第101話 兎と羊は拳を振るう②
一方、その頃。
とある寂れた繁華街。
その一角にある廃ホテルのホールにて、
まるで、おもちゃをプレゼントされた子供のような眼差し。
不気味なぐらいに無垢すぎる瞳である。
「……おお」
思わず、感嘆の声まで上げる。
「それが今回のゲストなのカ?」
と、
彼の後ろには、数人の部下が控えていた。
「……ああ。そうだ」
「なかなか手こずらせてくれた」
「……アレを使ったのカ?」
「長引くと厄介だと思ってな。一気にねじ伏せた」
「……ふ~ん、そっカ」
少女は「う……」と呻いた。
「画像では知っていたが、確かにすげえ美少女だナ。十年後が楽しみだ」
そんなことを呟く
「ふん。この娘に十年後はないだろう?」
「はは。そうだっタな」
「そ、それよりも
不意に
鼻の穴を膨らませて
「ありがとよ! マジでそっちも攫ってきてくれたんだな!」
「……ついでだったからな」
そう言って、
「おお!」
「すげえ! なんつう抱き心地だ!」
小柄な体とは思えない柔らかな双丘に、指が深く沈み込む太股。
腕の中の極上な感触に、感動を隠せない。
不快感を覚えたか、月子は眉をひそめるが、まだ起きる気配はなかった。
「おお~、月子ちゃんよォ! 初めましてな! お前のご主人さまだぜ!」
そう告げる。次いで、気絶している月子のうなじを抑えると、早速、彼女の無垢な唇を奪おうとする。が、
「おい。流石にやめろヨ」
そこで、
「お前の趣味に口出しする気はネエけどヨ、なんで、お前のキスシーンなんぞを見なきゃなんネエんだヨ」
という最もなツッコみに、周囲の男たちも注目することで同意していた。
「えええ~、何でだよォ」
折角、今回の戦利品を堪能しようと息まいていたのに、周囲から思いがけないお預けをくらって
「
「それよりも儀式だ。場所を移そう。計画通り今夜中に行い、早朝に出立すべきだ」
「おう。そうだナ」
リーダーである
次いで、そっと自分の手首に繋いだアタッシュケースに触れた。
「ああ」と
「ああ。それなら先に行っててくれ」
不意に
「……それはどういう意味だ?
「ああ~、俺は」
ニタニタと笑いながら、月子の頬に触れる。
「こいつを堪能してから行くよ」
「……おい。
明らかに自分の欲を優先させている
すると、
「儀式の準備は万全だ。そのガキを連れて行けばいいだけだろ? 火緋神も俺らを突き止めるまでには時間がかかるはずだ。俺が居なくても大丈夫なはずだぜ。なら」
戦利品の臀部に指を食い込ませる。少女は「うっ……」と呻いた。
「帰りにこいつに騒がれんのも嫌だろ? 一晩くれよ。従順な良い子に教育しとくからさ」
「……
「仕事は仕事だ。プライベートを混同するな」
そう告げて一歩踏み出した。
幹部同士の険悪な雰囲気に、部下たちはざわついた。
と、その時。
「う~ん、まあ、いいんじゃネエか?」
その空気を、
「今回、
そこで笑う。
「ちょいと早いが、休みに入ってもいいと思うゼ」
「おおっ!
「流石は俺たちのボ……リーダーだぜ! 話が分かる!」
そこにシビれる! あこがれるゥ!
と、
一方、
「……
「う~ん、まあな……」
すると、
「お前と
「……その言い方は卑怯だぞ」
少し間を空けて、
それから、浮かれまくる
「
「おお! 分かってるぜ!」
踊っていた
「愛してるぜ!
「「お前のラブコールなんぞいらねえよ」」
と、
「まあ、俺らは儀式場に行くゼ」
そう告げて、
最後に残った
「出立は早朝六時だ。流石に遅れるなよ」
「おう。分かってるぜ!」
対する
「では、明日な」
「おう。明日」
上機嫌な
そうして
残されたのは、
「……ヒヒヒ」
次いで、月子の腰を左腕で掴み、背後から抱きかかえてあごに右手をやる。
顔を上げさせても、少女が目を覚ます様子はない。
「おお~、ぐっすりだな。月子ちゃん」
右手で彼女の豊かな双丘の感触も味わう。少女は「う……」と呻いた。
「ウヒヒ……」
遂に、念願の獲物を絡め捕えた蛇は、双眸を細めた。
そして――。
「今夜は、お前の生涯でも一番長い夜になるからな。俺に従順で素直な良い子になるまでいっぱいお勉強しようぜ」
邪悪な蛇は、静かに嗤った。
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