第6話 夜中に泣く人形

高校2年生の夏休みの時の話。


同じクラスで、仲良くしていたグループがあった。


男3人、女3人のグループである。


俺たちの男グループは3人で四国方面に遊びに行った。


女グループの3人は長野県に遊びに行ったらしい。


2学期になって「お互い行った所のお土産を交換しようぜ」と言う約束のもとに各自のお土産を学校に持ってきて交換をした。


俺達は宇和島の闘牛の人形を奴らにプレゼントした。


彼女たちは長野県で買ったと言う、小さな白樺の木に彫った円筒形の小さな人形をプレゼントしてくれた。


イメージとしてはインディアンのトーテムポールを短くしたような感じだ。


それを家に持って帰った俺は、ガラス戸のある本棚の1番上に飾っていた。


夜間、勉強していた俺はいきなり「カリカリ」と言う音が聞こえてきたので「ゴキブリが入ってきたのかな」と思った。


実際、俺の本棚の後ろにはよくゴキブリがいたから似たような音がするのである。


コックローチを構えてゴキブリを探していると音は本棚の1番上から聞こえてきた。


「なるほど上に逃げたのか」と思ったがその音はガラス戸の内側から聞こえる。


そこにまでゴキブリが入ることがあんまりなかったので「少しおかしいな?」と言う気がした。


そしてガラス戸を開けるとカリカリと言う音がさっきより大きく聞こえてきた。


音の犯人を探すべくあちこち探し回ったが、目の前にある今日もらってきた白樺の人形がどうやら犯人のようである。


俺は最初、「白樺の木の中に虫でも入ってるのかな」と思い虫の入りそうな穴を探したがそんなものもない。


試しに思いっきり人形を振ってみたが、虫も出てこなかった。


ただ、このような動作をやってる間は「カリカリ」と言う音がしなかった。


「まぁ、気のせいだろう」と思ってもう一度ガラス戸を閉めて勉強に集中したらまたもや同じ音が聞こえてくる。


俺はこの音をテープに録音した。


そして次の朝そのテープを学校に持っていき、この人形をプレゼントしてくれた女の子たちに「お前ら、この人形やばいとこで買ったんとちゃうんか?」と尋ねた。


そしたら「なんで?」と聞くのでさっきの話をしてやって、なおかつテープを回した。


「な、変な音してるやろ。カリカリ言って」


「ほんとだねぇ」


「不思議だなぁ」

とか勝手なこと言ってる。


で、この話が結構クラス内で広まってしまい、その日から「人形そのものとテープを一緒に貸してくれ」と言うリクエストが相次いだ。


気前のいい俺は、全員に貸してあげた。

貸した全員が「カリカリ」の音を聞いたそうだ。


1週間ほどして俺は人形の解体を決意した。


「今誰が借りてるんだ?」

と聞くと

「誰も借りてない」

との返事。


結論から言うと、人形も録音したテープもどこかに行ってしまって無くなってしまったのである。


これも落ちなし

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