第15話 幽霊からのさようなら

大阪高槻市にある大阪医科大学、付属病院。

俺が31歳の時の話


ここでは俺の長男がはしかによる髄膜炎という重病にかかって3カ月間ほど入院したことがある。


3カ月間、毎日看病をしていると隣の病室や向かいの病室等の方々やそのご家族と仲良くなるものである。


ある時、夜中に隣の病室から「グエッー」と言う大きな声がして、看護婦がドタバタ走り回る状態になったことがある。


俺は「一体何が、起こっているのか?」と思った。


一夜が明けると、その患者の家族がたくさん集まってきた。


隣の患者は末期のガンだったのであるが、昨日大きな声を出した後に死んでしまったそうである。


「人間の死なんて簡単に訪れるものなんだな」とその時思ったものである。


彼とは当然隣の部屋であったので、何度も顔を合わせたり雑談をしたりする仲であった。


気のいいおじいちゃんであった。


問題はその家族が死体を引き取りに来たときの話である。


たくさんの人たちに囲まれてストレッチャーにのせられた「おじいちゃんの死体」は、大きなエレベーターに乗って下に降りていった。


「ああ、お別れだな」

俺は椅子に座りながらその光景をぼんやりと見ていた。



死体を乗せて 4階から1階にエレベーターは下がって行った。


しばらくすると、もう一度エレベーターは4階に戻ってきた。


エレベーターの中にはストレッチャーに乗ったおじいちゃんの死体だけがあったのである。


一緒に降りて行った付き添いの人は全くいなかったので俺は不思議に思った。


常識的に考えて付き添いの家族だけがエレベーターから降りて、死体だけを残して上に行かせるだろうか?


しかももっと不思議なのは、そのまま扉が閉まって自動的に一階に降りていったのである。


誰が一階に行くボタンを押したのだろうか?


俺は正直、自分の息子の安否の方で頭がいっぱいだったので「怖い」とか言う気持ちは全くなく「ああ、おじいちゃんが最期の挨拶しに来たんだなぁ」と素直に思った。


オチなし

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