第2話 出会い
マンションに着くと荷物の運び入れが始まったのだが、すぐに大事件が起こった。
業者の方が慌てて俺を呼びに来たので付いて行くと荷台で尻尾を振っているもみじがいたのだ。
「もみじ!? なんでここにいるんだ!?」
慌ててもみじに聞くも返事など返ってくるわけもなく、返ってくるのはくりくりしたつぶらな瞳と激しく左右に振られた尻尾だった。
「どうしますか?」
と業者の方が聞いてきた。
俺は悩んだ後にこう答えた。
「今日は俺が預かっておきます」
「わかりました、でもここペット禁止だったはずですよ」
「え、そうなんですか。 わかりました、叔母に連絡して明日にでも引き取りに来てもらいます。心配してると思いますし」
「そうして頂いた方が良いと思います。では荷物の運び入れの続き致しますね」
「よろしくお願いします」
早苗さんにもみじのことを電話しようと外に出るともう一台引越しのトラックが
駐車場に来たのが見えた。
「新学期だし皆考えることは同じなのかな」
と思いながらトラックを眺めていると中から俺と同い年か一つ上くらいの女の子が降りてきた。
遠目からだったので顔は良く見えなかったが瑠璃色の髪をしていることだけはわかった。
しばらくその子を見ていると、こちらの視線に気づいたのかこちらを向いてきたので
軽く会釈をすると、数秒こちらを見た後、プイッとあからさまにそっぽを向かれた。
「なんだ、あの子?」
少しムッとしたがもう関わることもないだろうと思い当初の目的である早苗さんへの電話を済ませ、こっそりもみじを抱えて部屋に戻ると、荷物の運び入れは終わっており、業者の方は撤収作業をしていたので感謝を述べてから、新しい自分の家に入った。
「おおおお〜! ここが今日から俺の家になるのかぁ」
中に入ると部屋は必要最低限の家具が配置されているだけで、それ以外は何もない空間だったがそれでも自分の家と思うと不思議とどんな家よりも輝いて見えた。
「今日は疲れたし、残りの家具は明日の入学式の後帰ってきてからにするか。それよりも今夜の俺のご飯ともみじのご飯どうにかしないとな」
少し考えてコンビニと浮かんでくるあたり現代人だなと思いつつ、もみじに行ってくるから静かにしてるんだよと言って外に出る。
すると隣の部屋で引越し作業が行われていた。
「おいおいまさか……」
恐る恐るエレベーターの方へ進んでいくと案の定先ほどの無愛想な瑠璃色の髪をした
少女が立っていた。
少女がこちらに気づき目があったので何か言うべきかと考えて、
「こんにちは、おそらく貴方のお隣さんの月嶹太陽です」
となぜ自己紹介をチョイスしたか自分でも不思議だったが途中でやめるのも変なので言い切ると
「
とだけ返事が返ってきたのでなんと返して良いかわからず、気まずさを感じる前に会釈だけして俺は足早にエレベーターに向かった。
道中思った以上に先ほどの少女が可愛かったので数分頭から離れなかったが
もう関わることもないだろうと思いすぐに忘れようと試みた。
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