第11話 アルメドの気づかい
アルメドを近くの病室で休ませる。
宿屋が仮の病院となっていたため、アルメドのお金を頼りに部屋を貸してもらえた。
「ひどいやけどだ。それに――」
医者が深刻そうにつぶやき、匙を投げた。
「ワシではどうにもならなん。」
「医者だろ! どうにかできないのですか!?」
「無理だ。この闇そのものをどうやって治す。姿も見えないし、傷のあたりも触れない。この種族は魔法で治すのが一般的。科学の技術ではどうにも治せん」
そそくさと逃げて行ってしまった。
クソ。どうにかできないのか?
こんなときにユイがいれば…!
「アスタ…そこにいるのか…?」
気づいたのか?
「アルメド、ぼくはここにいるよ」
安堵するかのようにフーと息を吐いた。
「悪い。”レディー・ゴーランド”を逃がした。」
「そんなことどうでもいい! アルメド、アルメドが無事なら――」
「ひとつ頼みたいことがある」
なんだ!? と顔を兜に近づけた。
「治療によく効く薬草が〈ゴブリンの砦〉の近くに生えている。その場所にレイが連れていかれたと情報も得た。その場所に行って――」
ガクっと兜が転がっていった。
「アルメドォォォォオオオ!!!」
アルメドは再び兜も手袋も動かすことはなかった。
ぼくは、回復魔法≪ケアル≫でなんども回復続けるが、治っているのかも分からなかった。
「クソ…クソがあああ!!」
ぼくは自身を憎んだ。
目の前にして守れなかった。
こんなにあっさり死んでしまった。
ぼくがもう少し力があれば、きっと守れたはずなんだ。
ぼくは拳を握り、アルメドを背に「行ってくる」といい、宿屋を後にした。
****
しばらくして、大声が聞こえなくなった隣の病室に医者が何やらせ兜や鎧などを集めているのを見かけた。忙しそうに廊下を往復している。
俺は隣の病室にいるものだ。
仮にAとしておこう。
どうやら隣の病室の奴が酷いやけどを負い、亡くなったらしい。
ご愁傷様です。
俺は瓦礫で怪我が負い、足をやられた。
救助活動中になんというざまだ。同僚たちが哀れみで見てくる。
なんのために救助隊に志願したのだろうかと。これではけが人を増やしただけではないか。
明日あたりに動けるようになるとは医者が言っていた。
それまで待とう。
それにしても、隣の病室の奴は何を求めているのだろうか。
先ほどから鎧など装備品ばかりだ。これからマモノ退治にでも行くのだろうか?
さて、本を読んで明日に備えよう。
『あの男はなにか勘違いしていたようですな』
『仕方がありません。知らなかったのでしょうな』
『装備品を変えれば自然完治することのに、わざわざ医療薬品を使わなくても…』
『特殊な種族ですからね。それよりもアスタの後を追わなくては…』
『慌ただしいようですね。なにか急ぎでも?』
『彼は仲間を救うために〈ゴブリンの砦〉に向かったのですよ。我ながら上出来でしょう』
『上出来?』
『策略的にですよ。彼、強くなりたそうに見えたので、この機に強くなってほしいと思ったのです』
『はて、どういうことですか?』
『個人的にマーキングした人です。魔女協会は人手不足で、例の襲撃者のこともあって、一人でも力がほしいのです』
『なるほど…でも私から見てあの男はそうは…』
『今は弱くても、いずれ強くなります。なにせ、魔女協会に無理を言って同席させてくださったのですから』
真っ暗や病室のなか、隣からヒソヒソと聞こえてくる。
なにか怪しげな内容だが、俺にとってはどうでもいいことだ。
『出発は今日で?』
『ええ、ひとりでは危ないのでね』
『止めても行くのでしょう?』
『この度はお世話になりました医者殿』
『いえいえアルメド様に出会えたことはとても嬉しいですから』
アルメド…魔女協会の幹部だ。外出することは少ないと聞く人物。その人が隣で寝ていたのか。あのアルメドが怪我をするほどの相手とはいったい…。
『アスタくん喜ぶかな…あんな無装備(防具なし)で困っていたら、助けてあげなくてはね』
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