第21話 白い犬ひいたぜ

大学4年生の夏の話


俺は自分の車に乗って国道2号線を西宮方面から神戸に向かって走らせていた。


その道中、芦屋川という川がありその川を越えて下りの坂道を走っていた時の事である。


はこの辺は芦屋市という全国的に有名な高級住宅街である。


俺が通過した交差点は「業平」の交差点と言って万葉歌人で有名な在原業平の名前をとっているそうである。


その交差点の青信号を時速50キロ位で通過して坂道を下っている頃に、いきなり左側の歩道から子グマくらいの巨大な白い犬が国道に走り出てきた。


俺はとっさに「これを交わそう」と思ったら隣には並行して車が走っていたのでハンドルを切ることができるなかった。


「どんっ」と鈍い音がして犬が俺の車に激突したような感覚がした。


「やってしまった」

と俺は思った。


当たった場所は位置的に言うと車の左前輪の後ろのほうだ。


しかし幸い、車が何かを乗り上げるような感覚はなかったので接触だけで済んだらしい。


俺は「しまった、犬を引いてしまった」と思い周りの走ってる車を見ると、明らかに俺が何かを引いたような顔をしている。


窓越しに見ると運転手が親指を立てて「うしろ、うしろ」言ってゼスチャーをしていた。


徐々に速度を落として国道の左肩に車を止めて俺は車を降りた。


芦屋市という場所柄、「さぞかし高い犬だろうな」と腹をくくった。


しかし後を振り返ってみても犬の死骸が見当たらないし、そもそも2車線の道路を何事もなかったように普通通りに車が走行している。


あんなでかい犬が当たったのであれば、弾き飛ばされたとしてもかなり目立つのであるが歩道側にもそのような形跡は見当たらなかった。


「ひょっとして俺の車が巻き込んでるのか?」と車体の下をこわごわと覗き込んだが犬の姿を見つけることができなかった。


それどころか車体には血の一滴もついてないし犬の白い毛も1本もついていなかったのだ。


先ほど激突したと思われる場所まで歩いて確認しに行ったがそこには血痕もないし犬そのものもなかった。


正直ほっとした思いで俺は車に戻った。


現場をこのまま去っていいのか迷ったが、タイミング的にこの事故を見たであろう道を歩く人々も俺に全く無関心だったのでその場を去ることにした。


あの音と衝撃は一体何だったのだろうか?


しかも隣の車からはゼスチャーから判断して、同じ光景が見えていたらしい。


近隣の方で同じような体験に遭われた方がいたら教えて欲しい。


相変わらずオチ無し

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