第四章 懐かしき、初対面

第90話 懐かしき、初対面①

 その時。

 久遠真刃は、ただただ硬直していた。

 茫然と、目を見開いたまま、全く動けなかった。

 まるで時でも止まったかのようだった。


 ――いや、その表現は正しくはない。

 正しくは、時間が巻き戻ったような感覚を、真刃は抱いていた。


 外装の趣に懐かしさを感じて、たまたま立ち寄った店舗。

 そこには親しみやすい店主がおり、薦められた極めて希少なその霊具に感嘆していると、おもむろに店主が「いらっしゃい」と声を掛けたのだ。

 どうやら他の客が来たらしい。真刃は何気なく振り返って――。


 言葉を失った。

 そして、思わず心の中でこう呟いた。



(……杠葉)



 かつて愛した少女の名前を。

 猿忌もまた、目を見開いて驚いているようだった。

 店内にいたのは二人の少女。

 二人とも十一、二歳ほどか。

 下校途中なのか、どこかの学校の制服を着ている。

 二人とも将来を大いに期待できるほど綺麗な顔立ちだったが、真刃が目を奪われたのはそこではない。赤い髪の少女の方に見入ってしまったのだ。

 髪の色は違う。瞳もかなり赤みがかっている。歳も大きく違う。


 けれど、その顔は、彼女に――火緋神杠葉に、そっくりだったのである。

 まるで生き写しのようだった。


 ――いや、もしも……。

 あの謀略の事件が起こらず。

 あのまま、一人の引導師として暮らしていけていたのなら。

 こんな娘が、生まれていたのではないだろうか。

 ――自分と、杠葉の間に。


 そんな有り得ない想像をするぐらいに、この少女は彼女に似ていた。


『……主よ』


 猿忌が、神妙な声で呟く。


『よもや、この娘は……』


「……………」


 真刃は何も答えない。

 答えなくとも、猿忌が言おうとしていることはよく分かるからだ。

 あの日から百余年。

 彼女は、すでに死去しているだろう。

 だが、彼女の子が生きている可能性は大いにある。

 あの事件の後に、誰かと結ばれて。

 今代にも、子を残している可能性は……。


(………杠葉)


 真刃が双眸を細める。と、


「ねえ。おじさん」


 不意に、少女が近づいてきた。

 かなり人懐っこい娘なのだろうか。

 警戒もない眼差しで、真刃の顔を下から覗き込んできた。


「え、えっと、燦ちゃん……」


 無防備すぎる感もある彼女に、もう一人の少女も困惑しているようだ。


「ダメだよ。知らない人に声を掛けちゃあ」


 そう言って、赤い髪の少女の手を引いている。

 しかし、少女の方は気にしていないようで、


「う~ん、なんでかな?」


 頬に小指を当てて、愛らしく小首を傾げた。


「このおじさん。どこかで会ったことがあるような気がするの。うん。そう」


 そこで、もう一人の蒼い瞳の少女に目をやった。


「なんか初めて月子と会った時みたい。そんな感じがするの」


 そんなことを呟く。

 真刃は、内心で眉をひそめた。

 当然ながら、この少女とは初対面だ。

 だが、あまりにも懐かしい・・・・

 感情的にも、心情的にも、実に複雑な想いだった。


(ここは退散するか)


 そう考える。

 仮に、この少女が杠葉の縁者であったとしても……いや、むしろ、そうだとしたら、あまり深入りするのはよくない。

 あの事件から、百年以上も経っている。

《千怪万妖骸鬼ノ王》の噂を調べる限り、真刃の名前も伝わっていないようだ。

 あの事件に関する詳細はすでに残っておらず、偽装、または誤った伝承程度でしか伝わっていないというのが、真刃と従霊たちの判断だった。


 だが、それでも火緋神家は、あの事件の当事者の家系だ。

 恐らくは、その直系だと思われる少女と関わるのは悪手だと思った。


 なにせ、天堂院九紗の例もある。

 まさかとは思うが、火緋神家にも生き証人がまだいるかもしれない。


 真刃は、猿忌を一瞥した。

 当時を直接知る唯一の従霊は、静かに頷いた。


「店主殿」


 真刃は、見せてもらった霊具を店主に返して、そうそうに立ち去ろうとした。が、


「え? あ! それって!」


 その霊具に、赤い髪の少女が喰いついた。

 タタタタ、と軽快な足取りで真刃に近寄り、彼の手を取る。

 少女は、真刃の手を、まじまじと見つめた。

 正確には真刃の手に握られた、ハンカチよりも少し大きい程度の銀色の布をだ。

 実のところ、これは霊具ではない。正確には霊具を作るための素材だ。

 これだけではただの布切れにすぎないが、真刃の時代でも非常に珍しい布だったので、店主に見せてもらっていたのである。

 少女は、キラキラとした眼差しで真刃の顔を見上げた。


「これって、もしかして反羊はんようたん?」


「……よく知っているな」


 真刃は少し驚いた。


「知っているわよ! ずっと探してた素材だし!」


 少女は、真刃の手を両手で掴んだまま興奮気味に告げる。

 その表情に、また杠葉の顔が重なった。


(……やれやれだな)


 真刃が複雑な想いを抱いていると、


「ねえ! お婆さん!」


 少女が店主の元に走り出した。


「あの反羊反! まだあるよね!」


「う~ん、あれかい?」


 店主の老婆は、しわくちゃな顔に苦笑を刻んだ。


「あれは、とても珍しいものだからね。今ある現物が最後だよ」


「ええええっ!」


 少女が声を上げた。

 本当に元気な少女のようだ。

 しかも、早とちりもしやすい性格のようだ。

 真刃はまだこの品を購入していない。手に取っているだけだ。

 だというのに、すでに購入済みと思い込んでいるらしい。


「す、すみません」


 その時、もう一人の少女が真刃に声を掛けてきた。

 改めて見ると、活発そうなあの赤い髪の少女とは正反対の大人しそうな娘だった。

 ただ、髪の色と瞳が珍しい。どうやらエルナ同様に異国の出身でもあるようだ。


「友達が迷惑をかけて」


 少女が、ぺこりと頭を下げた。

 この子の方は、とても礼儀正しい娘だった。


「……気にする必要はない」


 真刃は優しげに双眸を細めて、手に持った品を店主に返そうと歩き出した。

 赤い髪の少女に詰め寄られて、店主がとても困っている。

 これを返せば、それで解決するはずだった。

 ところが。


「――ッ!」


 真刃は目を剥いた。


「ッ! 燦ちゃんッ!」


 蒼い瞳の少女も声を上げる。

 ――バチチチチチッ!

 突如、赤い髪の少女の全身から、雷光が発生したのだ。

 店主もギョッとした。

 しかし、当の少女自身は興奮しすぎているようで、全く気付いていないようだった。


「ねえねえ! 本当にないの!」


 そう言って、さらに店主に詰め寄ろうとする。


『主よ!』


 その時、猿忌が叫んだ。


「分かっておる!」


 真刃は、手に持っていた品を投げ捨てて瞬時に跳んだ。


(こんなところまで似ておるのか!)


 内心で舌打ちする。

 ――なんという懐かしき悪癖か。

 そんな皮肉めいた想いを抱きながら、真刃は少女の肩を左右から掴んで持ち上げた。


「――ふえっ!?」


 いきなり体を持ち上げられて少女は目を丸くした。

 驚いたためか、さらに雷光が散る。


(杠葉と同じ悪癖か)


 かつての恋人。杠葉にもこの悪癖があった。

 生まれもった強大な魂力が、昂った感情に影響されて暴走しているのだ。

 火緋神家は、炎雷の一族。

 杠葉も驚いた時や、興奮した時。

 または、感極まった時などにこの悪癖を発露させていた。

 ただ、杠葉は髪を発電させる程度だったが、この少女は全身から火花を出している。


(この娘……魂力の量で杠葉を上回るのか?)


 少し驚くべき事実だ。

 杠葉は、当時では、破格の185もの魂力を持っていたというのに。


(エルナたちといい、今代の引導師の魂力の量には、目を瞠るものがあるな)


 内心でそう感じる。

 ともあれ、こんな術にもなっていない力など真刃にとってはそよ風のようなものだ。

 皮膚が傷つくこともなく、痛みもほぼ感じない。


 だが、店主はそうもいかない。

 真刃は、目を見開いて慄く老婆を一瞥した。

 まさに間一髪だった。店主に雷光が届く寸前だったのである。咄嗟に真刃が少女を持ち上げたおかげで、雷光は方向を変えて、店主が怪我をすることはなかった。

 真刃は、小さく安堵の息を零した。

 そして、


「少し落ち着け。娘よ」


 持ち上げた少女にそう告げた。すると、彼女は全身をビクッと震わせた。

 それから、顔だけをギギギと振り向かせる。彼女の顔色は少し青ざめていた。自分がよく知らない男性に持ち上げられていることを理解したのだろう。


「――ひゃああっ!?」


 途端、少女は声を張り上げた。


「な、何するの!? 離して!? 離してェ!?」


 バタバタッと両足を動かし始めた。


「お、おい!」


 真刃が困惑する。と、

 ――バチバチバチッッ!

 腕に掴んだ少女の全身に雷光が迸り、それは四方へと飛び散った。


(な、なに!?)


 真刃は思わず目を剥いた。少しぐらいは暴れることも想定していたが、雷光の出力まで上がったのである。店内の至る所に雷光が届く。


「さ、燦ちゃん!? 落ち着いて!?」


 蒼い瞳の少女も狼狽の声を上げた。だが、そんな友人の声も届いてないようで、溢れ出る雷光は、次々と壁や周辺へと広がっていった。


(――まずい!)


 威力が上がっても、雷光は真刃の肌を焼くほどではない。

 だが、それは、あくまで真刃だからだ。

 今や、この娘は雷光を撒き散らす人間大のスタンガンだ。今はまだ運よく雷光は外れているようだが、店主やもう一人の少女に当たれば、怪我を負わせることは確実だった。


「待て! 離す! 離すから落ち着け! 娘よ!」


「やあっ!? やだやだ!? ヘンタイ!? ヘンタイ!? 助けて! ひいお婆さま!」


 しかし、床に降ろしても、彼女が落ち着く様子はない。

 雷光は、パニックを起こした少女の心を表すように飛び散っている。

 もう一人の少女は「――燦ちゃん!」と、何度も友人の名を叫び、店主の方は完全に腰を抜かしていた。このままでは本当に被害が出る。


(――しまったな)


 まさか、ここまで暴走してしまうとは思いもよらなかった。

 特にこの魂力の発露は想定外だ。あの杠葉さえも上回る出力だった。


(……これが、杠葉の遠き娘なのか)


 懐かしさも抱くが、今は感傷に浸っている場合ではない。

 真刃は、パニックを起こした娘の前へと移動した。そこで片膝を折る。真刃と目線が合って少女が「ひっ!」と声を上げた。

 それに対し、真刃は微苦笑を浮かべて。


「……そう怯えるな」


 飛び散る雷光には一切構わず、静かに少女の瞳を見据える。


「……オレは敵ではない。落ち着け」


「て、敵じゃない?」


 ようやく、自分の言葉を聞いてくれた少女。

 真刃は「ああ」と頷いた。


「周囲を見よ。自分の姿を見てみよ。先程から魂力が暴走しているぞ」


「え? ああっ!」


 そこで、初めて少女は自分が巻き起こしている事態に気付いた。

 少女の顔が青ざめる。自分の両頬を押さえた。


「あたし、またやっちゃったの!?」


 バチチチっと一際盛大な火花が飛ぶ。店主が「ひゃあッ!?」と悲鳴を上げた。


「落ち着け。娘よ」


 目線を合わせたまま、真刃は言う。


「まずは暴走を抑えよ。このままでは話も出来ん」


 真っ当な指摘だ。しかし、それに対して少女は、


「ど、どうやるの?」


「……なに?」


 真刃は眉をひそめた。


「いや待て。お前、まさか……」


「わ、分かんないの!」


 少女は雷光を周囲に撒き散らしながら叫ぶ!


「ここまで暴走したことないから! あたし、月子ほど魂力の制御が上手じゃなくって、どうやったら止まるのか分かんないの!」


「――さ、燦ちゃん!」


 その時、蒼い瞳の少女も叫んだ。


「落ち着いて! 刀を鞘に納めるみたいにゆっくりと魂力を抑えるの!」


「わ、分かんないっ! 炎はともかく雷の方は苦手なの!」


 赤い髪の少女は、今にも泣き出しそうな顔で友人の方に振り向いた。

 途端、彼女の長い髪が揺れ、そこから雷光が溢れ出る。それは真刃の顔に直撃した。


「――あっ!」


 少女は青ざめて振り向き直す。と、


「……え?」


 そこには無傷の青年がいた。まるで冷水をいきなり浴びせられたような顔はしていたが、火傷もしていない。少女は目を見開いた。


「ど、どうして?」


「……この程度で傷を負ってくれるような体ではないのでな」


 真刃は、苦笑いを浮かべた。

 それから、改めて少女を真っ直ぐ見据える。


「あ、あたし……」


 少女は、完全に怯えた目をしていた。

 それは見捨てられることを恐れる子供の眼差しだった。

 真刃は、小さく嘆息する。


「……子供が、そんな目をするな」


 言って、ポンと彼女の頭に手を乗せた。今も激しく発電する頭にだ。


「暴走を抑えるには、心を落ち着かせる必要がある。まずはそれからだ」


 真刃は、片手を彼女の方に差し出した。


オレには雷撃は効かん。一人が怖いのなら、落ち着くまで傍にいよう」


「あ……」


 少女が、小さく呟く。

 と、次の瞬間、真刃の視界は覆われた。

 流石に驚く。少女が、真刃の頭にがっしりとしがみついてきたのだ。

 不安だったことは分かるが、これでは前が見えない。

 真刃は少女の襟を掴み、自分から引き剥がした。


「や、やあ……」


 バタバタと両手を動かす少女。不安一色になったその瞳と視線が重なる。

 真刃は、再び苦笑いを浮かべると、


「視界を覆うな。それ以外なら抱き着いても構わん」


 言って、ポンと少女の背中を押した。

 少女は手を伸ばして、真刃の首に抱き着いた。

 引き剥がされたのがよほど怖かったのか、先程よりもずっと力が強い。


(……やれやれだな)


 くしゃり、と少女の髪を撫でる。

 次いで、彼女の背中と足をかかえて立ち上がった。

 そして、


「……店主殿」


「ひっ、な、なんだい?」


 腰が抜けている老婆を一瞥して、少女を抱えたまま真刃は告げる。


「悪いが店の一角を借りたい。良いか?」


「そ、それはいいけど、本当に大丈夫なのかい? あんたは?」


 と、店主が恐る恐る尋ねる。青い瞳の少女も目を見開いていた。

 それも当然だ。

 今の真刃は、人間の姿をした発電機に触れているに等しい。

 それも、完全に暴走している発電機である。

 雷光は常時、真刃の体の上を奔り、髪に至っては逆立っている。

 これでも火傷の一つも負っていないのが、異様なぐらいだ。


「まあ、この程度ならばな」


 平然とそう答えつつ、真刃は商品を一部どかせて台座に腰を降ろした。

 途端、抱き着きやすくなったことに気付いた少女が、自ら姿勢を変えた。

 真刃の膝の上に素早く移動すると、ちょこんと座って膝を折る。それから邪魔と感じたのかランドセルを背後に落とし、改めて首にしがみついて全身を預けてきた。


「……とにかくだ」


 真刃は、少女の背中を、ポンと叩いて告げる。


「まずは呼吸を整えよ。それから少しずつ力を抜け。それで落ち着くはずだ」


「……う、うん。分かった」


 少女は、こくんと頷く。

 それから、何度も深呼吸を繰り返す。

 その間、真刃は少女の腰に左手を添え、ポンポンと一定間隔で彼女の背中を叩いていた。

 雷光に晒されていても、真刃の眼差しはとても優しい。

 青年の手の動きは、まるで赤ん坊をあやしているかのようだった。

 一方、少女は魂力の制御に苦戦していたようだが、徐々に雷光を抑えていった。

 真刃は優しい眼差しのまま、少女の髪を撫でる。

 少女は「あう……」と微かに身を捩じって、真刃の首に、より強くしがみつく。


 真刃は双眸を細めた。

 脳裏に、一人の少女の姿が浮かぶ。


 ――そう。緋袴を履いた少女の姿が……。


(……『娘』か)


 心の中で、遠き日を想う。


『……………』


 そんな主と少女の様子を、猿忌は静かな眼差しで見つめていた。

 それは、本当に父娘の姿のように見えた。

 そうして五分後。

 あれほど激しかった雷光は、完全に消え去っていた。


「……落ち着いたか?」


 真刃がそう尋ねるが、少女は無言だった。

 ただ、真刃の首をギュッと掴んだまま、青年の肩に顔を埋めている。

 ……と、


「さ、燦ちゃん……?」


 もう一人の少女が声を掛けた。流石に友人には反応を見せた。

 真刃の肩に手を置いて、ギギギと顔を振り向かせる。

 その顔色は、少し青かった。


「……ごめん。月子。凄くまずいかも」


 まずはそう告げて、


「もう怖くはないの。今は凄く落ち着いてる。けど、これ以上、動けないの。ごめん。お願い。あたしの代わりにブザーを鳴らして」


「あ、うん」


 言って、もう一人の少女は、自分のランドセルに付けた防犯ブザーに手をやった。

 今や小学生に必ず普及されているアイテム。

 邪なる大人を社会的に抹殺するボタンだ。


「おい待て。何故ブザーだ。そこの娘。お前も『うん』ではない」


 流石に、真刃もツッコんだ。


「月子。早くして。このおじさん、プロだよ。きっと、抱っこのプロだよ。ダメ。ヤバい、ヤバいって! あたし、いま凄くキュンキュンしてるの! このままだとあたし、このおじさんにお持ち帰りされちゃうよ!」


「いや待て。発電娘。誰がお持ち帰りするか」


「うそ。だって、おじさん、あたしを離さないじゃない!」


 腕の中の少女は真刃の顔を見つめて、いきなりそんなことを告げた。

 真刃は、額に青筋を浮かべた。


「離さんのはお前だろうが。落ち着いたのならさっさと離れろ」


 そう告げて、少女の首根っこを掴んで引き離そうとする。と、


「やああっ! ひっぺ剥がすなあっ! ごめん! うそうそっ!」


 少女が顔色を変えた。


「ホントはまだ少し不安なの! だからもう少し抱っこしろ! あたしを甘えさせろ!」


 そう叫んで、ぎゅうっと真刃の首にしがみついた。

 相当な力を込めているのだが、なかなか引き剥がせない。

 どうやら意地でも離れないつもりのようだ。

 もう一人の少女が、ランドセルに手を当てたまま、おろおろしている。


(まったく。お前の遠き娘は……)


 真刃は嘆息した。


「ああ、分かった。分かった」


 そして、妥協の言葉と、心の底からの願いを告げるのであった。


「もう少しだけならこのままでいてやる。だから、本当にブザーだけはやめてくれ」

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