城7 Re首ポロ
第3階層を進むと、そこには岩穴があった。岩穴を挟んだような場所に立てられた蝋燭はその先の階段を照らしている。
「トキサメが案内を頼んでくれて助かったよ」
アトゥは言った。
「ふっ、礼には及ばぬ。先ほどの無礼があるからな」
トキサメは答えた。
「いやー、やっと首が治る!」
「俺の腕が先じゃねえのかよ」
紳士的な対応を見せるトキサメの傍ら、エリアスとプイスは口論を繰り広げていた。が、それも戯れのようなものだろう。少なくとも、険悪な空気ではなかった。
「ありがとうな、トキサメ。助かった」
アトゥは言った。
「うむ。また力になれることがあれば手を貸そう」
終始真面目そうだったトキサメはその顔に笑みを浮かべた。彼もその気になれば笑えるのだ。
トキサメに見送られ、岩穴に入ろうとしたとき。
「あっ!」
ぽろり。
岩穴の天井に引っ掛かり、プイスの首が取れた。ごろりと転がった首と、首のないプイスの体。それを見てペイル・ムーンは興奮を隠せなかった。
「また落ちた! 断面は見えないけど!」
プイスはペイル・ムーンの反応を気にすることもなく、首を拾って身体の上に載せた。
プイスは何事もなかったように振り返り。
「先に進もう! エリアスは怪我人だからね!」
「いやいや、プイス。キャラ変わってる」
エリアスはプイスに突っ込んだ。普段、2人は何をしているのだろう。
一行は岩穴から階段に向かっていった。もちろん、プイスの首は落ちていない。石灯籠の並ぶ通路は不気味であったが、何かがいる気配はない。
それでも、アトゥは立ち止まった。
なんだこれは。壁に落書きがある。
DASSY、とスプレーのようなもので壁に書かれていた。それは前衛アートのよう。文字の周りは鮮やかなペンキで彩られていた。
「アトゥさん。何かあったんですか?」
と、ペイル・ムーン。
「落書きだ。いや、古い城にこんな落書きなんて……? しかもDASSY?」
そう、DASSY。アトゥやペイル・ムーンも見た、この廃城の案内人。彼の名前がDASSYだった。
怪しすぎる。見た目も怪しかったが、彼を称えるような落書きがこのような場所にあるとは。
「まあいいや! 先に進もう! この階層のことはよく知らないからね!」
プイスは言った。
何か隠しているのか、それとも単に知らないだけなのか。気にしていたアトゥはひとまずプイスから目をそらさないことにした。
「次の階層は病院だったな。やっと俺の火傷も治る……! 思えば
エリアスは言った。プイスはあえてそこに突っ込むこともなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます