7話

サンドウィッチはサンドウィッチ伯爵が考案したらしい。

そうソフィーと話しながらサンドウィッチを食べた。

「私も行ってみたいなー演奏会。」

遠くの方を見つめながらソフィーは目を細めた。

「1枚あげれたら良かったんだけど…ごめんね?」

ソフィーは炭の着いた頬をかきながら気にしないでと笑った。

普通、演奏会には政治家か貴族ぐらいしか行けない。

やっぱり人脈とかそういった類のものは大切にしたほうがいい。

「そう言えば、この前フンボルト大尉が進級の話をしてたよ!」


そう、進級とは。

ただ位が上がるだけであるが、海軍は下位の兵を必要としないため、少尉から始まっている。

海軍の場合は、それに伴い艦を改装する。

それは戦艦になったり潜水艦になったり空母になったり……

まあ、様々なのだが。

「何になるんだろう私。」

お茶を少し手に垂らし色んな艦を作りは消しを繰り返した。

「それだけ魔力があるんだもん。きっと大きい艦だよ。それに、私が改装するのよ?きっといい艦にするわ。」

私の手を握りにっこりと模範的な笑顔で笑った。

私の歪な笑顔とは違う。

こういう所に惹かれてしまうのだ。

自分のダメなところがくっきりと見えた。


夜、中庭に出た。

大きな月がぼんやりと滲んでいた。

毎日の疲れや、失敗。

今日じゃなくてもいいのに、何故か悲しくなった。

全部が目に集まってこぼれ落ちた。

母さんと父さんに会いたい。

ここに来て今までちっともそんなこと思わなかったのに。

朝食のちょっと焦げたパンとか、山で取れたラズベリーとクランベリーのジャム。

それに、レーズンクッキー。


物音がして咄嗟に顔を上げるともじゃもじゃの白ひげのおじいさんが立っていた。

サンタクロースみたいな優しそうな眼でこちらを見ていた。

「どうした?いってごらん」

近付いて私の肩をさすってくれた。

「私、ダメな子かもしれない。友達と比べて何も出来ないし、上司にも迷惑かけてばかりなの。どうしてこんなに……」

鼻をすすりながら一生懸命に答えた。

すると、そんなことかと笑われた。

「君は迷惑をかけずに生きていけるのかい?君は友達以上に素晴らしい何かを持っているのではないのかい?自信を持ちなさい。希望を持ちなさい。胸を張りなさい。私は君が悪い子には見えない。ダメな子には見えない。私は応援している。君が1人になってもだ。」

そう言って私の頭に花かんむりを作った。

見ず知らずの人のはずなのにとても暖かい何かを感じた。

昔から知っていたような何かを感じた。


涙を拭って前を見ると、そこには誰もいなかった。

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