第7話 透明な麦藁帽少年

大学2年生の夏の話。


俺は同じ大学の麻雀仲間4人組と、高知県へ車で旅行に行った。


これはその時の話である。


時間は夜中の12時ぐらい。


俺たちは愛媛県から高知県まで山越の道をドライブしていた。


ゆっくりと気ままな旅である。


車種はホンダのアコード・オートマチックであった。


ちなみにこの時に乗っていた4人は、全員柔道のヘビー級の体重がある猛者ばっかりだった。


山道に入る頃になぜか「おい、もしこの山道で幽霊が現れたらどうする?」と言う話になった。


「一人だったら怖いけれども、これだけガタイのでかい人間が4人いるんだから勇気を出して捕まえようぜ!」


「おう、幽霊捕まえて売って一儲けしよう!」

と言う話になった。


威勢の良い話である。


延々と続く山道を2時間ほど走っていたら、単線の線路がある踏み切りが向こうに見えてきた。


当然この時間なので、電車なんて通るはずもない。


ひっそりとした遮断機が見えてきた。


すると俺は突然「何かこの踏切は通らないほうがいい」ような予感がした。


同時に寒気もした。


「おい、この踏切やばいんとちゃうか?」と俺が言ったら4人ともが同じことを考えていたらしい。


「俺もそう思ってたとこや」

「なんか出そうやな」

と言う声が上がった。


しかし左右に迂回路もないし、戻るとなったらさっきの山の中をまた2時間ほど戻らなければならないので選択肢は1つしかなかった。


ゆっくりとアコードは踏み切りの前に近づいていった。


すると同時にみんなから「あっ」と言う大きな声が出たのである。


踏み切りの向こう側に、黒い影のような麦わら帽子をかぶった子供が立っている。


この時間に麦わらの子供なんて言う組み合わせは、結論は1つしかない。


ルフィーだ。

違う


「でた!」と思った。


俺は4人乗りの車の左の後ろに乗っていた。


麦わら帽子は渡り終わった踏み切りの右側に立っている。


後から聞くと釣竿を持っていたとの意見もあった。


アコードがゴトゴトと音を立てて踏切を渡った。


8つの目は麦わらに釘付けだ。


急に全身でなにか「悲しい」感じを受けた。


幸い俺は1番麦わら帽子とは距離が遠いところにいたので、間近で直視することはなかったが運転手のやつは手が届く位のところにいたらしい。


先ほど「もし幽霊が現れたら全員で捕まえようや」と言う約束はどこへやら、運転手は堪り兼ねて「うわっ」と大きい声を立てながらアクセルを思いっきりふかしてさっさと立ち去ったのである。


しばらく距離を置いて車は止まった。

踏切からは50mほどの距離だ。


俺たちは4人は後ろを向いてもう一回確認すると、やはり黒い影がまだ立っている。


しかも間近で見た運転手の奴が言うには、「そいつを通して向こう側の明かりがみえたのであいつは透明だったと」言っていた。


俺たちはその土地を逃げるように、一気に通過してしまったので、その場所で過去に何か悪い出来事があったのかどうかなど聞く時間もなかった。


しかし恐ろしい経験をした。


結論

ガタイのデカいのが4人いても捕まえるのは無理。


オチは無い

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