第4話 ヨーヨーの糸

中学2年だった俺は、当時日本中で流行っていたコカ・コーラの模様が入った「スーパー・ヨーヨー」に凝っていた。


このヨーヨーは同世代なら「ああ、あれか!」と理解するくらい日本全国で流行していた。


単なるおもちゃのヨーヨーではあるが、いろんな高等技があって「ブランコ」や「犬の散歩」と言って高度な技を毎日馬鹿のように励んでいたときのことである。


ヨーヨーを下に「するする」と落としたら、そのまま糸が「ぶつっ」と切れた。


「あー、この糸は結構使ったから切れたんだな。新しいのにしよう」と思った俺はあらかじめスペアで買っておいた新しい糸と交換した。


そしてもう一度下にゆっくりと下に落とした。


すると新品の糸に変えたばっかりなのに、もう一度「ぶつっ」と音がして切れてしまった。


ヨーヨーはそのまま部屋の隅に転がっていってしまった。


「え?また、切れた?」


今まで何回も糸の交換をやってきてたのに、こんな事は初めての事だった。


この時はさすがに「おかしいな?」と思っていた。


このことは夕方5時位の出来事であった。


実はその日は、前日から俺の5歳のいとこが「心臓弁膜症」と言う病気を患っていて松山の愛媛大学附属病院で手術をしていた日であった。


執刀医は24時間奮戦したらしいのであるが、やはり5歳の子供には長時間の手術が耐えられなかったのであろう、手術は失敗したらしい。


俺のいとこは残念ながら5歳で死んでしまった。


いとことは四国の田舎に帰った時に一緒に遊んだ思い出がたくさんある。


というか世話をした思い出であるが。


後から聞くと、そのちょうど死んだ時間が夕方の5時ぐらいだったらしい。


いわゆる「虫の知らせ」である。


最後のあいさつをしに来たのかもしれない。


まぁ、たまたまヨーヨーの糸が切れた時間にいとこが死んだだけで、偶然と言えば偶然なんであろうが、やはり「世の中にはそういうことがあるんだろうな」と思った初めての出来事であった。


落ちなし

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