第31話 宿題とご褒美
「ふぁー、朝かぁ……」
俺は目を擦りながら体を起こした。
その後急に昨日の出来事が夢だったのではないかと言う不安に襲われ、携帯で日付を確認しようとすると今一番会いたい人の声が聞こえた。
「あ、太陽さんおはようございます! 朝ごはんできてますよ」
明里が下の名前で呼んでくれたのを聞いて夢じゃなかったと確認できて安心した。
「おはよう明里、ってご飯作ってくれたのか!?」
「はい! せっかく昨日お互いの合鍵を交換したので早く使いたくなっちゃって」
そう言うと星宮は「えへへ」と言って少し恥ずかしそうに笑った。
その笑顔を見ただけで胸の中が一瞬で幸せで満たされた。
「そっか、朝から明里のご飯が食べられるなんて幸せだなぁ」
「そんな、大げさですよ、でもそう言ってもらえるとすっごく嬉しいですっ」
「顔洗って歯だけ磨いてくるからそしたら食べよう」
「はい!」
俺は急いで洗面所に行き、明里に気づかれないように静かにその場に座り込んだ。
「朝からこれは身がもたない……なんだあれ、可愛すぎるだろ……」
俺は一人で自分の彼女の破壊力に悶えた。
しかし時間をかけすぎても怪しまれるので必死に気持ちを落ち着かせ、洗顔と歯磨きを済ませリビングに戻った。
「「いただきます」」
「明里今日何して過ごす?」
「太陽さん大事なことを忘れていないですか?」
「大事なこと……?」
「はい、夏休みは遊びともう一つ重要なものがありますよね?」
「あ……まさか……」
「はい、宿題です」
「そうだった……夏休み入ってから何かと忙しくて全く手つけてない……」
「私もなんですよ、なので今日は一緒に宿題しましょう! 幸いそんなに量はなさそうですし」
「そうだな、頑張れば今日中に終わらせられる量だしな」
俺らの高校は全員に同じ宿題を出すのではなく一人一人に合った宿題を出すスタイルで、噂によると宿題の量は定期テストの順位が高ければ高いほど少なくなるらしい。
「はい、じゃあ食べ終わったら宿題持ってきますね」
「いつもこっち来てもらって悪いな」
「全然気にする必要ないですよ、部屋隣ですし好きな人の部屋に来られるのはむしろ幸せですから……!」
「そ、そうか、ありがとう」
「いえいえ」
朝食を食べ終え星宮が部屋に帰っている間また俺は一人で悶えた。
「早速始めましょうか!」
「そうだな、明里はどんな宿題が出たんだ?」
「私は期末テストが一位だったので期末テストで間違えた問題の解き直しだけです」
「まじかよ、一瞬で終わる量だな」
「そうですね、なので終わったら太陽さんの宿題のお手伝いしますね」
「本当か!? 凄い助かる!」
「太陽さんはどんな宿題が出たんですか?」
「俺は数学の出来が悪かったから数学の冊子とテストの解き直しかな、この冊子答えが付いてないからわからない問題あったら聞いてもいいか?」
「もちろんです!」
そう言うと明里はノートを開いて解き直しを始めたので俺も明里に倣って宿題を始めた。
「終わりました」
「え!? まだ始めて10分くらいだぞ……?」
「間違えた問題が少なかったので予想以上に早く終わっちゃいましたっ」
「流石だな、早速わからない問題があるんだけど教えてもらってもいいか?」
「はい、こっちだと教えずらいので隣行きますね」
そう言うと明里は俺の横に腰を下ろした。
座った瞬間にふわりと甘い香りがしてクラクラした。
「この問題なんだけど……」
「あ、これはこの式を平方完成した後に座標を代入するとαが出てそれを元に戻すとβが出ますよ」
「なるほど、じゃあこの問題は?」
「えっとこれもさっきと同じでまず平方完成して……」
とこんな感じで俺は殆どの問題を明里に教えてもらい、なんとかこの1日で宿題を終わらせることができた。
「終わったぁぁぁ」
「お疲れ様です、これで残りの夏休みは心置きなく遊べますねっ」
「そうだな! ただ今日は疲れたからゆっくりしたい……」
俺がそう言うと明里は少し考えてから、
「じゃ、じゃあここ使いますか……?」
と自分の膝をポンポン叩きながらこう言った。
「え、それって膝枕ってやつ……?」
「はい、嫌ならしなくてもいいですけど……」
「いやいやいや、嫌なわけ無い! むしろ喜んでさせてもらう」
「そうですか! じゃあ、どうぞ!」
星宮に促されるまま頭を腿に乗せる。
頭を乗せた瞬間に程よい柔らかさと暖かさに包まれ思わず、
「ふわぁぁぁぁ」
と変な声を出してしまった。
「どう、ですか……?」
「めちゃくちゃ気持ち良いしなんだか安心する……凄い幸せ……」
「それは良かったです、私も幸せですっ」
そう言うと明里は頭も撫でてくれた。
明里の手の暖かさと優しい撫で方がとても気持ちよくて段々と眠くなってくる。
「やばい、寝そう……」
「寝てもいいですよ? ご飯を作り始めるまでまだ時間はありますから」
「そうか? じゃあお言葉に甘えて少し寝させてもらうよ……ただ辛かったら遠慮なく叩き起こしてくれていいからな?」
「わかりました、おやすみなさい」
一瞬自分を客観的に見て、付き合い始めたばかりの彼女の膝で眠るというのはなかなかにやばい事だと認識しかけたがその考えは睡魔によって中断された。
「太陽さん、寝ちゃいました?」
「…………」
「寝たふりはしてないよね……?」
「…………」
(やばい、ドキドキして眠いのに寝れない、しかも寝たふりはしてないってどういう意味だ? なにか俺に知られたらまずいことでもするんだろうか?)
「……太陽さん大好きですよ」
「…………」
(あああああああ、反則すぎる、やばいにやける、悶える、耐えろ、ここでバレたら詰む……)
俺は必死に全ての感情を無にしようと試みなんとか耐えた。
これから毎日こんなことになれば俺は遠くない未来に心臓が破裂して死ぬと確信した。
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