第16話 勉強会

「こんな朝早くからつき合わせちゃってごめんな」

「いえいえ、人に教えるのが一番勉強になるって言いますし。 あ、これはさっき教えたやり方で解くんですよ」

「なるほど」


俺は一週間後に中間テストが控えているため星宮に頼んで朝から勉強を教えてもらっていた。


「しかし星宮教えるのめちゃくちゃ上手だな、正直先生よりわかりやすいぞ」

「そうですかね? 月嶹さんの吸収スピードが速いからだと思いますよ? あ、その答えもう一段階因数分解できます」

「そうか……? 先生でも生徒と会話しながらミスを瞬時に指摘できないと思うんだが……」


今は数学を教わっているのだが星宮は驚くことに授業で習った日に復習するだけでほとんどの事が身につくらしくテスト勉強はそんなにする必要はないらしい。

本人曰く「この学習能力を少しで良いから運動に回して欲しいんですけどね」だそうだ。


「月嶹さん、そのページ終わったら一回お昼ご飯にしましょうか」

「もうそんな時間か、勉強って理解できるとこんなに時間経つの早いんだな」

「そうですね、私は月嶹さんに教えるのが楽しくて一瞬でしたよ」

「そ、そうか、それは良かった」


最近星宮が良く不意打ちでこのようなことを言ってくるのでとても心臓に悪い。


「すぐお昼の準備しちゃうので休憩しててください」

「いつもやってもらってばっかだから何か手伝いたいんだがなんか手伝うことないか?」

「んー、そしたら下敷きとコップとお茶を出してもらっても良いですか? 下敷きはお皿の棚の下の引き出しに、コップは左の棚にありますので」

「了解。」


料理面では何も手伝うことができないのでこういうちょっとしたことでも手伝うことがあるのは嬉しかった。


「お待たせしました。あんまりお腹いっぱいになりすぎると眠くなっちゃうので、ざる蕎麦にしました」

「おお〜、美味そうだ」

「麺は市販のものですけどね」

「麺はってことは麺つゆは作ったのか!?」

「はい、簡単にですけど」

「凄いな……」

「「いただきます。」」


麺を一口すすって驚いた。麺つゆが美味いだけで市販の麺がここまで美味しくなるとは思わなかった。


「この麺つゆめっちゃ美味い! 普通のより少し甘めだからわさびの辛さとの塩梅がちょうど良いししっかり麺にも味が乗ってる」

「ふふっ、月嶹さん食レポ上手ですね」

「笑わないでくれ……」

「すいません、突然だったんで。でも褒めてもらえて嬉しかったです!」

「そうか? なら良かったよ」


この後俺らは夕飯までみっちり勉強をして俺の部屋で夕飯を食べた。

夕飯は星宮特製のカレーだった。

言わずもがなこのカレーもめちゃくちゃ美味しかった。


「はぁー、美味かったぁ。もう俺星宮のご飯なしじゃ生きていけないかも」

「それは言い過ぎだと思いますよ?」

「いやいや、割とマジでそんな気がしてる……」

「じゃあこれからもずっと月嶹さんにご飯作ってあげますねっ」


そういうと星宮は満面の笑みを浮かべた。

俺は星宮の可愛すぎる笑顔と捉え方によってはプロポーズとして取れなくもないセリフにノックアウトさせられ顔が真っ赤になるのを感じた。


「星宮そういうことはあんまり簡単にいうもんじゃないぞ」


俺はそう言って足早にキッチンに行き自分の担当である皿洗いを始めた。


「月嶹さんにしか言いませんよ……」


皿洗いを終えリビングに戻ると星宮は膝にもみじを乗せて「すぅー、すぅー」と可愛い寝息を立てて寝ていた。


「朝からずっと俺に教えてくれたからな、疲れたんだろうな」


勉強中は平気そうにしていたがかなり疲労を溜めさせてしまったらしい。

俺は次からは気をつけようと心に誓いながら星宮を起こさないようにもみじを回収した。


「さて、どうしようか。軽く揺すって起きそうになかったら俺のベッドに運んで俺はソファで寝るか」


とりあえずの流れを頭の中で描きながら星宮に呼びかけた。


「星宮、星宮」

「ん、んー、すぅー、すぅー」

「だめか、起こさないように慎重に運ぶか」


俺は星宮をお姫様抱っこをする形でベッドに運んだ。

運ぶ際に星宮の甘い香りと柔らかさで理性が飛びかけたがなんとか耐えた。

俺は寝ている星宮の横に座って頭を撫でて、


「おやすみ。好きだぞ」


と言って寝室を出た。この後猛烈に自分のしたことに対する羞恥心と星宮が実は起きてたんじゃないかという心配に駆られなかなか寝れなかった。

翌日星宮を起こすと最初は寝ぼけてぼーっとしていたが状況がわかった途端顔を真っ赤にして「な、な、なんで起こしてくれなかったんですか!」とだけ言って俺の家を飛び出し隣の自分の家に帰って行った……

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