第2話 第一話 何かが壊れる音
——————千葉県千葉市中央区旭町——————
2019年4月10日 AM7:50
「あーー学校行きたくねー。」
食卓のテーブルに並べられたトーストを手にとって食べながら吉村 一真(よしむら かずま)は愚痴をこぼす。
「あら、何かキツイことでもあるの?」
一真の母親、吉村 恵(よしむら めぐみ)は洗濯物を取り込みながら一真に質問する。
「いやぁ、学校って言えばまず勉強がキツイよね。」
一真は微笑しながら答えた。
「学校ってそうする所でしょ。」
「それに眠らないように頑張らないといけないしね。」
「全部できて当然でしょ。」
恵は苦笑いするとテレビを見て一真につたえる。
「それにしても早く学校行かなくていいの?今日は始業式だからいつもより早いんじゃなかったっけ?」
ガタン!!
一真は早く起きなければいけなかった理由を思い出し椅子から勢いよく立ち上がった。
「そうだった!!やばい早く行かないと!」
一真はトーストを口に詰め込むとそさくさと準備をして家を出る。
「ちょっとお弁当忘れてるわよーって聞いてないわね。」————————————————————————
「一真の奴おせぇな。まさかこの日に限って寝坊か?だらしねぇなぁ。」
早乙女 健二(さおとめ けんじ)は体育館中をキョロキョロ見渡す。すると体育館のドアから一人の青年が急いだ様子で入ってきた。
「すいません遅れました!今から列に並んでもいいですか?…はい、わかりました。ありがとうございます。」
一真は息を切らしながらも列の中へ入って行った。
(どんだけ飛ばしてきたんだ…。)
健二は少しだけ驚く。
校長の有難い話を居眠りしながらも始業式を終えた一真と健二は共に教室へと戻る。
「いやぁ、始業式って長い休みを経て来るから印象強いし忘れないと思うんだけどなぁ。」
コンビニで買ってきたお茶を飲みながら健二は話す。
「朝起きたばっかで寝ぼけてたんだよ。」
そう言いながら一真たちは校舎へと入り階段を登って二階へと上がる。
「そういやここ最近物騒だよなぁ。ニュース見たか?この街でバラバラ殺人があったらしいぜ。」
「え、マジか。」
一真は歩くスピードを落とす。
「あぁ。死体はドブに入ってて四肢はそれぞれ別の場所で見つかったそうだぜ。それに死体によってはいくつか内臓が無くなっていたらしい。」
「…。」
一真は冷や汗をかき、自分の街でそんな事があったのかと恐怖した。
「俺たちも気をつけねぇとなぁ。じゃ、俺は教室向こうだから。」
そう言って健二は廊下の奥へと進んでいく。
「...あぁ。」
一真はそう短く返事すると自身の教室へ入っていた。————————————
ここは旭町のどこかのビル。ビルの中で男は携帯で誰かと話していた。
「…あぁ、計画は順調だ…今日の5時からこの旭町を『制圧』する…4時半くらいにはお前も合流しろ…あぁ、わかってる。」
プツッ
「出て来い…石川 本郷(いしかわ ほんごう)…あのお方のために…。」
そう言うと男はビルの窓越しから町を見下ろした。————————————————————————
キーンコーンカーンコーン
「よっしゃー!やっと終わったー!」
一真は背筋を伸ばす。
「お〜い一真〜早く帰ろうぜ〜。」
健二が教室のドアから覗いて一真に向かって話しかける。
「おう。待っててくれ。」
そう言って一真は帰宅の準備をしようとするが手を滑らせ財布を落とし小銭を散らばせてしまう。
「あ!しまった!」
急いで小銭を取ろうとする。しかし————————————————————————
「あれ?」
一真は散らばった小銭が減っていることに気づく。すると、一真の頭上から声が降ってきた。
「はい、どうぞ」
目の前で手を開き小銭を渡した彼女は茶髪に黒い瞳を光らせ一真見つめる。
「あ、ありがとう…え〜と…天鬼さん。」
一真は立ち上がり目の前の天鬼 華恋(あまき かれん)に向かって会釈する。
「あ、そう言うのはいいわ。私借りは作りたくないのよ。それじゃあさようなら。」
そう言うと華恋はそのまま教室から出て行った。
「さ、さようなら…。」(変な奴…。)
一真がそう思っていると、教室の外から声が聞こえてくる。
「おーい!遅いぞ〜!」
「今行く!」
一真は準備をすませると教室を後にした。————————————————————————
「さっきお前と話して教室出た女子って二ヶ月前くらいに転向して来た天鬼 華恋じゃねぇのか?」
帰る途中で健二が思い出したように話しかける。
「そうだけど…なんでだ?」
「話によるとあいつ相当な金持ちっぽいぜ。千葉寺町ででけぇ豪邸ができたらしいんだけどそこにあいつが住んでるらしい。」
「つまり何が聞きたいんだよ。」
「いや、お前金持ちと知り合いなのかなーと思ってよ。」
「いや知り合いじゃねーよ。ただ小銭拾ってもらっただけだぜ?」
「なぁんだ。転校生と偶然にも恋に落ちるってことはねぇのかぁ。」
健二は少しだけがっかりする。
「俺に何を求めてんだよ…。」
一真は困ったように苦笑いした。
「あ、そうそう今日の朝したニュースの話なんだけどよ。」
「お、おう。」
一真は少しだけ身構える。
「後で調べてわかったんだけどこのバラバラ殺人…前にも20件くらいあったらしいぜ。手口も全て同じだ。そして犯人はまだ捕まっていない。手がかり1つ掴めていないらしいぜ。」
「なっ…そんだけ事件起こしてんのに手がかり1つも掴めていないのかよ!?」
一真は健二の言った事が信じられず驚く。
「俺も驚いたぜ…許せねぇけどよ…俺に何が出来るのかいくら考えても答えがでねぇ…この街で罪のない人が何人も殺されてると思うと…どうしようもねぇ気持ちになるんだぜ…。」
健二は拳を強く握りしめる。
「俺も許せねぇ。この街には思い出がたくさんあるんだ。その街でそんなことをする奴は許せない。」
一真も健二の言葉を聞き自身の胸の内を明かした。
その時、一真の携帯の着信音がズボンのポケットから鳴り響く。
「あ、母さんからだ。」
一真は携帯を取り出し電話に出た。
「もしもし。」
『一真!あんた今どこ!?』
恵は焦った様子だ。
「え…学校の帰りだけど」
一真は戸惑いながらも答える。
『帰ってこないで!!この街から一旦出なさい!!』
「…は?な、なんでだよ?」
一真はいきなり出てきた言葉にますます困惑する。
『街が今襲われてる!!』
「ま、待ってくれ言ってる意味が——————————————————。」
その時、後ろから大きな爆発音が聞こえる。
「ー!?な、なんだ!?」
一真が振り返ると後ろのビルの真ん中が爆発し、上部分がこちらに落ちて来ようとしてきていた。
あまりにも唐突に事が起きたため一真はまともな思考が出来ずその場に立ち尽くしてしまう。
『一真!?どうしたの!?』
ビルはついに目の前まで迫る。
「一真!しっかりしろ!」
そう言って健二は一真に突っ込み一真抱えてビルを避ける。
「す、すまん健二…。」
「いや、そんなことよりも周りを見ろ一真!」
「なっ…。」
周りを見ると周りは炎に包まれ、ビルは半壊し、人々は悲鳴をあげ逃げ惑っていた。
「ありえない…今の一瞬でこんなことに…?」
「あの野郎がやりがったのか…。」
健二は空を睨む。その先には男がビルの上に立っていた。
「は…はぁ!?なんだあいつ!?」
「わかんねぇ…けどよ…あいつがやりやがったっぽいぜ…涼しい顔しやがって…許せねぇぜ野郎…。」
健二は歩みを始めようとする。しかし——————————————————————
「君達がどうにか出来ると思ってるのかい?」
炎の向こうから男の声が聞こえる。
「なんだテメェ…!」
健二は威嚇する。
「君達にどうにか出来る問題じゃあないって言いたいんだよ。君達ただの人間にはね。」
「まさかあいつの仲間か?」
一真が質問する。
「うーんまあそんな感じかな。とりあえずどーせどうにも出来ないと思うけど出来るだけ可能性は減らしときたいから今から君達死んでみる?」
「こいつ…舐めやがって…。一真、このふざけた野郎は俺がぶっ飛ばす!お前はあいつを止めてくれ!」
健二は怒りのこもった声で一真に叫ぶ。
「わ、わかった!気をつけろよ!」
そう言って一真は空にいる男の方へと走っていった。
「はぁ…やっぱりわかってないな…君達に僕等は倒せない絶対にだ…。」
「言ってろ…てめぇのそのスカした顔面に叩き込んでやる!」
そう言うと健二は男に向かって走り出す。
「やれやれ…君アレだろ?馬鹿だろ?困るんだよなこれだから馬鹿は…でも僕は平等思想なんだ…。楽に死なせてあげるよ。」
男はそう言うと健二に向かって手をかざす。
「!?」(こいつ…頭おかしいのか?ファンタジーじゃあねぇんだぞ?だけど…何か危険を感じる…こいつ…。)
「じゃあね。」
すると健二は男の手から何かを感じ取った。
(こいつ…!!やばい!!)
健二はすぐさま横に避ける。その瞬間、健二の視界は暗闇に包まれた。————————————————————
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます