第一章 会議が始まる

第420話 会議が始まる①

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第11部、先行投稿第二弾です!


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 その日の朝。

 ホライゾン山崎の九階層。《久遠天原クオンヘイム》近衛隊の詰め所の会議室にて。

久遠天原クオンヘイム》――ひいては強欲都市グリードの中核を担う人物たちが揃っていた。


 部屋の中央には長机が鎮座しており、まずは左席側に三人。

 一人は三十歳ほど。扇子を片手に持つ、糸のように細い眼差しの和装姿の男性だ。

 強欲都市グリードにおけるNO3。

 千堂せんどうあきらである。

 その隣には同じく和装姿の二十代の美女が二人。一人は妻である千堂琴音。もう一人――いや一体は、琴音をモデルにした戦闘人形フィギュア・阿修羅姫である。


 続けて右席側。

 女性一人と男性二人だ。

 女性の年齢は二十一歳ほど。紅を引く唇に、胸元を大胆に開いた赤いイブニングドレス。勝気な目元にはアイシャドーも施した長い黒髪のスレンダーな美女だ。

 強欲都市グリードにおけるNO2。

 西條さいじょうあやだった。

 妖艶な脚線美を見せつけるように、彼女は足を組んでいる。

 隣に並んで座る黒い礼服を来た二人の男は綾香の腹心であり、隷者ドナーたちだった。


 そして主催者の対面となる席。そこにも三人の人間が座っていた。

 まずは左右。灰色の隊服を着た二人の綺麗な少女だ。

 赤と青の髪だけが違うスレンダーな少女たち。

 神楽坂茜と葵の双子の姉妹である。


 そうして二人の間。そこに座っているのは二十歳ほどの美女だった。

 ふわりとした長い栗色の髪。抜群のプロポーションに、少し垂れ目がちの大きな眼差しが印象的な女性――伍妃の芽衣だ。

 片耳には銀色のイヤリングをつけ、茜たちと同じく近衛隊の隊服を着ている。

 芽衣は妃であるが、近衛隊の隊長も兼任しているのでこの場にいた。


 そして最後の一席。

 主催者の席は、今は空席だった。

 が、ややあって会議室の扉が開かれる。

 入ってきたのは三人の男性だった。

 一人は筋肉質な巨漢の人物。近衛隊の隊服を着たサングラスをつけた大男。

 近衛隊の副隊長である獅童大我だ。

 一人は短髪を金に染めた長身の少年。獅童と同じく近衛隊の隊服を着た人物だ。

 近衛隊の部隊長の一人。《久遠天原クオンヘイム》の創設メンバーの一人でもある武宮宗次だった。

 獅童は空席の椅子を下げると、その後ろに控えた。武宮も同じくだ。

 そうして最後の一人がその席に座る。


 前髪を上げた灰色の紳士服姿の二十代後半に見える青年。

 ここにいる者たちの王たる人物。


 ――そう。久遠真刃である。


「よく集まってくれたな。感謝する」


 真刃はまず皆に感謝を告げる。

 そうして、


「では、早速だが、会議を始めようか」



       ◆



「そろそろ真刃さんたちは会議かしら?」


 ホライゾン山崎の十階層。フォスター邸のリビングにて。

 コノ字型のソファーに、彼女たちは集まっていた。

 最初に切り出したのは、白い制服を着た銀髪の少女だった。

 北欧系の美貌とスタイルを持つ十五歳の美少女――壱妃・エルナ=フォスターだ。


 エルナは腕を伸ばして、コノ字型ソファーの中央に置かれたローテーブルの上から一枚のポテトチップスを手に取った。

 それをパクっと口にする。それから隣の少女に目をやった。


 肩辺りまで伸ばした黒髪の少女。エルナにもそう劣らないスタイルと、人形のように整った顔立ちが印象的な無表情の少女――弐妃・杜ノ宮かなたである。


「そうですね。時間的にはすでに始まっているかと」


 かなたはそう返すと、自分もポテトチップスを一枚とって口に咥えた。

 そしてエルナ同様に隣を見やる。


 そこにいるのも少女だ。

 エルナ、かなたと同じ十五歳。長く艶やかな黒髪をポニーテールにしている。身長は三人の中で一番高く、純日本人だが、スタイルは異国の血を引くエルナにも匹敵する。

 参妃・御影刀歌である。


 エルナ、かなたもそうだが、刀歌も学校の白い制服を着ていた。

 刀歌も身を乗り出してポテトチップスを一枚とって、


「そう聞いているな。だが、参加できないのは不満だ」


 パリッと歯で砕いて、不満そうに呟く。

 次いで、隣の少女に目をやった。


 刀歌の視線の先の少女は、エルナたちとは世代が少し違う。

 毛先に行くほどオレンジ色になる赤髪の少女だ。勝気な眼差しの彼女は十二歳だった。美貌においてはエルナたちにも劣らないが、流石にスタイルは将来に期待という感じだった。

 瑠璃城学園の制服を着た少女――肆妃『星姫』・火緋神燦だ。


 燦は、パーティ開きをしているポテトチップスを大胆に鷲掴みにした。


「なんであたしたちは参加しちゃダメなの! 芽衣は出ているのに!」


 バリバリッとチップスを喰らう。

 それから視線を隣に座る親友に向ける。親友は困ったような表情を見せた。

 彼女は燦の親友であり、同級生だった。

 ふわりとした淡い金髪に蒼い瞳。白人の母と日本人の父を持つハーフの少女だった。

 エルナ同様に異国の血の影響は大きいのか、燦と同じ制服を着ていても、そのスタイルの印象はまるで違う。燦が将来に期待なら、彼女は将来が確定といった感じだった。

 肆妃『月姫』・蓬莱月子である。


 月子もポテトチップスを一枚とった。


「それは仕方がないよ。燦ちゃん。だって芽衣さんは妃であると同時に《久遠天原クオンヘイム》の一員だから。それも創立メンバーだそうだし」


 パクっと可愛らしくチップスを食べる。

 そうして上目遣いに自分の前に座る女性に目をやった。

 ここまでがコノ字型ソファーの右列のメンバーだ。

 年少組とも呼ばれている。

 そして、向かい側の左列メンバーの女性は年長組だった。


「……ん」


 その女性は頷いた。

 年齢は十九歳。白銀の髪に、少し眠たそうな琥珀の瞳。エルナたちを凌ぐほどのスタイルの上に黒い拘束衣を纏い、花魁のような着物を羽織っている。

 陸妃・天堂院六炉だ。


 六炉もポテトチップスを一枚、手に取った。


「ムロは芽衣と同じ頃に妃入りしたけど、《久遠天原クオンヘイム》には入ってなかった。ミスだった。入っておけばよかった」


 少し頬を膨らませてチップスを食べる。

 六炉は隣に視線だけを向けた。

 そこには黒髪の女性が腕と足を組んで座っている。


 肩辺りまで伸ばした髪に、やや勝気な眼差しの美女。

 年の頃は六炉とそう変わらない。スタイルも抜群だ。ハイネックの黒い長袖Tシャツに、白いデニムパンツ。胸元には水晶の首飾りをかけていた。

 ただ彼女はこの中のメンバーでも最年長者。実に百二十三歳の美女だった。

 漆妃・久遠桜華である。


 桜華は少し困惑しつつも、皆に倣ってポテトチップスを一枚とった。

 それをマジマジと見つめつつ、


「自分もそうだな。軍議なら自分も参加した方が効率的だ」


 言って、少し恐る恐るチップスを口にした。

 意外と美味いなと呟きながら、視線だけを隣に送る。


 そこには最後の美女がいた。

 年の頃は十八ほど。絹糸のような髪質の黒髪のショートヘア。やや勝気そうな眼差しに、整った顔立ちの彼女は緋色の和装を着ていた。

 和装のために分かりにくいが、桜華にも匹敵するスタイルも有している。

 ちなみに年齢においてもほぼ匹敵していた。

 桜華と同じ百年乙女にして始まりの妃。

 零妃・久遠杠葉である。


 杠葉もポテトチップスを一枚、手にした。


「そうね。けど、仕方がないことだわ。なら私たちは私たちの軍議をしましょう」


 そう告げて、パリッとチップスを歯で割った。

 そして、


「では、妃会合と行きましょうか」


 そう宣言するのであった。



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