番外編 七夕 オリエ

今夜は七夕なので、オリエ目線で、番外編を一つ書きました。

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「1、2、3・・・」

 いま、オトエと、にいにたちと、かくれんぼをしています。

「・・・8、9、10、もういいかい」

「もういいよ」


 探すのは、あたしとオトエ。隠れるのは、にいにとカルメたちです。

「探すよオリエ」

「うん。探そうオトエ」

 あたしとオトエは部屋の中を探し始めます。


「レイコ見つけ」

 オトエがテーブルの下に隠れていたレイコを見つけます。


「カルメ見つけ」

 あたしはソファーの後ろにいたカルメを見つけました。


「あとは、にいにとブリジットだね」

「そうだね。ねえ、あそこ」

 あたしはカーテンのかげを指さします。

 オトエがうなずいて、二人でカーテンに近づきます。

「一二の三」

 二人でカーテンを引きはがします。


「ブリジット見つけ」

「見つかってしまいましたね」

「ブリジット、顔が赤いけどどうかした」

「いえ、どうもしませんよ」

 ブリジットは顔を赤らめ、もじもじしています。

 見つけられてしまったのが、そんなに、恥ずかしいのでしょうか。

 あとは、にいにだけです。


 だけど、いくら探しても、にいにが見つかりません。

 オモチャ箱の中やソファーの下まで探しました。

 それなのに、にいにの姿が無いのです。


 部屋の中に他に隠れられるような場所はありません。

 にいには、あたしたちをおいて、部屋を出ていってしまったのでしょうか。

 なんだか、悲しくなってきました。


「にいに、どこ」

 あたしが呼びかけます。

「にいにがいなくなっちゃった。にいに、にいに」

 オトエが泣き始めてしまいました。


「にいに、どこ、どこなの」

 あたしもつられて泣き出してしまいます。

「にいに、にいに」


「もうー。しょうがないな二人とも、僕はここだよ」

 そう言って、にいにがブリジットのスカートをめくって出てきました。

 にいには、ブリジットのスカートの中に隠れていたのです。


 さすがは、にいにです。

 木の葉をかくすなら森の中、人を隠すなら人のスカートの中ですね。


「はい、ツキヒロ様も見つかったし、次は、七夕の短冊を作りましょう」

「七夕?」

「短冊?」

「この紙に願い事を書いて、笹に飾るんだよ。そして天の河にお祈りすると願いがかなうんだ」

「お願いがかなうの。オトエ書く」

「オリエも書く」


「それではこちらの紙に書いてくださいね」

 レイコに紙を渡されましたが、あたしたちはまだ字が書けません。


「オリエ様とオトエ様の願い事は、私たちが代わりに書きますから、お二人は好きな絵をお描きください」

「わかった。好きな絵を描く」

「じゃあ、あたしは好きな、にいにの絵を描く」

「あ、ずるい。あたしも、にいに好きだもん。あたしも、にいにの絵を描こう」

「はいはい、描けたら言ってくださいね。願いごとを書きますから」


 あたしは一生懸命に、にいにの顔を描きます。なかなか思うようには描けませんでしたがまあいいでしょう。


 あたしはその短冊をカルメのところにもっていきます。

「オリエ様、願いごとはなんと書きますか」

 あたしは、カルメの耳元で小さくささやきます。

「わかりました。願いごとがかなうといいですね」

 そう言って、カルメは願いごとを短冊に書いてくれました。


 できた短冊は他の飾りと一緒に笹に飾りつけます。

「できた。じゃあみんなで天の河にお祈りしよう」


 にいにが手を合わせ星空にお祈りします。

 あたしも同じようにお祈りします。


 お星様お願いします。どうか、にいにのパートナーになれますように。

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