第二階層 声が大きすぎる筋肉吸血鬼
城3 血液にプロテインを混ぜる男
エリアスとのお茶会のようなものが終わった後。
アトゥとペイル・ムーンはさらに下の階層に向かおうと、階段の方へ。この城の面白いところは、階段のある場所が階によって違うということ。その特徴はダンジョンを彷彿とさせる。
「で、なんであんたがついて来ているんだよ」
そう言ったアトゥの右側にはエリアスがいる。第1階層の住人である彼がなぜ下の階層へ行こうとしているのかというと――
「プイスにもフォンダンショコラ食べてもらいたいんだよ」
エリアスは言った。
「プイス?」
「この下の階層にいる吸血鬼だよ。血液にプロテインを混ぜて飲むようなヤツでさあ」
ペイル・ムーンが尋ねると、エリアスは答えた。
「あ、あとペイル・ムーンが好きになるかもしれないな。だってプイスは……」
エリアスはここで口をつぐむ。
階段を下って行った先。
第1階層とはまた違った雰囲気の場所だ。たとえるならば、ジム。だが、壁にはどういうわけか様々な文字や当て字で「プトラ」と書かれていた。
第2階層の住人もなかなか濃そうだ。
「プイス!」
「なんだ!」
ジムらしき場所からの声。
そして現れたのは褐色肌の筋肉質な男。吸血鬼らしからぬ肉体に白のスーツを纏っている。
「……お! エリアス、彼らは誰なんだ?! この城に来客というのも珍しいきがしてなあ!」
筋肉質な男、プイスの声はエリアスに比べるとかなり大きかった。ジムのような空間に響き、人によってはうるさいと感じるだろう。
「来客だよ。それと、フォンダンショコラ食べる?」
「いや、さっきサラダチキン食べたばかりだからいいや! 気持ちだけで!」
プイスは言った。
「それより殺人オセロをしよう! 前から約束していただろ!?」
「よし、望むところだ。また首が落ちても知らないぞ」
エリアスはプイスとともに10メートル四方ほどのテーブルをはさんで座った。そのうえにあるのは、明らかに普通のものより大きなオセロの駒。
「あれでオセロをやるんでしょうか」
「だろうな。確かに腕力的な意味で死人が出そうだ」
殺人、というタイトルは伊達ではない。アトゥは吸血鬼の底知れない何かを感じ取っていた。もっとも、隣にいるペイル・ムーンも半分吸血鬼なのだが。
アトゥはペイルムーンの方を見て。
「俺たち、はやいとこ下の階層行った方がいいか」
「そうですね。ここにいるとアトゥさんの首もポロしそうですから」
と、ペイル・ムーンは答えた。
相変わらず彼女は物騒なことをサラリと言う。有能ではあるが。
「エリアス! 俺とペイル・ムーンは下の階層に行く!」
アトゥはエリアスに向けて叫ぶ。
「了解! また今度殺人オセロでもしようや!」
エリアスは声を張り上げて応える。だが、プイスほどの声は出ていなかった。
プイスの声帯はどうなっているのだろうか。
アトゥとペイル・ムーンは下の階層に降りる階段を探すのだった。
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