
そう言うと男は一真の腕を右手で掴み、細い木の枝を軽い力でへし折るように簡単に折ってみせた。
「うぎゃああああああああああああ!!」
一真はあまりの痛みに悲鳴をあげる。
男の指はついに一真の腕に食い込む。
「お前は…無力だ…。」
男はそのまま一真を持ち上げるとドアに向けて勢い良く投げ飛ばした。
一真はドアにものすごい勢いで体を強くぶつけドアと一緒に階段から落ちていった。
「死んでいるか…もしくは生きていたとしても絶望して動けないか…。」
そう言うと男は再び街に目をやる。
(遅い‥奴が全く姿を現さん…情報ではここにいるはずだ‥何処かに隠れているのか…?)
「もう少し殺しておくか…。」
男がそう呟いていると。後ろから物音が聞こえ、男は振り返る。
「…はぁ、本当に志は一人前のようだな…」
男は呆れる。
「おまえは…心が痛まないのか‥?どうしてそんなに簡単に人が殺せるんだ‥?」
一真は大粒の涙をこぼしながら男に問いただす。
「さっきも言っただろう。あるお方の為だ…。その方の為なら殺しも躊躇わない。そもそも…別お前らが痛いからといって俺が痛いわけじゃない…やめる理由もない。ただそれだけだ。しかしなぜお前はそんなに苦しそうに泣いている?誰がが死んでも別にお前が痛い訳ではない…。」
「いてぇよ…心がいてぇ…ものすごく痛い。だから泣いてんだ。ただそれだけだぜ…。お前にはそれがわからないのか‥?本当に血と涙はあるのかよ‥?」
「無いな。そんなものはとっくにどっかにすてた…。話は終わったのか?なら、お前も終わらせてやる…。」
そう言うと男は目にも留まらぬ速さ一真に近づき一真の頭を鷲掴みにし、無理やり前のめりにさせ膝蹴りを食らわす。
「ゔっ…!!ゲボァ!!」
一真は思わず嘔吐してしまう。
男はそのまま頭を掴んで振りかぶり頭部を地面に叩きつけた。
「あ…あぁ…。」
一真の頭部から大量に血が溢れ出て来る。
「今ので生きているのも驚きだが…。その状態じゃそのまま出血多量で死ぬだろうな…。」
男はビルから降りようと戻ろうとする。しかし———————————
「大したものだ…。よもやしがみ付く気力がまだ残っているとは…。」
掴まれている自身の足を見て男は感心する
「これ以上…町の人達を…殺させて…たま…るか…。」
一真の目は霞んでいて意識が無い。
「ここまでくると、鬱陶しすぎて感心するな。もう終わりにさせよう‥。」
すると男は手を手刀の形にし、そのまま一真の背中に突き刺さす。
「ガハッ…!」
一真はついに手を緩める。
「時期に死ぬ…。そこで人々の声を聞いていると良い…。」
男はビルから降りようと再び振り返り、歩き始める。
(ダメだ…もう…体が動かない…。ちくしょう…あいつの言う通り俺は無力だ…。力があれば…みんなを守れるのに…仇を取れるのに…。)
一真は薄れゆく意識の中、町の人々や家族、健二のことを思い出しながらそう思った。
(力が…欲しい…みんなを…全てを守るために…必要なんだ…動いてくれ俺の体…力をくれ…。)
(俺は…全てを…………)
(守る……!!)
「…!?」
男は後ろで何か光っている子に気づく。
(奴は…もう動けないはず…まさか……!!)
男が振り返るとそこには光に身を包ませた一真の姿があった。
「『超音速(スーパーソニック)』………。」
一真はそれだけを言うと歩みを進める。
吉村 一真は、覚醒した。
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