第7話
ランチセットが運ばれてきた。
パスタにピザ、サラダにデザートにドリンクと、お得感満載なセットだけど、食べれるかしら。
「おう、大体わかった。舞台も、メイン以外の配役も問題なく整えられたようだな。……んで、悪役令嬢はお前がやるとして、結局ヒロインはどうするんだ? お前の話だと、課題の条件達成に一番大事なのはヒロインだと思うんだが」
「えーと、ヒロインは『世界なし転生』で行こうかと思ってるんだけど……」
「あー……、アレか、あまりお勧めできんぜ? お前も『チーレム』さんの話、知ってるだろ?」
パスタもピザも、サラダまで含めて全部ラージサイズにしている『ギルド』義兄さんが、あたしの提案に渋い顔をした。うん、食べきれなかったらこっそり渡そう。
『世界なし転生』は、通常はリハーサルなどで使われる『五分前世界』の応用的なテクニックだ。
異世界転生を行う場合、単純に二つの世界を作らないと行けない上、世界間移動の方法や適切な人材の転生、など、新神には負担の掛かる要素が盛り沢山となる。
そのため、普通であれば、メイン世界の構築はしっかり作り込んだ上で、重要でない方の世界は『五分前世界』という、その世界の成り立ちや、過去の出来事まで含めて一気にデザインする構築法で作るやり方が一般的らしい。
ただ、これでもまだ負担は全然小さくならないし、設定矛盾などがあった場合、最悪のケースだと世界が自壊するリスクがある。
そこで、あたしの十期上で卒業した伝説の先輩、『転生チートハーレム』こと『チーレム』先輩は、
「つまり『転生元世界での今までの人生すべて、プラス、死んだあと、神様に会ってチートを受け取った』ところまでの記憶を、『神託』を使って生まれたばかりの幼児に転写する、と言う方法だね。元々の世界がなくても転生できる、画期的なアイディアだと思うんだけど!」
「教授受けがめっちゃ悪かったらしいなー、アレ。それじゃ異世界転生じゃ無えじゃんって、すごい剣幕で怒られたとか」
「でも、『チーレム』先輩も怒鳴り返したらしいよ。『トラックに轢かれるだけの元世界に何の意味がある!?』だっけ」
結局、『チーレム』先輩の訴えは聞き入れてもらえず、『二つの世界を作った上で、主人公が元の世界に帰還すること』が課題に追加されたそうな。
……ご愁傷様です、先輩。
ただ、ここであたしがこの方法を使いたい理由は当然あるわけで。
「自然発生する天然物のヒロインちゃんで、課題の条件を満たすのは、はっきり言って絶対無理!」
あたしはバーン、と机を叩いて力説した。
そうなのだ。
もう何万回と試して分かってたことだけど、普通の少女は、逆ハー断罪なんて起こさないし起こせない。
まずあれだ、逆ハーレムにならない。
庶民の娘さんの純真さや言動の飾らなさとかで、慣れてない貴族の坊ちゃんが恋に落ちるってのは、まあよく起きるよ。二人捕まえて、二股を掛けるって位までなら、現実的だし実際起きてるのを見てる。
でも、無自覚に五人同時は流石に無理。
これが『崇拝される』とかならいけたんだけどね。恋愛だとね、流石にね。
「そこはほれ、魔法やら体質やらで」
「うん。今回は神技で『奇蹟』が使えるから、それも試してみたんだけどね……」
魅了魔法やら、特異な体質やら、思いつく限りの手段を試してみたよ。
だけど、それが過去に出回っていたり存在している能力の場合、王国側と学園側で完全に対策が取られてる。うん、当たり前だね、王子とか入学するんだし。
同様の理由で、隣国のスパイやらハニトラも基本的には対策が取られてた。ぐぬぬ、まあ対策取られてないと王国の危機だしね。王国上位層の仕掛けた成人儀礼としてのハニトラ、とかはまあ行けそうかなとか思うんだけど。
逆に、対策が取られてない魔法とか、対策不能な能力。いわゆるチートだったらどうなるのかも試してみた。
世界が滅んだ。
「抵抗も対策もできない魅了体質なんて、歩く災厄でしかなかったよ……。最終的に王国民全員が洗脳されて、世界大戦とか起きてたし」
「お前は、付与する能力が大雑把すぎることをまず自覚しような?」
「あと、結局現地の子だと、降ってわいたチート能力をむしろ忌避する傾向にあったよ? これが権力とか財力とか、分かりやすい力なら使ってもらえるんだけどね」
「ああ、それはあるな、確かに」
チート能力は異端の証。良い塩梅で作れたと思った魅了魔法とか、最後まで使わないか、下手に使った結果、王国のお偉いさんに目を付けられて、魔女裁判とか実験体とかになったりしたしね。
あたしの使える、魔法関連の技術がお粗末すぎる? うん、そう思う。
なので、結論としては『この世界をゲームの世界なんかと誤認している、逆ハー断罪イベントを実行する不断の意志を持つ、チート能力に頼らない超絶有能ヒロイン』が必要なのだった。
当然、そんな人物の自然発生なんて絶対無理なので、転生技術でなんとかするのが一番良い、というかそれ以外の方法が無いと思う。多少のチートはサポートとしてあっても良いと思うけど、大事なのは意志だよ、意志。
異世界転生がテーマじゃないんで、怒られることはないでしょ、多分。
「いや、でもよ。実際問題、そんな超人、創れるのか? お前の話だと、いい塩梅の魅了能力なんかすら技術不足で使えないんだろうし。そうなると、素の実力で逆ハーもぎ取れるようなチートを創らないといけなくなるんだが……」
義兄さんのもっともな指摘に、あたしは首を振る。
「あたしにはそんな人を創るのは無理だよ。そもそもあたしには、真っ当な恋愛経験とか無いしね。だから……」
「じゃあどうする……って、お前まさか――」
あたしの言いたいことに気付いたのか、さっと顔を青褪める義兄さんの問い掛けに、力強く頷く。
そう。あたしじゃ無理だけど――
「――お姉ちゃんに頼めば、できるかなって」
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