共力関係スタート
第6話 早朝の邂逅
ピンポーン
「ふぁぁー……誰だよこんな朝早くに……」
早朝5時半にも関わらず鳴り響いたチャイムに無理やり睡眠を中断され、俺は少し不機嫌気味に玄関へ向かった。
意識が覚醒してすぐなためか起きたままの格好で訪問者に対応することになんの気遣いもなく、それに加えてこんな早朝に自分を訪ねてこれる人はほぼ一人しかいないという事実に気づかなかった。
ガチャ
「ふぁーい。どちら様でしょ……」
ガチャン
あれ、俺寝ぼけてるのかな。今扉の外に星宮明里がいたような……
恐る恐るもう一度ドアを開け外を見る。
すると案の定、星宮明里が、まだ出会って3日なのにもうすでに見慣れた、
あの何者も受け付けないような純度100%の真顔で立っていた。
「おはようございます、月嶹さん。少しお伺いしたいことがあるのですが今大丈夫ですか?」
「どちらかというと大丈夫ではないですけど長くならないなら平気ですよ」
「もしかして起こしてしまいましたか? もしそうならすいません……」
「別に気にしなくて平気ですよ、ただ次からはもう少し遅めにしてもらえると
嬉しいです......」
「わかりました。それで一つ聞きたいんですけど、その……」
「その?」
「昨日のあの、犬へのトラウマを克服するのを手伝ってくれるっていうのはいつから
やっていただけるのでしょうか……?」
意外と乗り気だったのかソワソワしているのが伝わってくるが、本人はそれを隠そうと必死ならしく、少し下を向き、頬をうっすらと赤色に染め、上目遣いでチラチラとこちらの様子を伺っている。
(こういう顔もできるんだな。)
元の顔が可愛いので不覚にもドキッとしてしまった。
「えーと何時頃がいいとか希望はあったりします?」
動悸が早くなっているのを悟られないように無難な質問をする。
我ながらなかなかなチョイスだ。
「えっと部活には入る気はないので基本的に放課後であればいつでも大丈夫だと
思います。」
「なるほど、僕も部活はやる気ないので好都合です。そしたら17時くらいからで
大丈夫ですか?」
「はい!」
星宮明里は訪ねてきた時とは全くの別人のような暖かさのある微笑で返事をしてきた。
その顔にまた収まりかけた動悸が早くなり顔がうっすら上気するのを感じた。
「じゃ、じゃあまた後で」
星宮に悟られないように少し下を向きながらこう言い、扉を閉じた。
「焦ったー……」
朝っぱらからなかなか心臓に負担がかかることをされたせいで暫く玄関から動けなかった。
2、3分間玄関で放心した後リビングに戻りもみじにご飯をあげた。
その後早起き(強制)したので少し時間に余裕があったためスマホでトラウマの克服の仕方について調べてみた。
「なになに… 『身近な人の愛情がいちばんの薬です』『親や恋人などの大切な人といることが大切です』『恋をしましょう。』………なぁもみじ。ご飯中に叫ぶ俺を許してくれな。
なんで解決策がワンパターンしかねぇんだよぉぉぉぉぉ!」
俺は検索結果の上から三つがトラウマの克服には愛が一番と言っている事に驚き叫び焦った。別に愛がトラウマを克服するのに重要ではないとは思ってない。
むしろ早苗さんたちの愛情があったからこそ俺は立ち直れたんだと思う。
問題はそこじゃなく……
「急に俺が『今日から愛を与えていきます』なんて言ったら一瞬でこの家から追い出されるよな……」
そう。愛情が解決の糸口だとしても恋人でも家族でもない、ましてや3日前に知り合った奴からの愛情なんて受け取って解決できるわけがない。むしろ新しく一つトラウマを増やしてしまう可能性の方が大きい。
八方塞がりな状況に頭を抱えているとスマホがメッセージを受信したらしく音が鳴ったので見ると灯火からだった。そこで俺は名案を思いついた。
「そうだ、今日学校で灯火に相談してみよう。」
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