第13話    急展開の始まり

あっという間に、神奈川県警の捜査一課はもちろん、多くの捜査員でこの事件を追いかけて2週間が経った朝早く、ビッグニュースが県警本部に入った。

 警視庁が、元交通大臣峰岸 昭信氏を逮捕したのだった。この逮捕ニュースは、江草刑事にとっては、しまったとも、ほっとした複雑な心境になっていた。

 江草刑事は、警視庁よりの出向だが、今の状況と条件ではかなり追跡が難しくなってしまっていた。なぜなら、彼なりにここ2週間程必死に行方不明の瀬野 義之と彼の同僚大北正雄がこの逮捕された峰岸 昭信氏の記事作成共同者であることがつかみとれ、かなりの高い確率で糸口がつかめると確信してきた矢先に起こった

ためである。

 その2週間とは、日内新聞社に何度か私服で直接出向いて外見上警視庁風味をかき消しビル近くの喫茶店で日内新聞社と親密な可能性のあった以前から親しい週刊向春の知り合いと情報収集に努めていた。なぜかというと、今現在の秋山刑事の捜査班の状況では、あまり日内新聞社の協力が芳しくないと耳にしたせめての江草刑事の作戦であった。江草刑事が長年警視庁で勤めてきた中でもよく過去にあったことだが表向きは警察に依頼しながら裏では闇に葬りたいという大企業の矛盾に多くの同僚たちが涙したことになりがちだったがためである。一週間の内前半は、喫茶店で店長が珈琲を出してくれ、

「ここ、よくすぐそこの日内新聞社の記者もよく来るの?」が始まりではあった。

忙しい中、その喫茶店で何度か週刊向春の成松 幸久編集員と推測にすぎない犯人捜しの談話をしていた。彼なりには、警視庁勤めが長かったがため、神奈川県警の雰囲気に馴染みにくい中、彼のストレス発散にもなっていた。そして、5日経って成松氏が快く協力してくれるということで日内新聞社の知り合いである戸枝 幸正に会い、江草刑事自身も編集員になっているということで色々と話した。そうこう6時間経った頃、協力者の戸枝 幸正が、成松編集員と江草編集員(実は刑事)のうまいコンビによる口合わせで瀬野記者と大北記者とが、おそらく1週間おきに亡くなる去年の暮れごろの1カ月前ぐらいから見慣れない派手な服を着た大柄な男に追いかけられていたと話した。そして、瀬野記者

と大北記者が元交通大臣峰岸 昭信の記事共同作成者であったことも分かった。電話で、おそらく、追いかけてきたその男は、情報屋の徳井 久雄と名乗っていたと話してくれた。そして、その日は、時をも忘れるほど疲れた長い一日が終わった。

 もうあっという間に日が暮れ、あまりにも考えられない収穫で江草刑事は、今回世話になった成松編集員に食事を奢るといい、夜の商店街に向かって行った。

 そしてその男を追い、連日問い合わせても所存不明だった中、あっという間に2週間が経った矢先に、この永田町も神奈川県警ビルもぶっ飛びそうなビッグニュース、元交通大臣峰岸 昭信逮捕であった。

 このビッグニュースは、神奈川県警本部の現在の捜査状況にもかなりの影響を与

えかねないので、緊急で捜査対策本部を3回目だが、捜査員全員に呼びかけられ江草刑事も秋山刑事たちも出席した。警視庁からも江草刑事の元同僚木崎刑事や捜査二課より三塚刑事や東林刑事が緊急で捜査に協力要員で来られていた。

 捜査状況の報告の時間になり、現場の刑事たちからも、色々な情報があげられていたが、有力な手掛かりには程遠かった。捜査対策本部の上席に居た本事件の責任者でもあった神奈川県警捜査一課課長の飯島さんの顔色にもあせりが見え隠れてしていた。その中、江草刑事が最近の捜査状況を報告にあげると捜査員一斉でどよめきが起こった。早速、上からの指示で、江草刑事は、警視庁グループと捜査を共にするようになった。捜査会議が終わるとともに、飯島課長より江草刑事に何度も感謝の言葉がかけられた。かなり飯島課長の以前の指揮系統うんぬんで、最近お疲

れ気味であった。江草刑事は、

「この事件を一刻も早く終わらせましょう。飯島課長、皆さんも同じです。頑張りましょう。」

と伝え、新たな捜査に向かった。

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