第12話 白浜の小人

大学4年生の時の話。


俺たちは麻雀仲間4人組で毎年、和歌山県白浜に麻雀合宿をやっていた時のことである。


この合宿は毎年恒例で行なっていて、4人がそれぞれ所持金10万円を持って朝はパチンコ、昼は魚釣り、夕方はミニゴルフ、夜は麻雀と全て金を掛けて誰かがパンクしたら帰るというルールであった。


だから帰る日は最初から決めていない。


いかにふざけた大学生活を送っていたかがわかるだろう。


ご存知のように白浜と言う場所には、自殺の名所である「三段壁」と言う太平洋に突き出した大きな断崖絶壁がある。


高さは2-30mはあろうかという断崖だ。



夜中の10時ごろだった。


俺たちは飯を食って酒を飲んだ後に「せっかくだからギャンブル三昧だけでなく、名所の三段壁を見に行こう」と言うことになって車を走らせた。


白浜に何度も来ているが観光地巡りをしたことがなかったからだ。


もうすぐ三段壁に着くと言う手前のところで運転手はなぜか車を急に止めた。


「何や、急ブレーキかけて?」


「おい、ちょっと前を見てみろ」と奴は言う。


運転手以外の俺たちは酒を食らって半分寝ていた。


すると車のヘッドライトは奇妙なものをとらえていた。


光は50メートルほど向こうの白いガードレールを捉えているのであるが、 7人から10人ぐらいの人間の黒い影がガードレールに沿ってよちよち歩いているのである。


問題はその大きさである。


歩いている全員がガードレールの下の段位の身長なのである。


どう見ても40センチから50センチ位しかない。


俺たちは車を止めてその人間が近づいてくるのをじっと見ているしかなかった。


「なんや、あれ?」


「わからん、少なくとも人間やないな」


「小人やな」

などと会話していた。


するとしばらくと、後ろからエンジン音がして、別の車がやってきた。


目的は、やはり夜の三段壁見物であろう。


全く意味のないところで俺たちの車が道に止まっているのを「怪しい者を見る目つき」で奴らは通過したのであるが、まもなく奴らも急ブレーキをかけて停止した。


あまりの急ブレーキのため車は蛇行して黒いブレーキ痕を残して停車した。


タイヤの摩擦熱で煙りが立ち登っていた。


奴らは俺たちよりも相当近い距離で「あれ」を見たはずである。


「あれ」との距離は20-30mくらい。

だから細部まで確認したのであろう。


奴らは慌ててギアをバックに入れて「ギヤギヤギヤ」と音をさせてUターンをして俺たちとすれ違って逃げるように去っていった。


運転手の表情は、必死に真っ直ぐに前だけ見て俺たちのことはすでに眼中にない。


やはり何かがいたのは間違いない。


俺たちもUターンしてやつらを追いかけるようにして急いでその場を立ち去ったのは言うまでもない。


あの影はなんだったんだろうか?

幽霊なのか?

物の怪なのか?

宇宙人の団体なのか?


オチなし

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