第20話 エレベーターの幽霊

俺が56歳の時の話。

場所は神戸の甲南病院。


俺が56歳のときの12月24日に母親が膵臓癌で死んだ。


この話はその前の1週間の間、ベトナムから帰国して母親を看病したときに起こったことだ。


甲南病院は6階建ての病院である。

戦前からあるレンガ造りの古い病院である。


この病院に母親は4階に入院していた。


朝、看病のために1階からエレベーターに乗ろうとしたらエレベータは今まさに半分しまろうとしていた。


俺は「すいません」と声を出して走っていった。


今まさに閉まろうとしているエレベーターの隙間から女性の足と赤い靴が見えた。


エレベータは一旦完全に閉まったので俺は「チェッ、間一髪だったな。次のエレベーター待ちだな」と覚悟した。


しかし中の女の人が俺の声に反応して急いで「オープン」のボタンを押してくれたのであろう、エレベーターが再度開いたのである。


「あ、ありがとうございます」と俺は女の人にお礼を言いながらエレベータに入ったのであるが、そこにはなんと誰もいなかった。


確かに閉まる寸前に、女性の足と赤いハイヒールを見たのは間違いない。


何よりもし無人なら一旦しまったエレベーターの「開くボタン」を誰が押したのであろうか?


俺はさっきまで幽霊が乗っていたエレベーターにそのまま1人で乗り込んだがやはり少し怖かった。


不思議な出来事であった。


落ちなし

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