失敗の現実と成功の契約
――朝、教室にいなかった。だから、誘えなかった。
――二時間目後の長い休み時間は、友達と図書室に出かけてしまった。だから、声をかけそびれた。
――昼休み、教室にいたが、友達と話している中、割り込む勇気もなく、話しかけられなかった。だから、放課後に期待した。
――放課後、おれのクラスが帰りの会を終えた頃には、ミサのクラスはとっくに下校していた。だから、あきらめた。
だから、今日、何もできなかった。
――だから、だから、だから……
自室のベッドに寝転びながら、そうやって、いつも通りの言い訳を並べていた。
結局、おれは告白できなかった。告白するシチュエーションすら、作ることができなかった。自分の無能っぷりに呆れる。なんて無力なのだろう。
おれは、自室のベッドに寝転んで、自暴自棄になっていた。
もうすべてがどうでもいい。そんな気持ちになっていった。
しばらく、無気力なって、ぼーっとしていたが、なんとなくスマホを手にし、ぼんやりと眺めていた。過去に送られたLINEのメッセージを眺めたり、ネットを眺めたりしていた。何か、新しいゲームでもしようか。そう思って、おすすめアプリを見てみた。最初に出てきたのは「絶対契約 ~成功への道~」だった。
なんだこりゃ。
この謎のゲームの説明を読んだ。このゲームはシュミレーションゲームで、あらゆるシナリオに対応していて、それに対してプレイヤーはクリアを目指すものらしい。キーワードを打ち込んで、それに対応するシナリオができるらしい。
不思議なゲームだと思いつつ、おれは軽い気持ちで「こくはk」とキーワードを打ち込もうとして、消した。改めて「付き合う」と打ち込んだ。おれが望んでいるのは、単に「告白」することではない。それが失敗したら意味がない。「付き合うこと」に意味があるのだ。
すると、突然、スマホの画面が真っ黒に変わった。
始まったのだろうか、画面の中央に白文字が浮かんできた。
――絶対契約。あなたは絶対に成功する。
→「契約する」「契約しない」
二択の選択肢が表れた。おれは迷わず「契約する」を選んだ。
すると、スマホの画面上に次の文字が表れた。
――契約成立。意志の力に幸あれ。
その直後、おれは猛烈な眠気に襲われた。
現実が遠のいていく気がした。
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