第3話 友だち第1号
コンビニから帰ってくると物が極端に少ないからだろうか、星宮明里と名乗った少女の荷物の運び入れは終わっていた。
(もう終わってるのか。女の子ってもっと荷物多いイメージだけどな)
と心の中で女の子への勝手なイメージを呟きながら家の扉を開けるとすぐにお座りの姿勢をしているもみじが見えた。
「もみじただいま、ちゃんといい子にしてたか?」
もみじは吠えることは滅多に無いが少しイタズラ癖がある。
叔母の家ではしょっちゅうティッシュをぶちまけたり、洗濯物をぐちゃぐちゃにしたりやりたい放題だった。幸い引っ越したばかりで物が極端に少ないのでその心配はなかった。
もみじと一緒にリビングへ行き、時計を見ると午後6時を回ったところだったので
早めの夕飯をもみじと一緒に食べた。
「一人暮らしは凄く楽しみだったけど会話する人がいないって少し寂しいな」
一人暮らし1日目にして早くも人の声が恋しくなったのでテレビをつけた。
結局この後興奮で寝付けず、契約していた映画配信サービスで映画を見て
深夜の3時過ぎまで夜更かしをしてしまった。
そして話は冒頭に戻る。
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「やばい、どうしよう、今日入学式だぞ、入学式早々遅刻とか目立つにもほどがある」
できれば学校ではあまり目立ちたくないので俺は必死に脳を回転させた。
「えっと入学式が始まるのが8時30分で、25分までに教室にいないといけないから
10分で学校に行く必要があるな、そんなに学校は遠く無いから走れば間に合うかもしれない」
俺は急いで着替えをして、もみじに朝ごはんをあげて、カバンを持って家を出た。
「急げ急げ急げ、後5分しかない!」
息が上がるが遅刻したく無い一心で疲れを強引にねじ伏せる。
途中の信号をまだかまだかと待っていると同じ制服を着た男が先ほどの俺よろしく猛ダッシュで走ってきた。男は俺を見ると安堵の表情を見せた。
「もしかして
「はい、今日からそうなる予定です。」
「良かった〜、俺は
「俺は月嶹太陽です、こちらこそよろしく」
「太陽って言うんだ。いい名前だね。太陽はここら辺に住んで……って信号青だ! 走れー!」
俺らは全力疾走した甲斐あってなんとか校門が閉まる前に学校に着いた。
「はぁ、はぁ、疲れたね」
「そうですね、お疲れ様です」
「多分下駄箱の前にクラス分けの紙が貼ってあると思うから行こうよ」
そういうと灯火はまた走り出した。
「ちょっと、待ってくださいよ」
俺は運動不足のせいで歩くので精一杯だった。
やっとの思いで下駄箱に着くと灯火の嬉しそうな声がきこえてきた。
「太陽! 僕たち同じクラスだよ!」
「本当ですか、それは良かったです」
「うん! あ、さっき聞きそびれちゃったんだけどさ太陽はここら辺に住んでるの?」
「はい、昨日引っ越して来ました」
「そうなんだ! じゃあ一人暮らししてるの?」
「はい、そのせいで今日遅刻しかけました……水生くんはここら辺に住んでるんですか?」
「灯火でいいよ、後敬語も無しでいいよ! うーんとね俺はちょっと離れたところに
住んでたんだけど、家の都合でこっちにある祖母の家に住むことになったんだ。
だから太陽が俺の友達第1号だよ」
「わかった、じゃあ遠慮なくタメ口で話すよ。俺もここら辺には友達いないから
灯火が第1号だよ」
「おお!良かった! 改めてよろしくね!」
「こちらこそ」
キーンコーンカーンコーン
そんな話を下駄箱の前でしていると30分を知らせるチャイムが鳴った。
「「あ......」」
結局俺らは遅刻をし入学式の会場の体育館で担任の先生であろう先生に怒られた。
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