第21話 体育祭 中編


「えーー、只今より第16回星城高校体育祭開会式を行います」


校長先生のあまりやる気の感じられない声で体育祭の開会式が始まった。


「選手宣誓」

「「「「はい!」」」」


校長先生が号令をすると各色の応援団長が駆け足で校長先生の前に集まった。

そして四人で息のあった礼をすると選手宣誓を始めた。


「宣誓! 我々選手一同はトマホークガンシップを乗っ取り……」

「いやいや、どんな物騒なもの乗っ取ろうとしとんねん、スポーツマンシップやろ!」

「ああ、そうか、ニューヨークヤンキースか」

「全然ちゃうわ!」


なぜか赤組と青組の団長が漫才を始めた。しかもなかなかに寒い。

それを見かねた緑組と黄色組の団長が二人の暴走を止めに入るかと思いきや……


「おい、黄色の団長さん、見てみろ、漫才してるぞ」

「そうだな、緑の団長さん、もしかしてこれも勝負に入るんじゃないだろうか?」

「そうかもしれないな、なら俺らも混ぜてもらおうか」


と四人で漫才を始めた。

この後選手宣誓は混沌を極め、校長先生を除いて全員の顔が引き吊っていた。

ちなみに校長先生だけ大爆笑しており特に面白かったのが赤組の団長ということで

赤組に10点入った。横暴である。

その後開会式は選手宣誓の作り出した微妙な空気を引きずったまま終わり、一競技目の玉入れの招集がかかった。

玉入れは俺と星宮両方が出場するため俺らは招集場所の体育館に向かった。


「月嶹さん、できるだけたくさん入れましょうね!」


そう言うと星宮は両手で握りこぶしを作って胸の前に構えた。

本人は頑張ろうという意味のジェスチャーでやっただけなのだろうが、星宮の体はきちんと出るところは出ているので二つの立派な山が強調されて目のやり場に困った。


「お、おう、頑張ろうな」

「月嶹さん、顔赤いですけど大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫、ちょっと暑いだけだ」

「そうですか、今日は暑いので熱中症には気を付けてくださいね?」

「ああ、ありがとう」


必死に星宮の頭からちょこんと出ているアホ毛だけを見て返事をした。

何度かアホ毛より下に視線が逝きそうになったが自制心を総動員して耐えた。


「玉入れに参加する生徒は自分の色のコーンの前にクラス順に並んでください」

「お、アナウンスかかったな、行くか」

「はい!」


玉入れの結果は青組の圧勝だった。

勝因は俺と星宮が大活躍したから......なんてことはなく単純にバスケ部が多かったからだった。ちなみに俺は片手で数えらえるくらいしか入らなかった。


「お疲れ様です! 勝てましたね!」

「そうだな! とりあえず一安心だ。綱引きはいつなんだ?」

「えっと確かあと三つ後とかだった気がします」

「三つ後か、なら応援できるな」

「応援してくれるんですか! 月嶹さんの応援があれば百人力ですっ」

「そんな大げさな、だけどできるだけ近くで応援できるようにするよ」

「ありがとうございます、月嶹さんの二人三脚リレーはいつなんですか?」

「午後の部一発目だよ、なかなかにえげつないプログラムだよな……」

「そうですね、でもそれなら私も応援できるので頑張って応援しますね!」

「ありがとう、それなら何とか頑張れそうだ」

「あ、あと今日月嶹さんの分のお弁当作ってきました」

「本当か!? ありがとう、マジでうれしい」

「よかったです。も、もしよかったら……い、い……」

「い?」

「一緒にご飯食べませにゅか?」


噛んだ。見事に噛んだ。しかもかなり可愛い感じに。

星宮を見ると本当に目でわかるくらいのスピードで顔が赤くなっていき、俯いてプルプルと震えだした。その様子が可愛くていつまでも見ていたくなるが返事をしないと星宮がショートしてしまうのでしっかりと震える星宮を目に焼き付けてから返事をした。


「こちらこそ一緒に食べてくれるなら喜んで食べりゅぞ」


あ、あれ、俺今噛んだ? しかもなかなかに恥ずかしい感じで。

俺の返事を聞いて星宮が顔を上げ俺の顔を見てきた。


「月嶹さん顔真っ赤ですよ?」

「そういう星宮も真っ赤だぞ?」

「お互い噛みましたもんね、お互い様ですね」

「そうだな、お互い様だな」


そういって俺らは互いのまだ赤い顔を見あって笑った。

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ここまで読んでいただきありがとうございます!

本来体育祭は前後編で終わらせるつもりだったのですが後編の方が思った以上に長くなってしまい急遽中編を作ることになりました。

それに伴い、今回は文字数、内容ともにとても薄くなってしまいましたので後編を明後日ではなく明日投稿致します!

ぜひ読んでいただけると嬉しいです!

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