第11話 蒼空の日記(そらのきおく) 続編 ―封鎖海峡― より『リスタート』

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 -ナレーション-

ここは人類の世界ではない。



スターシード(星の種)計画。

自分たちは、地球からこの星へ来た。


人類版図を拡大するために、他の星を地球化する、異星地球化テラフォーミングシステムを携えて、この世界へやって来たのだ。

移民団に先行した惑星改造のための異星地球化システムが、ナノマシンを散布し、地球化された星に、あとから到着した移民団の人々が住む。


この星では、異星開発局が想定したようには、世界が作られなかった。


灼熱の大地と雲海の嵐で、ほとんどのナノマシンが無力化、破壊されたからだ。



雲海から孤島のように顔を出す山々。


テラフォーミングされた場所はそこだけだ。


----


-物語を再会しますか?-

(Yes or No)


Yes



蒼空そら日記きおくを再開します。-




―本文―


「弾着確認。初弾、右に逸れた」


「次弾、今度は左だ!!」


「真っ直ぐ狙えるなら、苦労無いのに!

なんでっ、わざわざ曲げて撃つのかなぁ」


「腐るなよ、リサ!

正面は力場干渉で狙えないだろ!!」



長槍のような大砲を構えた格闘機(この場合は砲撃機か?)は、標的へ槍の穂先、弾頭の発射口を向けずに誘導弾たまを発射して、大きく屈曲させて標的まとに当てる訓練をしている。


その射線は物理法則を無視するような鋭角な軌道変更を行いながら目標へと迫り、掠めるように逸れてわずかに外れる。


「んもぅ!!」

リサの文句に苦笑しながらも、彼女へ指示を飛ばす。



慣れない機体での射撃は、なかなかに難しいようだ。

俺の機体もリサのものと同じで基本は格闘機グラップルデバイスだが、武装は無い。

代わりにごてごてした観測機器センサーを備えつけられている。

言うなれば、リサの機体のナビゲーション用随行機兼、彼女の盾という感じだ。


とはいえ、索敵のための機器を外せば、普通に格闘機としても使える。


牽制用の誘導弾ミサイルが無いから、戦闘は格闘戦フルコンタクト一択なのだけれど。



リサの砲撃機ガンナーは特別仕様で、

外観は格闘機だが、格闘機が本来持っている防護用の力場障壁を、長距離誘導弾頭射出機たいほうの物理的補強、加速機へと転用しているために、通常の装甲板フレームしか防護手段が無い。

まあ言うなれば、はだかの王さま状態だ。


この機体の突出した能力はただ一点。

盾を廃した分、矛の威力を高めている、それだけだ。


敵の射程圏外から超長距離の高速屈曲弾頭による誘導狙撃。

現状は単射シングルショットだが、二点射、三点射などの複数点射バーストショットによる破壊力、貫通力強化や、連続射撃フルオートによって複数目標が狙えるようになると、おそらく事情が変わってくる。


格闘機クラスの力場は単射では貫通が難しいが、二点射、三点射であれば撃ち抜けるであろうし、

力場の弱い戦闘機ファイターは、単射で十分に撃墜できるだろう。


開発が進み、複数目標の誘導追尾が可能となれば、単騎で敵の2ロッテどころか、戦闘機編隊グルッペ、スコードロンとも渡り合えるかもしれない。



将来的に、砲撃機こいつが対空戦の要となる時代が来ることになるかもしれなな。

今のところは脆弱やわな、二機運用ツーマンセルでしか意味の無い、欠陥兵器なのだが(笑)


ただまあ、今回の作戦では少し運用が違うのだ…。

有る意味この機体が作戦のかなめではあることは間違いないのだけれど…。



---


「力場無効化弾は真っ直ぐ飛ぶんでしょう?

私、そっちが撃ちたいなぁ」

またリサがそんな不満を言ってくる。


「ダ〜メ!!

リサは精密射撃が苦手だろ?、みゆきに任した方が間違いないよ」


「ちぇ〜っ」

リサは最近たるんでるな、気持ちが緩んだままだと死ぬぞ。



「みゆき、そっちはどうだ?」


「ん、問題ない」


「いけそうなんだな?」


「大丈夫!」



みゆきの機体、これもまた試験的なもので、該当する、似た戦闘機体が無いものだ。


初めて見る鈍重な動きをする機体で、

強力な力場を前面だけに備えていて、ひたすらデカく、重い。


そして力場干渉により、直接殴り合う格闘機の戦闘をヒントに作られた弾頭、『力場無効化弾』を複数搭載している。



みゆきの乗る本体は、

もともとは噂されていた、雲海探索用に開発途中だった機体、雲海潜航機ディープダイバーを転用して、

この作戦(オペレーション》のために、全面力場強化のみに特化させたものをベースに完成させた試作機のようだ。


簡単にいうと、みゆきの機体ダイバーが力場に穴を開けて、リサの機体ガンナーが弾を撃ち込む。そういう手順だと聞いている。

そのサポート役のおれの機体を含めた三機デルタ編成の小隊が、

今回の作戦のために、幾つか投入されることになるのだろうと思っている。



---


今回の作戦は、雲海から出現した謎の物体に端を発している。


『リバイアサン』という呼び名で囁かれていた、異星生命体の巨大施設なのかもしれないものが、初めて人の目に触れたのだ。


人類が勝手に利用している、異星の遺産である巨大な生産施設である『プラント』。

それよりもさらに巨大で、なおかつ移動体であるその建造物は、

重力に逆らいながら、雲海から敵の群島国家ポリスとの境界にほど近いところの、島の突端部分へと這い上ってきたらしい。



気が付いた時にはそこにいた、巨大な移動建造物リバイアサンは、

接近し調査、あるいは排除を試みる味方や敵の戦闘機体らの行動を、そいつが持つ大きく強力な力場により接近を阻み、自らの火器で破壊し続けたと聞いている。


敵も味方も多くの被害を出して、

群島国家ポリスは一時休戦を結んで、境界となる島の周辺は封鎖されていることになった。



最終的に、その巨大な何か這う建造物ものは雲海へと帰ったが、面倒な土産を残していった。

リバイアサンのように強力な力場を備えた砲台のようなものだ。


リバイアサンよりもだいぶ小さいが、同程度の力場を備えており、やはり強力な攻撃火器を備えている。

居座った砲台それのために封鎖はまだ解かれておらず、休戦状態はまだ続いているけれども、

新たな異星の建造物をなんとか手にするために、にらみ合っているともいえる状態である。



敵に悟られず、秘密裏に作戦オペレーションを実施するのだろうけれど、どうやって作戦を逐行するつもりなのだろうか?


おそらく、作戦が始まるにはもう少し時間があるのだろう。

現状では、力場無効化弾頭を複数用いた相互干渉でないと、あの砲台の力場に穴を開けるのは難しいだろう。


みゆきの射撃の正確さを当てにした訓練をしてはいるが、射撃精度はまだまだだ。

かなり機体を接近させないと難しい。

そのための強化した力場たてなのだろうが、みゆきにとってかなり危うい橋だ。



試作機ダイバーの操作を変われるように、おれも練習しておこうか?





続く

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