第18話 星宮明里の大冒険
「そういえば月嶹さんの誕生日っていつなんですか?」
「俺の誕生日か? 4月5日だけど」
「えっ、もう過ぎてるじゃないですか!」
「まあそうだな」
「どうして教えてくれなかったんですかーー」
「いやいや俺らが引っ越してきたの4月11日だろ……」
「それでも教えて欲しかったです」
「んな無茶な……」
私が冗談で無理なことを言うと彼は少し楽しそうに苦笑いをする。
私は彼のこの顔を見るのが好きでたまに理不尽なことを言いたくなる。
「冗談ですよ、冗談。 それより月嶹さん何か欲しいものありますか?」
「どうしたんだ急に?」
「いや、話の流れ的に誕生日プレゼントでしょう?」
「いやいやもう俺の誕生日二ヶ月以上前だぞ? 気にしなくて大丈夫だよ」
「いいえ、私があげたいんです。 何かないんですか?」
「うーん、欲しいものかぁ。 俺は星宮がくれた物ならなんでも嬉しいぞ」
私は急激に顔が熱くなり心臓が跳ねるのを感じた。
彼は時折さらっとこのような事を言ってくるのでとても心臓に悪い。
「そ、そうですか……じゃあ何か探しておきますね」
「本当にいいのか? 俺は全然来年まで待てるぞ?」
「……い、いいんです。 楽しみにしておいて下さい」
「わかった、楽しみにしてるよ」
私の心臓の鼓動は休まるどころかさらに加速した。
何故なら彼は気づいていないと思うが「来年まで待てる」というのは来年も一緒にいるつもりという事だ。そんなことを急に好きな人から言われたら誰だってドキドキする。
「星宮大丈夫か? なんか顔赤いぞ?」
「月嶹さんのせいですっ」
「え、俺のせい? 俺なんかしたか?」
「しました、月嶹さんはずるいです」
「なんでずるいんだ……?」
「なんでもですっ」
そう言うと彼は首を傾げ自分の行動を省みたが案の定何も気づくことはなくどんどん首を傾げていくだけだった。
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「うーん、誕生日プレゼントかぁ。 相手はどんな人なの?」
「友達です」
「男の子? 女の子?」
「……男の子です」
「へぇー、明里が男の子にプレゼントねぇ、こりゃクラスの男子が知ったら相手は大変なことになるね」
私はクラスで唯一普通に話せる友達の
彼女は最初の体育の授業以降よく話しかけてくれるようになり最初こそ戸惑ったが今では一緒にご飯を食べる仲にまでになった。
「そんなことないと思いますよ?」
「明里はどんだけ自分が可愛いか自覚を持った方がいいよ……」
「私は梢ちゃんだって凄く可愛いと思いますよ。」
「何食わぬ顔で論点すり替えたね……でも嬉しいから許す。ありがと」
「いえいえ! それで相談の続きなんですけど、何がいいと思いますか?」
「ああ、そうだったそうだった、相手とは知り合ってどれくらいなの?」
「二ヶ月弱くらいです。」
「なるほど、結構仲は良い方?」
「それなりには良いと思ってます」
「そしたら毎日使う小物系とかどう? 財布とかキーケースとか定期入れとか」
「なるほど……! いいかもしれないです! 今日放課後探してみます」
「うん、頑張って月嶹くんの喜びそうなもの見つけなよ?」
「えっ、えっ、気づいてたんですか?」
「うん、だいぶ最初の方からわかってた」
「な、なんでわかったんですか?」
「だって明里いつもは感情をあんまり顔に出さないけど月嶹くんの話をするときだけはずっと笑ってるからね。今回も相談してきた時から笑ってたからすぐわかったよ」
「そんな、全く自覚がないです……」
自分がここまで分かりやすいとは思ってなかったので自分の気持ちが月嶹さんにバレていないか少し心配になった。
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この日の放課後月嶹さんには夕飯の買い出しに行くから先に帰ってて欲しいと伝え、誕生日プレゼントを探しに行った。
「探すって行っても何処を探したらいいのかな?」
人に贈り物をした事がないので勝手がわからずキョロキョロしているとインフォメーションセンターを見つけたので聞くことにした。
「すいません、プレゼントを買いたいんですけどどのお店に行けばいいですか?」
「何をお探しでしょうか?」
「えっと、財布とかキーケースとか日常で使うものがいいんですけど」
「でしたら三階のこのお店がいいと思います」
「ありがとうございます」
私は早速教えてもらったお店に行きしばらく見て回ってみたのだがなかなか決まらず
途方に暮れていると店員さんが話しかけてくれた。
「何かお探しですか?」
「はい、誕生日プレゼントなんですけど日常で使う小物系を探してて」
「お相手は男性の方ですか?」
「はい、そうです!」
「でしたらこちらの定期入れとキーケースの両方に使えるものはどうでしょうか?」
そう言って店員さんが見せてきたのは黒めの本革でできたものだった。
頭の中でこれを使っている月嶹さんを思い浮かべるとなかなか似合っていたので
すぐこれに決めた。
「ラッピングはどうされますか?」
「お願いします」
「かしこまりました。袋にシールを貼ることができますがどうされますか?」
「じゃあせっかくなんでお願いします。」
「ではこちらの中からお選びください。」
そう言って店員さんが見せてきた表には「Happy birthday」「Thank you」
「I love you」「For you」の4種類だった。
「彼氏さん宛てでしたら誕生日プレゼントでも I love you もありだと思いますよ」
「か、彼氏じゃないんで普通に Happy birthday で大丈夫です……」
「照れなくても平気ですよ? ではラッピングできましたらこちらの番号でお呼びいたしますので店内でお待ちください。」
「は、はい……」
まさか月嶹さんと一緒にいない時も彼氏と勘違いされるとは思わなかった。
そしてその日の夕飯後……
「月嶹さんこれどうぞ。遅くなりましたが誕生日おめでとうございます!」
「えっ、もう用意してくれたのか!? 誕生日の話したの昨日なのに。ありがとう!」
「いえいえ、1日でも早く渡したかったので今日の放課後買ってきました」
「本当にありがとな、開けても良いか?」
「はい、気に入ってもらえると嬉しいのですが……」
誰かに物をあげるというのがこんなにもドキドキすることだとは知らなかった。
渡した時からずっと動悸が収まらなかった。
「これキーケースか? 」
「はい。」
「キーケース欲しかったんだ! 俺いつも鍵単体で持ち運んでるから怖くてさ」
「本当ですか!? 良かったです! あとそれ定期入れとしても使えるんですよ」
「まじか、いいのか? こんなに良いものもらっちゃって」
「もちろんですよ」
「改めてありがとな、大切に使うよ」
そう言って彼は嬉しそうに笑った。
やはり好きな人の笑顔は破壊力抜群でそれだけで心からプレゼントをあげて良かったと思えたしこちらがプレゼントをもらったような気分になった。
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